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Interview

突撃インタビュー

2022/03/10

アルベルト マレザーニ氏 Mr. Alberto Malesani、ジュリア マレザーニ氏 Ms. Giulia Malesani

サッカーからワインの道へ!パルマFCの監督としてUEFAカップを制したマレザーニ氏が、稀有なテロワールで造り上げる優美で透明感のあるアマローネ「ラ ジュウヴァ」突撃インタビュー

マレザーニ氏
プロサッカー監督としてUEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)で優勝するなど輝かしい経歴を持つアルベルト マレザーニ氏が手掛けるワイナリー「ラ ジュウヴァ」。地元ヴェローナの稀有なテロワールを最大限に引き出し、透明度が高くクリーンでピュアなワインを生産しています。ガヴィの優良生産者ヴィッラ スパリーナが「すごいアマローネがある」と紹介をするほど。今回は創業の経緯、地元に対する思い、自身のキャリアで培った信念について、オーナーのマレザーニ氏とご息女ジュリア氏にオンラインでお聞きました。

サッカー監督として名を馳せたマレザーニ氏が娘二人と地元ヴェローナで創業
ボルドー遠征中、試合前日に訪れたシャトー マルゴーに魅せられてワイン造りを決意

「ラ ジュウヴァ」の当主マレザーニ氏に、生まれ育った地元ヴェローナについて、そしてワイナリーをスタートさせた経緯についてお話しいただきました。

カンティーナ「私はヴェローナの北、モントリオで生まれ育ちました。ワイナリーは、そのすぐ北、ヴァル スクアラントというエリアにあります。この辺りは幼少期によく自転車で遊びに来ていたのですが、その頃からヴァルポリチェッラは有名産地でした。何より父親がワインに情熱を持っていて、その影響もあり私も小さい頃からワインに対して熱意を持っていました。

パルマFC(1999~2001年に指揮)の監督としてUEFAカップでボルドーに遠征した際、試合前日にシャトー マルゴーを訪れたことがありました。そこで自分自身が造るワイナリーのインスピレーションをかなり受けたんです。畑の中心にカンティーナを構えたり、ギヨー仕立てにしたり、多くのことを参考にしました。その後も、ラフィットやラトゥールなど大きいワイナリーも含めて、小さい造り手も訪ねました。当時、私が影響を受けたのは全てフランスの生産者でしたね。

ラ ジュウヴァチームその数年後の2005年に幼少期から慣れ親しんだ地元で“ラ ジュウヴァ”を創業しました。その時はまだ監督業をしていたので、自分の情熱を委ねられる娘のジュリアとヴァレンティーナと一緒にスタートさせました。ワイナリー名の“La Giuva”は、娘の名前のGiuliaとValentinaから取っています。栽培責任者にステファノ カザーリ、醸造責任者にロレンツォ カラマッツァという、このエリアを熟知している専門家とチームを組んでいます。「ラ ジュウヴァ」の冒険は、二人の娘たちと彼らとともに始まりました」

生物多様性に優れたヴァル スクアラントの稀有なテロワール
石灰分に富んだ土壌と冷涼な気候が生む優美で透明感のあるアマローネ

「ラ ジュウヴァ」が持つテロワールについて、そしてそのテロワールが生むワインの味わいについてお話しいただきました。

標高350メートル、冷涼な丘陵地の石灰分に富んだ土壌
芳しいアロマとフレッシュでエレガントな味わいを引き出すテロワール

「ワイナリーが拠点を置くヴァル スクアラントは冷涼で石灰を多く含む土壌です。標高350メートルの丘陵地で、寒暖差が生まれるので非常に芳しいアロマを生み出します。時間の経過とともにエレガントなスタイルにもなり、高い酸味も引き出します。

有機栽培を行っていますが、ここの畑はビオロジックに最適な場所です。周囲には自然しかなく、森や動植物に囲まれています。イノシシ、キツネ、オオカミも出現します。いわゆる汚染されていない土地なので、ビオロジックに移行する時間を待つ必要がありませんでした。私は自然に囲まれたこの場所を非常に気に入っています」

畑周辺

イル ヴァルポ、イル リエントロ、アマローネ、それぞれのワインについて解説していただきました。

やや乾燥させたブドウで造るラ ジュウヴァのエントリーワイン「イル ヴァルポ」
ボトル「ヴァルポは、私たちがワイナリーとして最初にリリースしたエントリーワインです。初リリースは2011年。アパッシメントほどではないですが3~4日ほど少し乾燥させてから圧搾しています。圧搾後、発酵、マロラクティック発酵を行いステンレスタンクで熟成させます。品種の割合は年によって変わりますが、コルヴィーナが主体であることは間違いありません。」

