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Interview

突撃インタビュー

2022/11/09

トーマス クーニ氏 Mr. Thomas Cuni

偉大な畑「カンヌビ」の最良区画から生み出される極上のクリュバローロ!100年以上の歴史を誇るバローロの伝統派「ダミラノ」突撃インタビュー

生産者さん
1890年、現オーナーの曽祖父にあたるジュゼッペ ボルゴーニョ氏によって設立された伝統的バローロの造り手「ダミラノ」。1935年にジュゼッペ氏の義理の息子ジャコモ ダミラノ氏が引き継ぎ、ダミラノへと名称を変更しました。ワイナリーは、バローロ村とラモッラ村の境に位置し、「カンヌビ」「ブルナーテ」「チェレクイオ」「リステ」など複数のクリュ畑を所有。なかでも、バローロ最古の畑「カンヌビ」については、全体42ヘクタールのうち約10ヘクタールを所有する大地主として知られ、バローロを中心に偉大なワインを生産しています。今回は、輸出マネージャーのトーマス クーニ氏をお招きし、ワインを試飲しながらお話を聞きました。

バローロ最古の偉大なクリュ畑「カンヌビ」を約25%も所有する大地主ダミラノ社

1890年創業、バローロの中心地に根付く老舗ワイナリー「ダミラノ」
――それでは、よろしくお願いします。
 今日はお時間をいただきありがとうございます。このような形でバローロについて話しながら、試飲することはとても大事なことだと思います。それでは、私のプレゼンテーションを始めさせていただきます。ダミラノは1890年からバローロ村の中心エリアに畑を所有する4世代続くワイナリーです。初代がワイナリーを起ち上げ、2代目、3代目と経て、今の4代目は1990年代からバローロのさらなる発展のために高品質ワインの生産に注力しています。


 ご存じだとは思いますが、ランゲ地方についても説明させてください。この写真(上)をご覧ください。ここにはランゲの重要な特徴が全て写されています。背後にはアルプス山脈があり、下には霧とブドウ畑があります。霧は天気のバランスを保ってくれるので、ワインにとって重要な要素です(夏の暑い時期、周辺空気を冷却する役割を持つ)。それにより、ブドウの酸味や綺麗さが生まれます。ネッビオーロという品種はネッビア(霧)という単語から来ています。

――カンティーナの場所はどこにあるのですか?
 素晴らしい質問ですね。バローロの地図をご覧ください。11に分かれるエリアの中心にバローロ村があります。1890年に建てたカンティーナは、そのバローロ村の中心にあります。その後、1960年~1970年代に建てたワイナリーは、バローロ村とラモッラ村の間にあり、住所はラモッラです。

――畑もバローロ村とラモッラ村の両方にあるのですか?
 両方にあります。バローロ村とラモッラ村には4つのクリュ畑を所有しています(カンヌビ、ブルナーテ、チェレクイオ、リステ)。二つとも重要なエリアですよね。

――各クリュ畑の所有面積を教えてください。
 バローロ最古のクリュ畑カンヌビは、全体42ヘクタールのうち約10ヘクタール。ブルナーテとチェレクイオは1.5ヘクタールずつで、生産量はそれぞれ5000本ほどです。私たちが生産するバローロは、様々なワインコンクールで高評価をいただいています。特にカンヌビ、チンクエヴィーニェ(クラシックバローロ)は高得点を得ています。では、試飲しながらお話しましょう!

(ラモッラ村にある現カンティーナ)

偉大な畑「カンヌビ」の最良区画から生み出される極上のクリュバローロ

 カンヌビを試飲する前に、乾杯をしましょう。このワインに対してだけでなく、みなさんとみなさんの家族へのお祈りも込めての乾杯です。ありがとうございます!

――乾杯!(笑)
 楽しみながら仕事をするのは最高ですね。それでは、バローロの一番重要な畑であるカンヌビの話に移ります。写真(下)をご覧の通り、カンヌビは様々なワインメーカーが所有する畑です(25生産者が所有)。ダミラノの畑は、黄色い部分で、丘の一番高いところにあります。1935年に購入した畑で、日当たりが良く一番いい区画と言われているんですよ。


 さて、バローロ カンヌビを試飲してみていかがですか? 率直な感想を教えてください。嘘はダメですよ(笑)。

――(笑)。すごくバランスがいいです。しっかりしたタンニンはありますが、とても柔らかく感じます。
 ありがとうございます。最近のバローロエリアはアルコール度数が高くなっていますが、全体的にバランスよく仕上げているからこそアルコールも綺麗に溶け合い、エレガントになるんです。

