TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2017/06/09

ファットリ社 ジョルジアコスタさん

ソアーヴェエリアの新たな可能性を示すビオロジック栽培の鮮烈なワイン「ファットリ」

ファットリ社 ジョルジアコスタさんと
ソアーヴェはイタリアで最もポピュラーでリーズナブルな白ワインの一つです。しかし近年は、より厳しい独自の生産規定を持って、恵まれた火山性土壌のテロワールを豊かに表現する次世代の生産者達が登場、国際的に高く評価されています。銘醸ソアーヴェ クラシコ エリアより標高の高いソアーヴェ「ロンカ」村に畑を持つファットリ社は3代続く家族経営のワイナリーです。良心的な価格でありながら、ビオロジック栽培で自然なブドウの純度の高いのびやかな味わいを見事に表現しています。当主アントニオ ファットリ氏はなんとアルコールを多く飲めない体質。しかし誰よりも敏感な味覚をもって、エリアの固定概念を覆す緻密なブレンド白「ロンカ」、ソアーヴェの新しい可能性を表現した甘口仕立てのスッキリ白「センツァ ノーメ」で世界中にソアーヴェエリアの新たな可能性を示す鮮烈なワインを産み出しています。ファットリ社のジョルジア コスタさんにソアーヴェの知られざる魅力についてお話を聞きました。

祖父から受け継いだ伝統とアントニオが学んだ新しい知識の融合

アントニオファットリ氏祖父から受け継いだワイン造り
ファットリ社は家族経営で現在3代目当主兼エノロゴのアントニオ ファットリと今、醸造学を学んでいる姪のキアラが中心となりワイナリーを運営しています。元々1900年代にアントニオの祖父がブドウ栽培とワイン造りを始めました。1900年代後半のフィロキセラの被害を受け、大部分のブドウを失い新たに植樹し直してワイン造りをスタートさせました。アントニオの父は、若くして亡くなってしまった事もあり、アントニオと兄の若い兄弟は2人で祖父が行っていたワイナリーの仕事を1979年に引き継ぎました。幸いアントニオがコネリアーノ醸造学校とフランスのディジョン大学で醸造学を学んでいた事もあり、ワイナリーの歴史を止める事無く続けることが出来ました。

これまでにない新しいワイン造り
当時若いアントニオが学んだ新しい知識と、代々ファットリ家に引き継がれた伝統的なやり方の融合により、これまでにない新しいワイン造りがスタートしました。90年代から化学肥料や農薬を極力使用しないビオロジック農法を実践し、銅や硫黄、植物由来の成分を使い、環境を配慮した自然なワイン造りを行っています。醸造時のSO2の添加も極僅かで品質を守る為に満足出来ないロットはバルクで売ってしまう程、品質に徹底した拘りがあります。

10年前からアマローネ造りにチャレンジ
約10年前には赤ワイン造りにもチャレンジしよう思い、実験と研究を始めました。当時ヴァルポリチェッラの最東部にあるバスティア地区の大きな区画を購入することが出来ました。購入しようとする際にDOCの規定が変わり、2010ヴィンテージより「アマローネを造る際はボトリングに至るまで全ての作業を行うカンティーナがヴァルポリチェッラエリアになければならない」というものでした。畑の購入でも資金がかかったのですが、2015年に醸造所を造りました。現在赤白合わせて70ヘクタールを所有、内53ヘクタールが白ワイン、17ヘクタールが赤ワインとなります。

ソアーヴェ クラシコエリアより遥かに高い高地の畑DOCソアーヴェ「ロンカ」

地図

ヴェネトの土着品種「ガルガネガ」、「ドゥレッラ」がメイン
自分たちのエリアで最も特徴的な白ブドウ品種であるガルガネガ、ドゥレッラがメインで、この2種が特に重要な品種です。続いて、ピノグリージョとソーヴィニョンになります。私たちの畑は全て丘陵地帯にあり、標高200~480メートルの高さに広がっています。遠くてもカンティーナから10キロほどしか離れていません。ロンカ村南部のテロッサとヴァルポリチェッラ最東部にあるモンテキアーリ クロサーラ村のバスティア地区の2ヵ所にカンティーナを構えています。

畑

ソアーヴェ クラシコエリアより遥かに高い高地の畑DOCソアーヴェ「ロンカ」村
ソアーヴェは大きなDOCですが、ソアーヴェクラシコとなると丘陵地帯の畑(標高約290メートル)で小さなエリアとなります。ソアーヴェクラシコDOCが出来た1964年時には、DOCソアーヴェのロンカ村のブドウ畑(標高約490メートル)は標高が高すぎて「ブドウ栽培には寒すぎる」と言われていました。

