TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2023/03/10

フランチェスコ ガッリン氏 Mr. Francesco Gallin

バルベーラの最高峰「ニッツァ」&高級瓶内二次発酵スパークリング「アルタランガ」DOCG昇格のモデルとなった先駆者!銘醸地モンフェラートで130年の歴史を誇る名門「コッポ」突撃インタビュー

生産者さん
銘醸地モンフェラートのカネッリ村に根付く歴史的名門「コッポ」。1892年創業とワイナリーの歴史は長く、20世紀初頭から主に甘口モスカートの生産から始まりました。現在ではスプマンテ、樽熟成シャルドネ、高品質バルベーラを中心に生産。エリア外でありながら特例ワイナリーとしてバローロやガヴィも造っています。特筆すべきは2つのDOCG。バルベーラの最高峰「ニッツァ」と高級スプマンテ「アルタランガ」です。DOCGに認定される約30年も前から生産を開始し、両銘柄のお手本となるなど、DOCG昇格に大きく貢献しました。今回は、マーケティングマネージャーのフランチェスコ ガッリン氏に、ワイナリーとその歴史についてお話を聞きました。

1892年創業。歴史的銘醸地モンフェラートのカネッリ村に根付く名門コッポ家

――今日はよろしくお願いします。自己紹介とワイナリーの紹介からお願いします。
 このような機会をいただきありがとうございます。マーケティングマネージャーのフランチェスコ ガッリンです。コッポは、今から130年以上前、1892年にピエモンテ州アスティ県カネッリ村に創業したワイナリーです。ランゲ、アルタランガ、モンフェラートという三つの重要なワイン産地に囲まれるのがカネッリ村です。カネッリ村一体の地下大聖堂セラーはユネスコの世界遺産に登録されています。

 私たちは様々なワインを生産していますが、コッポの歴史はモスカートスプマンテの生産から始まりました。ここ40年は高級スプマンテのアルタランガ、樽熟成シャルドネ、バルベーラに注力しています。実は、伝統的にガヴィとバローロも少量生産しています。カネッリ村はバローロDOCGの区画外ですが、ある一定の条件(※)をクリアしており、例外的にバローロを造ることが認められた数少ないワイナリーの一つです(畑はバローロエリア)。
※バローロの規定が制定される前からバローロを造り、一定の品質を保っていること
地図
初ヴィンテージは1984年!
輸入商で培ったノウハウを生かして生み出されたアルタランガ、樽熟成シャルドネ、樽熟成バルベーラ

 コッポ家は、1950年代にシャンパーニュとブルゴーニュ地方を中心としたワイン専門の輸入商をしていました。その経験からフランスワインの醸造や味わいに対する理解を深め、1984年にはバリックを使った長期熟成ワイン「リゼルヴァ コッポ(アルタランガ)」、「モンテリオーロ シャルドネ」、「ポモロッソ(ニッツァ)」が初めて造られました。どのワインもアルコール発酵時からバリックを使用していますが、新樽と古樽を用いて、調味料としてではなく醸造の手法として使い続けています。小樽の使用に関しては、イタリアのワイナリーの中で最も古い歴史を持っています。
ボトル3本
1980年代、当時ではあり得ないバリックを使った長期熟成バルベーラを先駆けて生産
――フランスワインの輸入商の経験からバリック導入に至ったということですが、アンジェロ ガヤさんも早くから導入しましたよね。
 同じ時期ですね。しかし、ガヤとコッポとでは物語が異なります。ガヤはあくまでネッビオーロ。もともと重要だったブドウ品種にバリックを使用したということです。一方でコッポは、誰よりも早くバルベーラに使用しました。これはありえないことでした。なぜなら、バルベーラはそもそも貧相な日常用のブドウ品種とされ、長期熟成が難しく価値がないと言われていたからです。

 それが、初ヴィンテージの1984年から40年ほど経ち、バルベーラの最上区画ニッツァがDOCGに昇格するなど状況は一変しました。私は今、みなさんにバリック熟成バルベーラの素晴らしさをお伝えするために遠い日本に来ています。当時では考えられないことですね。

 バリックの導入だけでなく、1980年代から低収量による高品質ワインの生産にも取り組んでいました。昔は、収量は多ければ多いほど良いと考えられていたので、周囲の人間は「なんてもったいないことをするんだ」と驚いていたそうです。その当時、周辺エリアでは誰もやっていないことでした。バリック