カンヌビ最良区画の中でも更に優れた区画、樹齢70年のブドウで造るリゼルヴァ
 カンヌビ リゼルヴァは通常より熟成期間の長いワインです。素晴らしいヴィンテージの時しか造りません。生産本数は5000本です。

――より良いブドウを使うなど、通常のカンヌビとのすみ分けはあるのですか?
 これまたいい質問ですね(笑)。先ほど、ダミラノの畑は丘の一番高いところにあると言いましたが、その中でも最も高い位置にある区画のブドウを使用しています。樹齢は70年です。

 ラベルには、“1752”という数字が書かれています。これは、現存するカンヌビのボトルで最も古いのが1752年でして、その歴史を表しています。それぞれの数字にも意味があります。1はダミラノにとって最初のリゼルヴァワイン、7は熟成期間、5は5年間の樽熟成、2は2年間のボトル熟成という意味です。


――リゼルヴァは2009年以外に何年がありますか?
 2008年、2010年、2011年、2013年、2015年です。

――リゼルヴァを生産しているのはカンヌビだけですか?
 そうです。過去にはチンクエヴィーニェのリゼルヴァ(2003年、2004年)もありました。

――では、クリュバローロとしてはカンヌビだけがリゼルヴァを造っているのですね。
 そうです。タンニンが柔らかくエレガントなワインに仕上げることができるので、カンヌビで生産しています。

 今試飲していただいているリゼルヴァは、2009年です。2009年は昨日のようですが(笑)、実際は13年も経っています。オーストリア産のストッキンジェール製の樽で熟成しています。樽の影響があまり出ない優しい樽で、5年間熟成してもフレッシュでタンニンも柔らかいバローロになります。このようなワインを飲むと、ついつい時計を見てしまいます。決して早く帰りたいと思っているわけではないですよ(笑)。口の中で余韻がどれくらい残っているかを確認しています。4~5分経っていますよね。これが力強さを示しています。

特徴の異なる5つの畑で造る世界的人気のクラシックバローロ「チンクエヴィーニェ」

 チンクエヴィーニェは、わかりやすい味わいで飲みやすく、とても人気なバローロです。星付きレストラン、オステリア、ワインバー、ECサイトなど、360度あらゆるところで好まれています。ワインコンクールでも高得点を取っているので、専門家からの評価も高いです。

 人気となった理由は、様々なブドウを用いる伝統的な造りにあります。名前の通り5つの畑(チンクエ ヴィーニェ)で造っています。バローロ村、ノヴェッロ村、ヴェルドゥーノ村、モンフォルテ ダルバ村、グリンツァーネ カヴール村です。

 それぞれの畑によって当然特徴が変わります。バローロ村はエレガントさと華やかやさ、モンフォルテダルバ村はストラクチャーとミネラル感、ヴェルドゥーノ村は柔らかいタンニンなど。個性が異なるブドウをブレンドすることで、高品質なワインができます。


――それぞれの畑の位置を見ると、すごくバランスよく端っこですね(笑)。
 そうですね(笑)。地図で見たら遠く見えるかもしれないですが、北から南まで約10キロほどしかありません。各畑からブドウを持っていくのは大変そうに見えますよね(笑)。

――ブレンドすることを前提に、各地の畑を使っているんですね。
 そういうことですね。

ランゲの特徴が最大限に表現された高品質ネッビオーロ&シャルドネ

「ピノノワール好きにもお勧め」超コスパのベイビーバローロ「マルゲ」
 ベイビーバローロ、つまりランゲネッビオーロです。樹齢30年の若いブドウを使っています。ブドウの特徴を生かすことを大事にしています。世界中でとても人気なワインです。このネッビオーロは、バローロを表現できるワインだと思います。フルボディではなくミディアムボディなので、ピノノワールが好きな方にもお勧めします。コストパフォーマンスも大変優れています。マルゲという名前は、ダミラノ家の一人、マルゲリータのニックネームから取っています。

ネッビオーロ100%で造る少量生産ロゼ
 100%ネッビオーロで造るロゼワインです。約10年前から造っています。2021ヴィンテージは、果実感が控えめでリースリングのような香りがあります。味わいはフレッシュ。シトラス、レモン、ショウガ、コショウのニュアンスがあります。シャルドネ同様に生産量が少なく、簡単に見つけられるワインではありません。

「他とは異なるシャルドネを欲すニッチな人向け」シャルドネ
 シャルドネ100%の白ワインです。私たちは主にバローロを生産していますが、その赤と同じような素晴らしい白も造りたいという思いから生まれたシャルドネです。シャルドネは、ブルゴーニュやカリフォルニア産が人気ですが、ピエモンテにも素晴らしいブドウがあります。バローロとバルバレスコの小さい畑から造られていて、生産本数は5000本と少ないです。他とは異なるシャルドネを探しているニッチな人向けですね。ボトルの触り心地に注目してみてください。すごく柔らかいタッチで、女性の肌のように滑らかでしょう(笑)。触り心地という点でもデザインに力を入れています。

