TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2021/11/16

百合草梨紗さん Ms. Risa Yurigusa

日本人女性初のボルドー醸造家!ペトリュスの伝説的醸造家ベルエ氏お墨付きの自社畑で造るメルロー100%のトップキュヴェ!サンテミリオンから続くプラトー土壌、完全有機農法でピュアな味わいを追求する「シャトージンコ」突撃インタビュー

百合草さん
「シャトー ジンコ」は、日本人女性初のボルドーワイン醸造家、「百合草梨紗」氏が2015年に立ち上げたワイナリーです。2017年、テレビ番組『世界の日本人妻は見た』で取り上げられて一躍話題となりました。銘醸地サンテミリオンと地続きで同じテロワールを持つ自社畑は、あのシャトー ペトリュスの伝説の醸造家ベルエ氏のお墨付き!メルロー100%で造られるトップキュヴェ「シャトー ジンコ」は、完全有機農法を用いて豊富なミネラルと旨味が引き出された逸品。百合草氏が醸造家になるまでの経緯やワイナリー創設エピソード、ワイン造りのこだわりなどについてお話を聞きました。

日本人女性初のボルドー醸造家「百合草梨紗」の誕生~3つの運命的な出会い~

「サンテミリオン」との出会い
百合草さん短大卒業後、アパレル業界で働いていた百合草氏は、ワインの講師である友人と試飲会に参加するようになります。何度か試飲を重ねるうちに人とは違う感覚を得るようになり、「気づいたらハマっていました」と当時を振り返ります。格段惹かれたのは「サンテミリオン」のワイン。ある時、特に感動したワインのエチケットを確認すると、そこには「サンテミリオン」の文字がありました。それをきっかけに、当時21歳の百合草氏はフランス留学を決意。ボルドーで午前はフランス語を勉強、午後はシャトーへ、という日々を送るようになります。

ご主人マチュ クレスマン氏との出会い
マチュ氏百合草氏は、醸造やテイスティングを学ぶためにボルドーのワイン学校に進学します。そこで出会ったのが現在のご主人マチュ クレスマン氏です。マチュ氏は大手ネゴシアン「クレスマン」のオーナー一族の出身。シャトー ポンテ カネやシャトー ジスクールでインターンを経験した後、アメリカのインポーターに勤務。一方で百合草氏は、シャトー カルム オー ブリオンやフランスのネゴシアンの日本支部で経験を積み、東京のワインショップでも働きました。再度フランスに戻ると、マチュ氏とネゴシアン業を起ち上げます。計10年ネゴシアンとして働く中で、徐々に「自分の美味しいワインを造りたい」という思いが芽生えてきました。すると、ネゴシアンとして多くの造り手との信頼関係を築いてきた百合草氏のもとに、複数のサンテミリオン生産者も目をつけるようなカスティヨンの素晴らしい畑が売りに出ていると情報が入り、購入を検討し始めます。

ペトリュスの伝説的醸造家「ジャン=クロード ベルエ」氏との出会い
自分のワインを造るために奮闘中の百合草氏に、また新たな出会いが舞い降りてきます。百合草氏夫妻が住むアパートの1階に、ペトリュスで44年間、醸造家として活躍したジャン=クロード ベルエ氏が引っ越してきたのです。そんなベルエ氏に頼み込んで、購入を検討していた畑を見てもらうと、同行したペトリュスの土壌専門家と共に「素晴らしい。ここなら大丈夫だ」というお墨付きをもらい、畑の購入を決めました。百合草氏はベルエ氏との出会いを「運命的でした」と話します。

ベルエ氏とペトリュスの土壌専門家

ペトリュスの伝説的醸造家、メルローの達人ベルエ氏お墨付きの畑を購入!
銘醸地サンテミリオンと地続きで土壌構成も同じ畑でテロワールを追求

多くの優良生産者が目をつけていた畑を購入した「シャトージンコ」
ベルエ氏お墨付きのシャトー ジンコの畑は、サンテミリオンから東に車で10分、サンフィリップデグイ村にあります。この畑は、プラトーという高級ワインが生まれる台地と地続きで、土壌もほぼサンテミリオンと同じです。また、標高100メートルとその地域では高く、風通しの良いエリアとして知られ、多くの優良生産者が目をつけていました。
※緑:プラトー台地
水色:サンテミリオン
ピンク:コート ド カスティヨン
地図ブラインドテイスティングでラフィットよりも評価されたワインが生まれた土地
「シャトージンコの旨味と複雑さは土壌から来るもの」

百合草氏に所有畑と土地について話していただきました。
「カスティヨン コート ド ボルドーにある1.5haの畑を2015年11月に購入しました。風通しが非常によいエリアで、洗濯物はすぐに乾きます。畑はサンテミリオンと同じプラトーという高級ワインが生まれる台地にあります。ブドウの樹はもともと植えてあり、前所有者のルシンファミリーがしっかり手入れをしてくださっていました。前オーナーが造るワインは、とあるブラインドテイスティングでラフィットより上だと評価された過去があります。この土地はそれくらい評価されています。

