突撃インタビュー
2023/06/05
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ディエゴ クズマーノ氏 Mr. Diego Cusumano
高品質コントラーダで“エトナらしさ”を表現する「アルタモーラ」!リリース直後から最高評価の「サーレアルト」「フォスヌーリ」が新登場!シチリア屈指の造り手「クズマーノ」突撃インタビュー
創業時から20年で10倍以上も拡大!
シチリア内に複数点在する計525ヘクタールの畑を所有
――ディエゴさん、お久しぶりです。前回はオンラインでしたね。最近のトピックやニュースからお聞かせください。
ディエゴ この2~3年のコロナ禍は畑仕事に注力しました。持続可能性に力を入れていて、その基準に従ってブドウ栽培を行っています。もちろん化学合成物質等は使いません。
そして、新しいワインを2種類リリースしました。本拠地から近いシチリア北部フィクッツァ農園で造る「サーレアルト」、南部のサンジャコモ農園で造る「フォスヌーリ」です。エトナやフィクッツァなどの農園に宿泊施設を建て、ワインツーリズムにも力を入れています。それぞれの産地で全く特徴が異なるので、そのエリアでしか味わえない体験をしていただきたいですね。
・フィクッツァ農園
クズマーノが最初に取得した畑。シチリア北部パレルモ南部に位置し、標高700メートルの森に囲まれた畑。シャルドネやインツォリアなどの白ブドウを栽培。
代表的ワイン:ヤレ シャルドネ、アンジンベ、サーレアルト
・サンジャコモ農園
シチリア南部ブテーラ、標高400メートルの畑。太陽の光を反射するほどの石灰岩の真っ白い土壌。エレガンスとフレッシュさを生むネロ ダヴォラの有名産地。
代表ワイン:サガナ、フォスヌーリ
・プレスティ エ ペンニ農園
シチリア西部モンレアーレ、標高300メートルの畑。太陽と海風の影響を受けるシチリアの典型的なミクロクリマで、昔ながらのネロ ダヴォラや国際品種(特にシラー)の理想的なテロワール。
代表的ワイン:ベヌアーラ、ノア
・モンテ ピエトローゾ農園
シチリア西部モンレアーレ、標高400メートルの畑。北から吹く海風の影響を受ける、砂質土壌かつ緩やかな丘陵地。複雑かつエレガンスが引き出すグリッロにとって最適な環境。
代表的ワイン:シャマリス
・エトナ
シチリア東部、ヨーロッパ最大の活火山エトナ山東部にあるエリア。複数のコントラーダ(区画)を所有し、その多くが北部エリアに位置。800メートル以上の畑で造られ、エレガント&クリーンなワインが生まれる。
代表的ワイン:アルタモーラシリーズ
「生産量を増やす前に畑を購入して先手を打て」
父のアドバイスにより創業から劇的に拡大
――この20年の間でかなり畑を拡大されましたよね。
ディエゴ ワイナリーを創業した2000年時は、父から引き継いだ畑が40ヘクタールありました。その年にフィクッツァ農園、翌年にサンジャコモ農園を取得しました。その後、プレスティ エ ペンニ農園、モンテ ピエトローゾ農園、エトナと拡大していき、今は525ヘクタールあります。
――10倍以上! すごいですね。
ディエゴ もともと自社畑で生産するという考えはありましたが、父からのアドバイスがあったんです。「畑は時間がかかる。生産量を増やす前に先に畑を購入して先手を打て」と。
――2005年にクズマーノを訪問させていただいた時、一緒に写真も撮りましたね。当時はカンティーナを建設中で、ディエゴさんはとても忙しそうにされていました。
ディエゴ そうそう、ちょうどその時も拡大中でカンティーナを建築中でした。それにしても2005年ですか…時が経つのは早いですね(笑)。
“エトナらしさ”と最高品質を生む「グアルディオラ」をはじめ
細かく区分けされた北部のコントラーダを数々所有
ディエゴ エトナは活火山の麓で造る非常に特殊なエリアです。所有する畑のほとんどが北部に位置しています。南部の畑と比べると晩熟で、私たちが考える“エトナらしい”ワインが表現できます。特に北部はコントラーダと言われる区画が非常に細かく分けられています。
これだけ狭い範囲でも標高や位置によって土壌に含まれるミネラルが異なります。今日試飲するグアルディオラは非常に小さい区画で、エトナのエッセンスが詰まったワインです。細かい砂や軽石など、噴火によって土壌の違いが生まれるので少し外れただけで全く特徴が異なってしまうのです。
過去の噴火により多様な土壌が形成
――エトナ山は今も噴火していますよね。
宮嶋 そうですね。1969年の噴火は大惨事で、ランダッツォの村全体が飲み込まれそうになりました。1990年頃にはランダッツォの鉄道が崩壊しました。年に2~3回、カターニャ空港は閉鎖してますよね。エトナでのワイン生産はリスクがあります。
ディエゴ 自分たちの畑がいつ巻き込まれても不思議じゃないですね。噴火すると小さい黒石が飛んでくるので、怖くて飛行機は飛べません。
宮嶋 エトナの場合、砂の多い場所に行くと土壌は真っ黒です。歩くと靴が沈むところもあれば、石ころだらけの場所もあります。2万年前に流れた溶岩で形成された土壌、その隣には1万年前の溶岩による土壌、そのまた隣には50年前の溶岩による土壌というように様々な土壌が形成されています。
――所有するコントラーダを教えてください。
ディエゴ 最初に取得したグアルディオラにはじまり、フェウドディ メッツォ、ピエトラマリーナ、ヴェルゼッラ、モンテドルチェ、パッソ カンノーネ(サント スピリト)…たくさんあります。
エトナ北部
――コントラーダの細かい区分けはどのようにされているのですか?