――白ワインを造るのは、このシャルドネが初めてですか?
 1965年頃からアルネイスも造っていますし、メトドクラシコもあります。しかし、最も重要なのはシャルドネですね。


  楽しく話しながらワイン解説をするスタイルでしたが、私のプレゼンテーションはいかがでしたでしょうか。私の目標はバローロの知識を深くすることですので、今日初めてお会いした時よりもバローロのことを知っていただけたらダミラノ社としても嬉しいです。

――楽しく素晴らしいワインを味わせていただきました。ありがとうございました。
 楽しみながら仕事ができれば最高ですからね。みなさんに感謝します。ありがとうございました。

バローロとバルバレスコの畑から造られる年間5000本の少量生産シャルドネ!

ジャコモ ダミラノ氏へのオマージュで造られたため、頭文字を取って「GD」と名付けています。年間生産量5000本のみ。温度管理された環境で16~18度の範囲で20日間発酵。50%を500リットルの小樽で6ヶ月熟成しています。黄金がかった麦わら色のイエロー。白桃やシトラスのフレッシュな香りとナッツやバターのリッチな香りが見事に融合したエレガントなブーケ。柔らかく、豊かで包み込むような味わい。そして、わずかなスパイスの香りを伴う長い余韻があります。
ランゲ シャルドネ GD2018

試飲
コメント

黄金色。パイナップルなどの南国系果実のフレッシュな香りが際立ちます。樽由来の複雑なニュアンスも。口に含むと、まろやかでありながらフレッシュな酸味が口の中を駆け上がります。レモンや黄色い柑橘の印象。非常に長く続く余韻があります。

心地よい酸味と優れた骨格の100%ネッビオーロで造るロゼ!

ノヴェッロ村とバローロ村の畑から収穫したネッビオーロを使用。直接圧搾法によるロゼのため、タンニン、色素は控え目。ステンレスタンクで発酵後、ボトルで2ヶ月のみ熟成。オレンジがかったロゼ色。木苺やバラの花を思わせるフレッシュで上品な香り。軽やかなタンニンと酸味との素晴らしいバランスがあります。余韻にピンクグレープフルーツの様な酸味が心地よいです。
ランゲ ロザート2021

試飲
コメント

淡いピンク色。外観と同様の淡い赤い果実、赤い花、フレッシュでクリーンな果実香があります。どこかシナモンのようなスパイスのニュアンスも感じました。口当たりはなめらかでフレッシュ。舌上に残る心地よい酸味。優れた骨格で、余韻が長く続きます。

「ピノノワール好きにおすすめ」な世界的人気を誇るランゲ ネッビオーロ「マルゲ」

バローロ村及びグリンツァーネ カヴール村で栽培されたネッビオーロを使用。収穫されたブドウはネッビオーロとしては短めの12日間のマセレーション発酵。20~100ヘクトリットルの大樽で12ヶ月熟成しています。ルビーレッドにガーネットの色合い。スミレや赤いフルーツ系の繊細な香り。程よい骨格があり、乾いたタンニンが続く。果実味との調和のとれた味わいです。
ランゲ ネッビオーロ マルゲ2019

試飲
コメント

美しい淡いガーネット色。赤い花、潰した花、赤い果実のエレガントな香り。味わいは明るく綺麗。軽やかなな味わいですが、こなれたタンニンを感じるミディアムボディ。香り同様にエレガントな味わいで、優れたバランスがあります。

5つの畑をブレンドして造るクラシックバローロ優良2016ヴィンテージ

異なる5つの畑を合わせた、レチンクエヴィーニェ(5つの畑の意味)という名前の、バローロ クラシコ。超優良ヴィンテージ2016年です。バローロ クラシコは複数の個性を持った畑を合わせることで、お互いの凹凸を補い合い、まとまりのあるワインに仕上げています。長期熟成も可能だが、若いうちから楽しめることこそが、伝統的バローロの姿です。5つの個性の異なる畑をブレンドすることで、ワインに深みを与えるとともに、調和した柔らかな味わいが表現されています。バラや革、タバコの葉やスミレの香りが複雑に絡み合い、余韻が長く続きます。
バローロ レチンクエヴィーニェ2016

試飲
コメント

ガーネット色。花、胡椒、ミントのようなハーブを感じる華やかでクリーン、そしてエレガントな香りです。飲むと美しい酸味が口に残り、オイリーでラベンダーのようなフローラルでエレガントな味わい。ミネラルやレッドグレープフルーツのようなニュアンスの余韻。複雑さ、華やかさ、美しさのあるバローロです。