温暖化の影響で新たな可能性をもった魅力的なエリア
現在では温暖化の影響で気温が上がり、クラシコエリアより標高の高いロンカ村はブドウ栽培において非常に最適な環境に近づいています。1964年当時最適とされたクラシコエリアと何も遜色のない素晴らしいブドウが栽培されています。ファットリ家は代々ロンカ村に畑を所有しています。ロンカ村は年々注目を集める新たな可能性をもった魅力的なエリアだと言えます。

ソアーヴェ協会も認めた「ロンカ」村のポテンシャル
このような気候の変動による影響もあり、2014年にソアーヴェ協会がポテンシャルのある畑を改めてマッピングしたところ、ソアーヴェ協会から「非常に良いポテンシャルを持っているエリア」と位置づけされました。伝統的なエリアに拘るだけではなく、生産者達も気候や環境の変化に応じて変えるべきことがあるかと思います。

ソアーヴェエリアの新たな可能性を示す鮮烈なワイン

デュレッラもう一つの重要な土着品種「ドゥレッラ」
DOCレッシーニ デュレッロではもう一つの重要な土着品種「ドゥレッラ」を栽培しています。レッシーニとはヴェローナとヴィチェンツァの間にそびえる山を指します。このDOCではヴェローナ側の丘、ヴィチェンツァ側の丘にまたがって造られています。ファットリはヴィチェンツァ側に位置します。現在僅か約25生産者のみがドゥレッラを栽培していますが、そのほとんどの17~18生産者がヴェローナ側にあります。

ドゥレッラ100%の確りとした旨みと心地よい酸を持つスプマンテ
スプマンテロンカディロンカ
ドゥレッラの語源は「ドゥーロ」(固い)という言葉からもあるように、ブドウはとても酸が強いブドウで以前は陰干しして甘口ワインに仕立てか、ブレンド用に混ぜる生産者が殆どでした。近年ドゥレッラのポテンシャルを見直し、特徴である「酸」を活かした100%ドゥレッラで造ったスプマンテをリリースしています。収穫のタイミングが非常に難しく、早すぎると酸が強すぎて醸造できないので、毎年慎重に完熟のタイミングを見極め、収穫を行います。長期シャルマー方式で確りとした旨みと心地よい酸を持つスプマンテとなっています。

もっと気軽に夏場にも楽しめるスッキリした甘口
センツァノーメ
新しい事へチャレンジが好きな当主アントニオはこれまでのソアーヴェエリアにはない概念のワイン「センツァノーメ」(名もなきワイン)を造りました。レチョート ディ ソアーヴェという極甘口は昔からありましたが、「もっと気軽に夏場にも楽しめるスッキリとした甘口ワイン」を当主アントニオは以前から造ってみたかったそうで、ソアーヴェエリアでありながらドゥレッラを主体にトレッビアーノ ディ ソアーヴェ、その他ブドウをブレンドした仕上がりです。アルコール10%でとても飲み心地良いワインですが、華やかなアロマと酸、高いポテンシャルを持つ絶妙なバランスを成すワインです。完成まではとにかく試行錯誤で、そのプロセスも含め「センツァノーメ(名前なし)」というラベルでリリースしました。特に女性に人気のあるキュヴェです。

標高の高いエリアで造るエレガントアマローネ

ヴァルポリチェッラ最東部のバスティア地区
ヴァルポリチェッラは50~60キロの間に7つ峡谷があります。ヴァルポリチェッラクラシコはヴェローナの北側に位置しています。ですので、ヴァルポリチェッラと一口に言っても様々なタイプがあります。私たちのカンティーナがあるのはヴァルポリチェッラ最東部のバスティア地区です。

アマローネ乾燥ブドウ標高の高いエリアで造るエレガントアマローネ
一般的なヴァルポリチェッラクラシコの標高が約290メートルに対し、バスティア地区は標高490メートルにもなり、とても高い場所に畑があります。ソアーヴェの畑が全て火山性土壌であるのに対して、バスティア地区の畑は粘土質土壌となります。アマローネの陰干し期間は最低3ヶ月間、樽熟成期間18~24カ月行っています。風が吹き抜ける標高の高いエリアにある為、アマローネらしい深みとエレガントでイキイキとしたフレッシュ感を持つ仕上がりとなっています。

寿司とアマローネ冷やしたアマローネとマグロをマリアージュした日本のソムリエ
今回日本に来て、お寿司屋さんでソムリエが、私たちのアマローネを軽く冷やしてマグロを合わせてくれました。アマローネと言えば通常、お肉料理やジビエ等が伝統的なマリアージュですが、お寿司との相性の良さには、まさに「新しい発見」で驚されました。ファットリのアマローネはバリック樽を使用していないので、濃厚でありながら、エレガントさ、上品さが特徴です。ですので和食にも合わせやすいエレガンスがあります。(日本人の私達も是非試してみたい新しいマリアージュだと思いました。お肉料理だけではない新しいアマローネの楽しみ方ですね)