ディエゴ そもそもコントラーダは行政区として昔から存在していて、村の地図を見ると「~丁目」といった感じで区分けされています。そのため、現地の人間はそれぞれのコントラーダを自然と把握しています。それに着目したアントニオ フランケッティという天才がワインにも活かせると考えたのです。
“エトナらしさ”を生むコントラーダ「グアルディオラ」
ディエゴ エトナロッソに使うグアルディオラの畑は規定により800メートルまでですが、畑自体は1000メートルに及びます。小さい石が多い土壌です。味わいは細身でクリーン。まさにエトナスタイルが表現されたワインですね。
宮嶋 クズマーノのグアルディオラは、小さな段々畑がいくつも重なっていて急斜面で貧しい土壌です。チンクエテッレみたいな世界で、大変コストがかかります。DOCの規定に入らない800メートル以上の畑がまだたくさんあるんですよ。
優しさとボリューム感を生むコントラーダ「フェウドディメッツォ」
ディエゴ フェウドディメッツォは、樹齢100年を超える標高600メートルの畑です。広さは3ヘクタール。砂質土壌で、畑を歩くと足が土中に沈んでしまうほどです。他のエトナワインと比べると、タンニンが優しくボリューム感があります。(バローロで言うと)グアルディオラはセッラルンガ、フェウドディメッツォはラ モッラ。前者のほうが通好みですね。
標高由来のクリーンさが表現された「アルタモーラ」シリーズ
――エトナで造るアルタモーラシリーズは、特にクリーンな印象が強いですよね。
ディエゴ ありがとうございます。アルタモーラに限らず、クズマーノも畑の標高が高いです。その標高由来のエレガントさやクリーンさを非常に重要視しています。
宮嶋 ピエモンテの感じもありますよね。クズマーノの醸造家が、サンドローネを手がけるマリオ ロンコだということも大きいと思います。
歴史、産地、品種が密接に結びつく新ワインをリリース!
海と山を感じさせるエレガントな白「サーレアルト」
――新しいワインについてお聞かせください。
ディエゴ 品種と産地の結びつき、つまりテロワールを新たに発見していくという狙いで2つのワインをリリースしました。まずは、サーレアルト。このワインは、19世紀頃の王様がどんなワインを飲んでいたかを研究して造ったものです。ワイナリー近くに6000ヘクタールの広大な森があるのですが、当時のナポリ王国のブルボン王家はそこで狩りをしていました。
古文書を調べると、彼らは興味深いことに当時から“辛口のジビッボ”を飲んでいたそうなんです。甘口ではなく。その事実に興味を惹かれ、8年間の実験を経てジビッボ、インツォリア、グリッロをブレンドさせたワインを造りました。
「サーレアルト」の名付け親はワインジャーナリスト宮嶋氏!