5つの畑をブレンドして造るクラシックバローロ!綺麗に仕上げられた2014年

異なる5つの畑を合わせた、レチンクエヴィーニェ(5つの畑の意味)という名前の、バローロ クラシコ2014年。2014年はあまり暑くなく、時々雨が降った難しいヴィンテージ。それでも、ダミラノ社としては綺麗なワインに仕上げることができました。14年の特徴としては、もう飲めるワインであるということです。バローロ クラシコは複数の個性を持った畑を合わせることで、お互いの凹凸を補い合い、まとまりのあるワインに仕上げています。長期熟成も可能だが、若いうちから楽しめることこそが、伝統的バローロの姿です。5つの個性の異なる畑をブレンドすることで、ワインに深みを与えるとともに、調和した柔らかな味わいが表現されています。バラや革、タバコの葉やスミレの香りが複雑に絡み合い、余韻が長く続きます。
バローロ レチンクエヴィーニェ2014

試飲
コメント

淡いガーネット色。力強く複雑でありながらエレガントな香り。ラベンダーのような紫色の花のニュアンスが際立ちます。味わいは華やかでエレガント。綺麗な酸味に満たされる充実感のある風味。

400年以上もの歴史を誇る偉大な単一畑「カンヌビ」で造るクリュバローロ!

クリュバローロ「カンヌビ」優良ヴィンテージ2016年。カンヌビという畑の名前は、バローロが存在する以前から特別な畑という認識があり、現存するネッビオーロ最古のボトルが、ブラ村のマンゾーネ家が所有するカンヌビ1752年。バローロという銘柄が登場する100年以上も前になります。砂45%、シルト35%、粘土20%の非常に砂の割合が高い土壌。20日間のマセレーション醗酵。20~100ヘクトリットルの大樽で24ヶ月熟成。全てのバローロの要素が詰められていると言われるのがカンヌビ。柔らかなタンニンと余韻が続く満足感の高い味わいです。
バローロ カンヌビ2016

試飲
コメント

深さのあるガーネット色。やや濃厚で力強い香り。綺麗な赤系果実、スミレ、ラベンダー。こなれたタンニンによって美しい味わいが口中に広がり、長く持続する余韻を演出しています。

偉大な単一畑「カンヌビ」の最も優れた区画で良年しか造らないバローロ リゼルヴァ

砂45%、シルト35%、粘土20%の土壌で、丘の中央部の畑。クリュ「カンヌビ」の中でも最も日当たりが良く、歴史的にも重要な区画。20日間のマセレーション醗酵。熟したチェリー、カカオ、タバコの葉など幾重もの複雑な香り。圧倒的な風格とエレガンスが光る味わい。
バローロ リゼルヴァ カンヌビ 1752<br>2009

試飲
コメント

深さのあるガーネット色。とてつもなく美しく複雑な香り。赤い果実、ドライフラワー、熟した果実、フレッシュな花。口に含んだ時のアタックは柔らかく、あらゆる種類の果実や花を感じる豊かでエレガントな味わい。かなり長い余韻の長さも特徴で、遅れて感じるタンニンがさらに余韻の長さを演出しています。最初から最後までエレガント。2009年とは思えないほどの若々しさもあります。

インタビューを終えて

今回試飲したワインには圧倒されるばかりでした。

上質なシャルドネから始まり、以降は全てネッビオーロ100%のワイン。ロゼ、ランゲネッビオーロ、数々のバローロ…。どれも凄まじいほどに美しく、力強く、そしてバランスに優れたワインでした。カンヌビやカンヌビリゼルヴァはもちろんですが、特に印象的だったのはロゼとランゲネッビオーロです。「この価格帯でこの味わい!」とコストパフォーマンスの高さを感じました。

クラシックバローロのチンクエヴィーニェも絶品でした。輸出マネージャーのトーマスさんがおっしゃるように「わかりやすい味わい」だということもありますが、一番バランスが優れていたと思います。また、今回は試飲できませんでしたが、ダミラノはバルベーラダスティも生産しています。このバルベーラは『ワインスペクテーター』2022年度TOP100で第61位に選出されていて、価格帯もお手頃でかなりお勧めです!

トーマスさんの終始楽しいプレゼンテーションによって、ダミラノ社や彼らのバローロについて深く知ることができました。インタビュー最後には「私の目標はバローロの知識を深くすること。初めてお会いした時よりもバローロのことを知っていただけたら嬉しいです」という言葉で締めくくってくださいました。

私自身も、生産者さんからいただいた知識や情報を、この記事を通してきちんと伝えなければならないなと改めて実感しました。
生産者さんと

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