最高峰バルベーラ「ニッツァ」&高級瓶内二次発酵スパークリング「アルタランガ」
DOCG昇格の約30年も前からお手本となる両銘柄を先駆けて生産

ニッツァDOCG、アルタランガDOCGのモデルとなるワインを約30年も先駆けて生産
――ニッツァもアルタランガも近年DOCGに昇格して注目を浴びていますが、それはまさにコッポが長年造り続けてきた功績ですね。
 そうですね。二つともDOCGに昇格したのは最近ですが、コッポは全く同じワインを1984年から造り続けています。リゼルヴァ コッポもポモロッソも、DOCGになる前と後で変わったことは何もありません。同じワインに新たな原産地呼称がついただけです。ニッツァDOCGの規定を決める時にポモロッソをお手本にしたほどです。
(DOCG昇格年 アルタランガ:2011年 ニッツァ:2014年)
セラー
DOCG昇格前から代々語り継がれるバルベーラの最良地区「ニッツァ」
――ニッツァDOCGについて教えてください。
 バルベーラの頂点に立つのがニッツァDOCGです。ニッツァは、約170の村で構成されるバルベーラダスティの広大なエリアの中の、18の村に限定された小区画で造られています。面積で言うと10分の1くらいです。
――バルベーラダスティと比べて異なる特徴は何ですか。
 まずは、理想的な気候と土壌を持つ地理的条件です。それらに優れたニッツァ産のバルベーラは、他エリアと比べて明らかに品質が違うと昔から言われてきました。そして、ニッツァのほうが収量が少ないという規定もあります。熟成期間も異なります。バルベーラダスティ(スペリオーレ)は14ヶ月以上の熟成に対して、ニッツァは少なくとも18ヶ月以上熟成させる必要があります(リゼルヴァは2年半)。

 もう一つ重要なことがあります。それは、コッポをはじめ、何代にもわたり高品質バルベーラをニッツァで造り続ける生産者たちの存在です。彼らの業績により、現在の醸造ルールが定められたと言えます。ヴィエッティ、プルノット、ミケーレ キアルロなど偉大な生産者がDOCG制定前から集まり、歴史的に高品質バルベーラが生まれると知られるエリアでもあるのです。ニッツァのカステルヌオヴォ カルチェア村の畑ニッツァのカステルヌオヴォ カルチェア村の畑

コッポ社フランチェスコ ガッリン氏によるワイン解説

コッポ社フランチェスコ氏にワイン解説をしていただきながら、ワインを試飲しました。

ピノネロ主体で造る優れた骨格と清涼感が際立つ瓶内二次発酵スパークリング

フランチェスコ ピノ ネロ80%、シャルドネ20%で造るアルタランガです。ベースワインを9ヶ月間バリックで熟成させた後に、澱とともに瓶詰めを行い、36ヶ月以上熟成させます。これにより、このようなクリーミーでキメの細かい泡が生まれます。ピノ ネロ主体で造ることにより生まれる骨格と、突出した清涼感、フレッシュさが特徴です。すぐに飲んでもいいですし、長期熟成させることも可能です。アルタランガは、全体的に生産量が増えていますが、コッポ社としては生産量を増やすつもりはなく、クオリティを追求することに注力していきます。樹齢の高いブドウを使用していて収量が限られるので、生産本数は6000~1万本です。
リゼルヴァ コッポ アルタ ランガ エクストラ ブリュット2017

試飲
コメント

パンの皮や柑橘果実が漂う華やかな香り。繊細でクリーミーな泡が柔らかい口当たりを感じさせます。ピノネロ由来のしっかりとしたボディの上に、清涼感溢れる味わいがあります。持続性のある余韻。

最もカジュアルなスタイルで造られるフレッシュでまろやかなシャルドネ

フランチェスコ コステビアンケは、コッポ社が造るシャルドネの中で最もカジュアルなスタイルで造られている白ワインです。主にステンレスタンクで醸造していて、一部10%を樽で熟成しています。フレッシュさ、果実感、少しのボリューム感、バランスの良さを大切にしています。2020年は、樽の使用量が約20%でした。清涼感のある味わいで、アペリティーヴォ、野菜料理、魚料理と相性がいいです。このワインとモンテリオーロを飲み比べて、違いを感じていただけたらと思います。
コステビアンケ シャルドネ ピエモンテ2020

試飲
コメント

外観は黄金色よりの麦わら色に輝いています。遠くからでもフレッシュで果実感のある香りが広がっています。口当たりが非常にソフトでまろやか。爽やかなフルーティさもあります。白い果実、黄色い果実、ややハチミツのニュアンスがある繊細な味わい。

鋭い酸とボリューム感に溢れ、軽やかさも兼ね備えているバリック熟成シャルドネ

フランチェスコ モンテリオーロは長い歴史を持った長期熟成タイプのシャルドネです。1984年から変わらずバリックでアルコール発酵から熟成まで行っています。ブルゴーニュスタイルに加え、イタリアらしい親しみやすさもあります。カステルヌオヴォ カルチェアにある、フレッシュさが引き出される標高200メートルの区画で造っています。日常的に飲めるコステビアンケ、凝縮感があり何年も熟成できるモンテリオーロ。二つのシャルドネの違いがわかっていただけたと思います。
モンテリオーロ シャルドネ ピエモンテ2019