「畑で丁寧な仕事をする事」「自然環境を保持していく事」「カンティーナの中は常に清潔である事」

「畑で丁寧な仕事をする事」「自然環境を保持していく事」「カンティーナの中は常に清潔である事」
私達の理念は「畑で丁寧な仕事をする事」、「自然環境を保持していく事」「カンティーナの中は常に清潔である事」という事です。バスティア地区の畑の周りは森となっていて他の生産者はいませんので、ビオロジック栽培に理想的な環境です。ソアーヴェエリアは生産者がひしめき合っていて、場所によってはビオロジック栽培が難しいエリアもあると思います。私たちは農薬や化学肥料は極力使いません。銅、硫黄といったリスクの少ない自然な原料で病気対策を行っています。また2つのカンティーナにはソーラーパネルを設置していて電気エネルギーを太陽エネルギーから賄っています。カンティーナの中は常に清潔に保たれています。キチンとしたブドウが出来れば、カンティーナでやる事は、「清潔に保ち、やるべきことをキチンと行うだけ」となります。最新の設備を導入し品質向上に努め、より緻密な仕事を続けていかなければなりません。

この価格帯で群を抜く果実感と旨味を持つコスパ!ヴェネト土着品種「ドゥレッラ」の個性を最大限引き出したファットリのスプマンテ!

ドゥレッラの語源は「ドゥーロ」(固い)という言葉からもあるように、ブドウはとても酸が強いブドウで以前は陰干しして甘口ワインに仕立てか、ブレンド用に混ぜる生産者が殆どでした。近年ドゥレッラのポテンシャルを見直し、特徴である「酸」を活かしたスプマンテを造っています。収穫のタイミングが非常に難しく、早すぎると酸が強すぎて醸造できないので、毎年慎重に完熟のタイミングを見極め、収穫を行います。
スプマンテ ロンカ ディ ロンカNV

試飲
コメント

熟したリンゴや西洋梨、カリンを思わせる豊かな果実香に、分厚いミネラル、柑橘の清々しいアロマが綺麗に重なります。飲むと、その果実の豊かさに驚かされます。伸びやかな酸とミネラルがありますが、果実の豊かさ、厚みが素晴らしいレベルにあります。長期のシャルマ方式で確りとした旨みをまとったスプマンテです。最初は冷やしてから、少しずつ温度を上げていくと、ドゥレッラの持つ酸と果実の旨みが楽しめます。イタリア料理は勿論、和食から中華料理まで幅広く楽しめます。

ソアーヴェに求める要素を、バランス良く上品に兼ね備えた逸品!ピュアでエレガントなソアーヴェクラシコ

ルンカリスはソアーヴェに求める味わいの全てをバランス良く楽しめる逸品です。気軽に楽しめるフレッシュさと親しみやすさがあり、日常のワインとしてはとても品質に優れていると思います。前菜からさっぱりとした魚料理、和食だとお寿司と相性が良く、幅広く料理と楽しめるワインです。
ソアーヴェ クラシコ ルンカリス2015

試飲
コメント

柑橘やハーブ、ミネラルの清々しさにリンゴや西洋梨のフレッシュな果実香が綺麗に重なります。みずみずしい果実感と繊細なミネラルが心地よいバランスを形成していて、スッキリとしていながらも上品さが感じられます。イタリア料理は勿論、貝類の料理や、カルパッチョ、寿司等とも好相性です。

陰干しブドウも使用!フレッシュかつリッチな果実感!上質ソアーヴェ「ダニエリ」

100%ガルガネガのブドウを使用していますが、内10%は4カ月間陰干ししたブドウをブレンドしています。このようなスタイルのソアーヴェは他にあまりありません。常に新しい事へ挑戦する当主アントニオのチャレンジ精神に出来上がったキュヴェです。ソアーヴェらしいフレッシュでミネラルに富んだ味わいはそのままに、厚みのあるリッチな果実感があります。
ソアーヴェ ダニエリ2015

試飲
コメント

ミネラルに富んだ清々しい香りにリンゴや西洋梨の心地よい果実のアロマが拡がります。飲むと、綺麗な酸とミネラルに支えられたフレッシュで澄んだ味わいの中に、陰干しブドウ由来のふくよかで熟した果実の豊かな風味が中盤から拡がります。透明感のある飲み口ながら、果実の滑らかさと深みが美しく溶け合っています。最初は冷やしてから少しずつ温度を上げていくと、より滑らかで深い味わいが感じられます。イタリア料理は勿論、天ぷらやお刺身と言った和食とも相性の良さがあります。