エノロゴとの共同実験により生まれたヴァルポリチェッラ スーペリオーレ「イル リエントロ」
バリック、大樽、アンフォラの融合で編み出された秘密のレシピ

「イル リエントロはイル ヴァルポを発展させたワインで、20日間ブドウを陰干ししてから造っています。圧搾、アルコール発酵を行った後、熟成を行います。熟成はバリック60%、大樽30%、アンフォラ10%の三つに分けています。この三つに分けるアイディアはちょっとした実験なんです。ある時、エノロゴから“なぜアンフォラを導入しないの?”と言われ、クリスマスにアンフォラをプレゼントされたんです。

アンフォラそれをきっかけに、とりあえずリエントロを1年間アンフォラに入れてみたら、ストラクチャーは控えめでしたが木樽よりも非常にフレッシュであることに気づいたんです。それ以降、毎年同じことを行っています。バリックはストラクチャー、大樽はエレガントさ、アンフォラはフレッシュさを与えます。これ以上は内緒にさせてください(笑)。私たちの秘密のレシピでできているんです。

私がこのワインを飲んだ時、口の中に残り続ける長い余韻があることから、監督時代によく使っていた“リエントロ”という言葉がすぐに浮かびました。」
※リエントロ=守備時に自陣に戻りまとまること

冷涼な丘陵地で育った個性的なコルヴィーナで造るエレガントアマローネ
樽類「アマローネはリエントロと同じセパージュです。アンフォラは使用せず、全て新樽を用いてバリック90%、大樽10%で熟成しています。冷涼な丘陵地で育ったブドウを使用しているので、当然平地で造られたアマローネとは異なります。この土地のワインだと感じてもらうことが一番重要だと思っているので、テロワールを引き出すことに注力しています。

アパッシメントについてですが、一般的に機械を用いて閉じられた部屋で行われることが多いです。しかし、私たちは自然の風が通る外気で行う伝統的な手法でアパッシメントを行っています。近くの谷の空気の流れを研究し、カンティーナを建設する際に空気が自然と入るようにこしらえました」

一般企業に勤務、プロサッカー監督、ワイン生産者という異色のキャリア
マレザーニ氏がワイン造りに生かし、自身の人生において貫き通す4つの信念

当時世界トップレベルのサッカーリーグ、セリエAで監督としてキャリアを積んできたマレザーニ氏に、サッカー業とワイン業の違い、監督として得た経験をどうワイン造りに生かしているかお聞きしました。

マレザーニ氏「まず、そのような質問をありがとうございます。私は監督になる前にキヤノンに17年間勤めていました。ロジスティクスの責任者でもありましたし、一つの会社を経営することは理解しているつもりです。実はその時に学んだことが、自分自身の大切な信念となっています。その信念とは、情熱、イニシアティブを持つこと、メンバーとの情報共有、目的の明確化です。この4つが私の人生における信念となり、かつての監督業に生かし、ワイン業でもまた生かしているという具合です。

チーム経営とカンティーナ経営の考え方はほぼ同じだと思います。1点違うとすれば、サッカーはワインと違って結果が早いということです。結果が出なければすぐに“家に帰れ!”と帰らされます(笑)。一方でワインは忍耐が必要なので、サッカーとは全然違いますね。

ワイン造りについての考えも話をさせてください。私の意義は、この土地でワインを造ることです。私たちのワインは『ジェームズサックリング』でも点数を取っていますし、認知度は高まってきています。しかし、一番重要なことは、この土地のワインだと感じながら飲んでいただけることです。そのためには、仕事をする上でアグロノモ、エノロゴ、娘たち、メンバー全員が重要です」ジュウヴァチーム

ラ ジュウヴァが最初に造ったエントリーワイン「イル ヴァルポ」
凝縮感がありながらピュアな果実味を持つヴァルポリチェッラ

収穫したブドウをフレッシュなまま低温で、15日間休ませます。低温に温度管理の下、アルコール発酵。熟成は温度管理せず、自然の外気温でステンレスタンクで3ヶ月間行います。チェリーを含む独特の芳香を伴う新鮮な果実の香りとハーブやリコリスの風味が特徴。ラベルには“VALPO”の文字が際立ちます。地元の人はヴァルポリチェッラのことをヴァルポと呼び、日々の食卓に上がります。若々しくフレッシュでフルーティなこのワインは食前酒としてはもちろん、様々なシチュエーションで飲まれる一本です。
イル ヴァルポ ヴァルポリチェッラ2018