試飲
コメント

フチが黄金色に輝く麦わら色。青リンゴなどジューシーな果実、南国果実、エキゾチックな果実など、様々な果実が重なった香り。香り同様の味わいで、特にバナナなどの南国果実と鋭い酸が際立っています。骨格がありながら、フレッシュで軽やかさも兼ね備えている樽熟成白ワインです。

ステンレスだけで造られる日常的に楽しめるピュアなバルベーラ

フランチェスコ ラッヴォカータは、ステンレスタンクだけで造られるバルベーラのジュースのようなワインです。伝統的な味わいで、品種そのものの特徴がわかっていただけると思います。暑い時期は冷蔵庫で冷やしてから飲むのもお勧めです。料理を選ばない日常的に楽しめるワインですね。
ラッヴォカータ バルベーラ ダスティ2020

試飲
コメント

香り、味わいともにチェリー、ラズベリー系のフレッシュな果実と心地よい酸。タンニンはほとんどなく、ブドウの個性がそのまま伝わってくるピュアな味わい。

フレッシュな酸と程よいボディの親しみやすいバルベーラダスティ

フランチェスコ カンプ ドゥ ルスの名前は、かつて赤毛の男性が所有していた畑から由来しています。100%バルベーラ。12ヶ月間、2回以上使用した古樽で熟成させています。これは、樽のバルベーラのお手本となるワインです。濃い赤みがかった色合い。赤果実のフルーツの香り。品種由来の少ないタンニン、高い酸という、バルベーラの特徴が表れています。骨格もありますが非常に飲みやすく、口当たりのいいワインに仕上がっています。
カンプ ドゥ ルス バルベーラ ダスティ2019

試飲
コメント

やや濃いルビー色。中程度の力強さと複雑さのある香り。紫や赤い果実のフルーティさ、スパイシーさもあります。口に含むと、赤系果実と紫果実のフレッシュな果実と樽の甘やかさが綺麗に溶け合っています。

バルベーラの最高峰!重厚感とエレガンスを兼ね備えたフラッグシップ

フランチェスコ ポモロッソはニッツァDOCGです。まさにコッポ社を代表するフラッグシップワインです。コッポの名は、ポモロッソとともに知られています。ニッツァ モンフェラート村、カステルヌオヴォ カルチェア村、アリアーノ テルメ村の3箇所のブドウを使用しています。これらの畑は全て西側に集中しています。もともと西側には、ヴィエッティ、プルノット、ミケーレ キアルロなどの優良生産者が所有する重要な畑が集まる歴史的なエリアです。

 ポモロッソの収穫は周辺の生産者よりも数日後に行う傾向にあり、しっかり熟れたブドウを使用しています。畑でも選別し、セラーに運ばれてからも選別しています。ステンレスタンクで発酵を行い、バリックで熟成させます。年によって異なりますが14~16ヶ月の樽熟成し、瓶詰め後、数ヶ月セラーで寝かせてからリリースします。カンプ ドゥ ルスよりももっと凝縮した色合い。果実感に加えて重厚感とエレガントさがあります。
ポモロッソ ニッツァ2017

試飲
コメント

非常に濃い紫色よりのルビー色。凝縮した甘やかな果実、ドライフルーツの力強い香り。香り同様の味わいで、口当たりはクリーミー。フレッシュな果実とバニラなどの甘やかなスパイスが溶け合う風味が余韻として長く持続します。

インタビューを終えて

1984年に造った3つのワイン、「リゼルヴァ コッポ」、「モンテリオーロ シャルドネ」、「ポモロッソ」が今も当時と変わらない造り方だというお話を聞いて驚きました。唯一変わったことは原産地呼称。「リゼルヴァ コッポ」はアルタランガDOCG、「モンテリオーロ」はピエモンテDOC、「ポモロッソ」はニッツァDOCGに昇格しています。特にアルタランガとニッツァは、近年注目されているワイン(エリア)ということもあり、当時から現代に通じるワインを先駆的に造っていたということにも驚きです。

試飲をすると、ラッヴォカータを除く全てのワインに対して、樽が綺麗に溶け合っているなという印象を受けました。これは1950年代から蓄積してきたノウハウを生かし、イタリアでどのワイナリーよりも早くバリック熟成に取り組んできたコッポ社ならではの表現だと感じました。

最高品質バルベーラ「ニッツァ」と高級瓶内二次発酵スパークリング「アルタランガ」の先駆者であるピエモンテの名門「コッポ」のワインをぜひお楽しみください。
生産者さんと

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