そして、その完成したリリース前のワインをイサオ(宮嶋氏)の家に送って感想を聞いたんです。そしたら、「地中海の塩味(サーレ)と同時に山(標高の高さ=アルト)のエレガントさを感じる」ということだったので、サーレアルトと名付けました。
宮嶋 突然サンプルが送られてきたんです(笑)。リリースするかどうか悩んでいたそうで、「これはいけると思う」と言って感想を書いたんです。そしたら名前に採用されていました(笑)。
一同 (笑)
――でも、本当に美味しいですね。
宮嶋 リリース初年度から毎年トレビッキエリを受賞するほど大成功しているワインです。
左からサーレアルト、フォスヌーリ
2つの光が交わる標高400メートルの畑のシラー100%赤「フォスヌーリ」
ディエゴ フォスヌーリを造るサンジャコモ農園はもともとネロ ダヴォラの有名産地ですが、シラーも素晴らしいんです。「フォス」とはギリシャ語で光、「ヌーリ」とはアラブ語でも光を意味します。シチリアを支配していた両国の言葉を合わせています。というのも、この土地は太陽の光と真っ白い石灰土壌から反射する上下からの光が特徴的で、二つの光という意味があります。
暑さや光を好むシラーに最適なエリアでありながら、標高400メートルというサンジャコモ農園ならではの個性も表現しています。イ トゥルービという別のシラーもありますが、あまりにも品質が高いので別で造ることになりました。
宮嶋 ここの畑はトゥルービという真っ白な土壌です。その価値や品質の高さがあまり知られていない場所でもあります。
――新しいワインは歴史や産地の結びつき、ストーリー性もあって興味深いですね。
宮嶋 そうですね。テロワールが表現されていますよね。クズマーノは新ワインのリリースに合わせて、ヴィットリオ ストラーロというイタリアの著名な撮影監督(代表作に『ラストエンペラー』『地獄の黙示録』)に、畑の映像制作を依頼したんです。サンジャコモ農園の土壌は白、エトナは黒ということで、それらを対比する形で素晴らしい映像が出来上がっています。クズマーノのホームページで見ることができますよ。
クズマーノ
エトナらしさが全て詰まったミネラルと酸が素晴らしいクリーンな味わい
「カリカンテ100%で造るエトナビアンコです。エトナの白ワインは唯一の個性を持っています。似ている品種が他にないのです。エトナらしさが全て詰まっています。ミネラルと酸が素晴らしく、イタリア白ワインの中でも特に高い長期熟成力があります。フレッシュでクリーンな味わいですね。畑は5つの異なるコントラーダから。収穫時期は非常に遅く、10月15日頃から行います。エトナ以外では通常9月20日には収穫が終わっています。ステンレスタンクで1年間シュールリーの状態で熟成させ、瓶詰め後、6ヶ月瓶内熟成してリリースします」
クズマーノ
高品質コントラーダ「グアルディオラ」の若いネレッロ マスカレーゼ100%で造るロゼ
「ネレッロ マスカレーゼ100%で造るロゼワインです。ロゼらしいロゼだと思います。5000本しか生産していません。2013年に購入した時に植樹したグアルディオラの若いブドウをメインに使用しています。赤ワイン用のブドウより1週間早い10月8日頃に収穫を行います。ブドウをプレスして出た果汁だけを発酵させて造っています。収穫翌年に瓶詰めを行います」
試飲
コメント
玉ねぎの皮のような深く輝く銅色。イチゴ、洋ナシ、シナモンの香り。香り同様の要素を持つクリーンかつ複雑な味わいがあります。イチゴなどの赤系果実とミネラル感が際立つ余韻が持続します。
クズマーノ
繊細でクリーンな果実味! クズマーノを象徴するエトナロッソ
「このワインはクズマーノを象徴するワインです。9つのコントラーダのネレッロ マスカレーゼを使用しています。25ヘクトリットル(2500リットル)のフレンチオーク大樽で12ヶ月熟成させ、2021ヴィンテージは6ヶ月瓶内熟成してからリリースしています。とてもいい香りです」
宮嶋:
「ネレッロ マスカレーゼのタンニンの粗さがないですよね。デリケートでブルゴーニュに近い味わいで、飲みやすさがあります」
試飲
コメント
淡いルビー色。赤い果実、若干の黒い果実のクリーンなアロマが広がります。口に含むとフレッシュな酸とクリーンな果実味がすーっと行き渡ります。わずかな甘やかさとスパイスのニュアンスが少しずつ現れてきます。全体的にエレガントな味わい。
クズマーノ
樹齢100年超!標高600メートルのコントラーダ「フェウドディ メッツォ」
「標高600メートルほどの樹齢100年を超えるフェウドディ メッツォです。他のエトナロッソと比べると、タンニンが優しく甘く、よりボリューム感のある味わいです。25ヘクトリットルの大樽で18ヶ月間熟成させます」
宮嶋:
「フェウドディメッツォはわかりやすい味わいで人気のワインです。ある程度肉付きもあって、大勢で飲んでると、まずフェウドディメッツォからボトルがなくなっていきます(笑)。とても美味しいですよね」
試飲
コメント
ガーネット色を帯びた深いルビー色。赤い果実と凝縮果実、ドライフラワーを感じるクリーンな香り。徐々にリコリスやスパイスのニュアンスが現れます。全体的にクリーンな味わいですが、凝縮感とタンニンが存在感を放つ優れた骨格があります。
クズマーノ
細身でクリーン!タンニンとスパイス感が際立つ標高800メートルの小区画「グアルディオラ」
「小さな段々畑標高800メートルのグアルディオラ畑です。畑自体は1000メートルまであるので、DOCの規定を超えるので使うのは800メートルまでです。細身でクリーン。いかにもエトナらしいスタイルが表現されています」
宮嶋:
「飲み終わった後にタンニンが残りますよね。スパイシーな感じもあります。フェウドディ メッツォはラ モッラで、グアルディオラはセッラルンガみたいに、好みが分かれるところですね。2017年というのも、ちょうど柔らかくなってきて飲み頃だと思います」
試飲
コメント
輝くルビー色。力強さと複雑さを兼ね備えながらも、凝縮果実やフレッシュ果実の繊細でエレガンス溢れるクリーンな香りがあります。香り同様に、力強い果実やスパイスが存在感を放ちながらも、クリーンで綺麗な風味を感じます。際立つタンニンが、綺麗でフレッシュな果実の非常に長い余韻を演出しています。
クズマーノ
リリース初年度から『ガンベロロッソ』最高賞受賞する地中海的白ワイン
「フィクッツァ農園のテロワールの素晴らしさ、可能性を示すために造った白ワインです。標高700メートルのフィクッツァの畑のジビッボ、インツォリア、グリッロをブレンドしています。1年間シュールリーの状態で熟成させています。このアロマを感じますか。品種それぞれが綺麗に溶け合っています。シチリアでは他に似たようなワインがありません。ジビッボをこれだけ高標高の畑で栽培している例があまりないです」
宮嶋:
「ジビッボが入ることによって地中海的な感じが出ていますよね。もっと甘さのあるワインかと思ったら、とてもシャープで引き締まっています。塩味が長く続きます。リリースされた初年から毎年トレビッキエリを取って大成功しているワインです」
試飲
コメント
麦わら色よりの黄金色。南国果実、洋ナシなどの白い果実、ミネラル、ハチミツを感じる力強く華やかな香り。華やかさ、ふくよかさ、ジューシーさ、エレガントさを兼備する味わい。レモンなどの柑橘系の余韻が持続します。フィンガーフードなどのアペリティーヴォに最適な1本です。
クズマーノ
高品質シラー産地シチリア南部ジャコモ農園で造る力強くフレッシュな赤ワイン
「南部ブテーラのサンジャコモ農園で造るシラー100%赤ワインです。ここはネロ ダヴォラで有名な産地ですが、シラーの品質も素晴らしいんです。標高400メートル、樹齢30年のブドウを使用しています。3600本程度しか生産していません。あまりにも品質が高いので、イ トゥルービとは別ラインで造りました」
宮嶋:
「シチリアの標高が低いエリアだとよりフルーティな赤い果実が表れますが、サンジャコモは標高も高いのでフレッシュさもあります。とても美味しいです」
試飲
コメント
濃く深いルビー色。黒や紫のドライフラワー、潰した花の濃密な香り。黒胡椒などのスパイス感もあります。口当たりは非常にソフトですが、力強いフレッシュさを感じます。果実が凝縮した濃密でエネルギッシュな味わいで、存在感のあるタンニンとブラックベリーの余韻が持続します。
インタビューを終えて
アルタモーラと言えばクリーンでピュアな味わい。ヴィンテージが変わっても、その特徴をしっかりと堪能できました。「グアルディオラ」と「フェウドディメッツォ」というコントラーダの飲み比べは大変興味深かったです。グアルディオラは、フレッシュで美しさがありながらも力強さやタンニンが際立っていました。フェウドディメッツォは、凝縮感とクリーンさが特徴的でどちらかというと親しみやすい味わい。宮嶋さんの「グアルディオラはセッラルンガ、フェウドディメッツォはラ モッラ。前者のほうが通好みですね」という言葉も印象的でした。
宮嶋さんが命名したサーレアルト。ご本人がおっしゃるようにミネラル感とエレガンスを感じ、華やかさ、ジューシーさ、力強さを感じる特徴的な味わいで本当に美味でした。立食パーティ等に最適だと感じました。
シチリア屈指の造り手「クズマーノ」の新登場ワイン「サーレアルト」「フォスヌーリ」を含め、「アルタモーラ」など数々のワインをぜひお楽しみください!
試飲
コメント
輝く麦わら色。洋ナシや白桃などのジューシーな白い果実、ミネラルの香り。フレッシュで綺麗な酸が口中を満たし、新鮮な果実や熟した果実をそのままをかじったようなジューシーさ溢れるクリーンな余韻が持続します。ほどよい骨格。