試飲
コメント

ルビー色。チェリーやベリーなどの赤系と紫系果実が入り混じった明るい香り。凝縮果実やほんの少し甘やかなアロマも感じます。口に含むと綺麗で明るい印象。タンニンは繊細で非常に滑らかな口当たり。軽やかではあるものの、しっかりとした芯があり余韻も長く続きます。

バリック、大樽、アンフォラの融合が生み出すエレガンス「イル リエントロ」
独特のフレッシュ感とアパッシメント特有の美しい風味

厳選したブドウを約20日間の乾燥を経て、22~24度に温度管理の下でアルコール発酵。マロラクティック発酵の後、ヴァルポリチェッラの一部と混ぜ、12ヶ月の熟成を行います。偉大なワインだけが表現できる、独島kのフレッシュ感とアパッシメント(ブドウを乾燥させること)特有の風味があります。ほのかに甘くスパイシーなアロマが印象的です。
イル リエントロ ヴァルポリチェッラ スペリオーレ2018

試飲
コメント

ガーネット寄りのルビー。ベリー系の森の果実、やや土のニュアンス。美しさを感じるエレガントな香りを感じます。フレッシュでありながら柔らかな酸がじわじわと口中に広がっていきます。その酸と繊細なタンニンとが美しく融合し、綺麗な印象を持ちました。香り同様のエレガントな風味が余韻として長く続きます。

力強さと繊細を兼ね備えた優美なアマローネ
バランスに優れ、フレッシュな酸とスパイス感が長く持続する余韻

厳選したブドウを乾燥させて12月に醸造を開始。冬場の冷たい自然気温でマセラシオンを行った後、24度に温度管理の下、長い期間をかけてアルコール発酵。更にバトナージュしながら、約20日間置くことによりブドウの持つ特性を十二分に引き出します。新樽バリックを用いて24ヶ月間熟成の後、ボトリングします。エーテル香を伴う力強さと繊細を兼ね備えた複雑な香り。マラスカチェリーを思わせるアロマティックな芳香と、ブルーベリーやチョコレート、熟した果実を感じる風味が特徴です。
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ2017

試飲
コメント

ガーネット寄りのルビー色。イル リエントロに力強さ、スパイシーさ、果実の凝縮感が加えられた印象。それでいて果実の透明感があり、美しさを感じます。香り同様の味わいが広がり、優れたバランスがあります。フレッシュな酸とスパイスの風味が余韻として長く続きます。

インタビューを終えて

今回突撃インタビューをさせていただいた優美なアマローネを生産する「ラ ジュウヴァ」。試飲してみると「ハッ」と驚かされました。というのも、ヴァルポリチェッラ特有の凝縮感がありながらも非常に透明感のある美しさを感じたからです。そして、当主のマレザーニ氏のお話を聞いて納得。その優美さは、ラ ジュウヴァが持つ冷涼な丘陵地のテロワールから来るものだということがわかりました。

マレザーニ氏は、一般企業に勤務後、当時世界トップレベルのイタリアサッカーリーグ(セリエA)の監督を務めた異色の経歴を持つ方です。そんな彼がワイン造りで重要視するのは「この土地のテロワールを味わってほしい」ということと、会社員時代に得た4つの信念(情熱、イニシアティブ、情報共有、目的の明確化)です。そのワイン造りを支える「ラ ジュウヴァ」のメンバー全員の重要性も説いていました。その姿に、元サッカー監督ならではのモチベーター的な要素も持ち合わせているのだなと感じました。ヴァル スクアラントの稀有なテロワールを土台に、各プロフェッショナルを率いるマレザーニ氏の指揮のもと「ラ ジュウヴァ」のワインが生まれているのだと思います。

UEFAカップで優勝するなどサッカー監督として輝かしい経歴を持つマレザーニ氏は、ボルドー遠征時に訪れたシャトー マルゴーに刺激を受け「自分のワインを造ろう」と決意されます。それはまさに、サッカー界で頂点を極めたマレザーニ氏だからこそ持てる一流思考だと思います。そういった他ジャンル出身の方が常識にとらわれず革命を起こすことで、ハッと思わせるワインが生み出されていくのだと実感しました。
生産者さんと

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