4つのブドウが奏でる抜群のハーモニー!円やかさ、フレッシュさ、アロマ、酸の素晴らしい調和「ロンカ」

当主アントニオが「ロンカ村のブドウをブレンドした特別なハーモニーを持つワインを造りたいという想いから造られました。トレッビアーノ ディ ソアーヴェは一般的に平地で栽培される多産なブドウですが、ロンカの標高の高い畑で栽培すると、非常にアロマティックな仕上がりになります。ガルガネガの円やかさ、ピノグリージョのフレッシュさ、トレッビアーノディソアーヴェのアロマ、ドゥレッラの酸が見事なハーモニーを成しています。
ロンカ2013

試飲
コメント

豊かな果実香に分厚いミネラルと清々しいアロマティックな香りが綺麗に重なります。みずみずしくジューシーな果実感はとても滑らかなタッチで4種のブドウがブレンドされているとは思えない程の継ぎ目のないスムーズな飲み心地です。蟹やホタテの上質な旨みを持つ魚介類や、繊細な味わいの和食やお寿司にもピッタリです。4品種をブレンドしている為、ソアーヴェとは名乗れませんが、非常にバランスよく調和したワインです。

和食とも合う!ヴァルポリチェッラ最東部の高地で造られるエレガンスに満ちた美しいアマローネ

ファットリのアマローネはバリック樽を使用していないので、濃厚でありながら、エレガントさ、上品さが特徴です。伝統的にアマローネは確りとした肉料理と合わせる事が多いですが、日本のお寿司屋さんでソムリエが、私たちのアマローネを軽く冷やしてマグロを合わせてくれました。とても良く合いました。
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ コル デ ラ バスティア2012

試飲
コメント

熟したプルーンを思わせる凝縮した果実香に、スパイスやレザー、豊かなミネラルとハーブの涼し気なニュアンスが綺麗に重なる洗練された香りです。しっとりした果実感に濃厚さと上品さが溶け合う見事な調和があります。フルボディですが、タンニンは非常に細やかで、ボディを支える伸びやかな酸があり、力強くも滑らかな飲み心地があります。濃厚一辺倒ではない高地の特徴が良く表現されたエレガンスに満ちた美しいアマローネです。お肉料理やジビエは勿論、軽く冷やして和食、お寿司(特にマグロ)とも非常に相性が良いです。

トスカニースタッフ試飲でダントツ高評価!ソアーヴェの新しい可能性を表現した甘口仕立てのスッキリ白

レチョート ディ ソアーヴェという極甘口は昔からありましたが、もっと気軽に夏場にも楽しめるすっきりとした甘口ワインを当主アントニオは以前から造ってみたかったそうで、試行錯誤の末、「センツァノーメ(名前なし)」というラベルでリリースしました。特に女性に人気のあるキュヴェです。
ヴィーノ センツァ ノーメ2015

試飲
コメント

西洋梨や白桃の華やかなフルーツの香りがとても魅力的です。充実した香りに寄り添う清々しいミネラルと仄かに香る柑橘のアロマが上品に重なります。グラスから感じられるピュアで伸びやかな香りに癒されます。透明感のある軽やかな果実感、伸びやかな美しい酸味が絶妙なバランスを保っています。豊かなアロマはべた付かず綺麗なタッチで口中に拡がります。余韻はべた付かず、柑橘を思わせる爽やかさとほろ苦さがあり、余韻も実にきれいです。

インタビューを終えて

当主アントニオ氏がアルコールを多く飲めない体質と聞いてびっくりしましたが、その分味覚はとても敏感。そんなアントニオ氏のワインからはどなたにでも楽しんで頂ける純度の高い果実味と絶妙なバランス、滑らかな飲み心地がありました。いい意味で裏切られた「美味しさの発見」の連続!この価格帯では抜きんでた出来映えだと思います。

ソアーヴェをあえて名乗らず、ブドウとロンカ村の素晴らしいテロワールの可能性を信じて産まれたドゥレッラ100%のスプマンテ、トスカニースタッフ試飲でダントツ高評価だったスッキリ甘口白「センツァノーメ」には想像以上の美味しさ!

伝統的ソアーヴェエリアで新しいチャレンジを続けるファットリ。それも飲み手を納得させる実力があってこそ成り立つもの。リーズナブルな価格ながらどのワインもとても上質な清々しさを飲み心地の良さが本当に魅力的です!特に暑いシーズンには最高のワインです。必ず押さえておきたい実力派ソアーヴェの生産者です。
ファットリ社 ジョルジアコスタさんとトスカニースタッフ

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