地層畑は2区画に分けられていてどちらも南向きです。ブドウの樹は樹齢が異なり、中には95歳の古樹もあります。シャトー ジンコのワインは複雑味と旨味が特徴ですが、これは古樹というよりは、土壌から来るものです。ワインは90%畑からできていると考えていまして、私たちは畑を購入した時から、テロワールや土地の個性を味わえるワインを作っていきたいという思いがあります」

「ジンコ(イチョウ)のようにエネルギッシュで芯のあるワインを造っていきたい」
そもそもジンコとはどういう意味なのか教えていただきました。
「ジンコとはイチョウの樹を意味します。フランスでイチョウは広島の原爆にも耐えた生命力のある神秘的な樹として知られています。エネルギッシュで芯のあるワインを造っていきたいという思いもあり、次女が生まれた時に畑の近くにイチョウの樹を植えました。実は、ジンコの正しい発音は“ジンキョ”というらしいんです。最初に通訳してくれた方がジンコと訳したので、そのままジンコとしています。」

畑

2019年にオーガニック認証ABを取得。自然を尊重した昔ながらの手法でブドウのピュアな味わいを表現!

オーガニック認証ABシャトー ジンコは、ブドウ本来のピュアでクリアな果実味を引き出すために、畑を購入した時から、農薬、除草剤、殺虫剤等を一切使用しないオーガニック農法に取り組んできました。その結果、初ヴィンテージの2016年から、3年かけて国際有機認証機関エコサートの厳格な審査にクリア。オーガニック認証ABの審査もクリアし、2019年からオーガニック認証を受けています。畑の仕事はなるべく昔の手法、手作業で行い、今使用するトラクターも将来的に馬に移行する予定だそうです。

自然発酵、ノンフィルター、無清澄で造る旨味が凝縮された「シャトー ジンコ」
自然を尊重して昔ながらの手法を一貫して行うワイン生産

トップキュヴェ「シャトージンコ」は、自然をリスペクトした手法で醸造を行い、ピュアな果実味と旨味を抽出することを心がけています。天然酵母のみを使用し、発酵の際は温度管理を行わず、澱引きは1回のみ、フィルターもかけません。2021年は、自らの足で温度を見ながらブドウを踏むこと(ピジャージュ)にも挑戦したそうです。アルコール度数が上がるとえぐみが出やすくなるため、ヴィンテージによって調整を行い、えぐみを消して旨味だけを抽出するようにしています。

「2019年は傑作、スーパーヴィンテージ」
“私、百合草が保証します”という意味も込めてラベルに自身の名を押印

ジンコボトル4ヴィンテージ目を迎えた「シャトージンコ」。「自然から学ぶことが多かったです」と百合草氏が語るように、過去には霜や雨の影響を受けたヴィンテージもありました。何よりも自然に寄り添いテロワールの個性を大切するため、ヴィンテージによって味わいが全く異なり、三者三様にヴィンテージの好みが分かれるそうです。

しかし、2019年は素晴らしい出来栄えで、百合草氏は「幸運なことに2019年は、今までで一番いい年になりました。スーパーヴィンテージ、傑作と言えます」と話します。2019年ヴィンテージの生産本数は4578本と少数です。ラベルには百合草氏の名前とシリアルナンバーが載っており、「私、百合草が保証します」という意味が込められています。

ボルドー白ワインの銘醸地グラ―ヴのワイナリーと連携&完全監修するセカンドレンジ白「ジー バイ」
まろやかさとキレのある酸味が織りなす美しい余韻

グラ―ヴのワイナリーと連携&完全監修して造るセカンドレンジ白「ジー バイ」。新鮮で濃厚なボリュームがあり、柑橘系のフルーツ、マンゴーやハチミツのような甘い香りが口いっぱいに広がります。まろやかなアタックと徐々に広がる酸味のキレが特徴です。

「ジー バイ ユリグサ ブラン」について百合草さんにお話しいただきました。
「これは酸味とまろやかさを大事にしているワインで、アロマティックなブドウの果実を感じます。あとから花のブーケの余韻を感じることも特徴です。シャトー ジンコのワインは和洋中、どんな食事にも合わせることができます。この白ワインは抜栓後、冷蔵庫に保管すれば1ヶ月はもつので、今日は和食と合わせて、明日は洋食と…といった具合で楽しんでいただけます。和食は刺身、天ぷら、焼き牡蠣。洋食はアヒージョ、鶏や豚のクリーム系料理。中華はバンバンジーや油淋鶏に最適です」
ジー バイ ユリグサ ブラン2020

試飲
コメント

黄金に近い麦わら色。桃や柑橘系、メロン、マンゴー、ハチミツ、花を感じるアロマ。香り同様のふくよかな果実味とフレッシュな酸味が口中に広がります。徐々に存在感を増すキレのある酸味とクリーミーなまろやかさが綺麗に融合し、美しい余韻となって心地よさを与えてくれます。

「百合草梨紗」氏が完全監修するセカンドレンジ「ジー バイ」シリーズ赤ワイン
口中に広がるピュアな果実味!フレッシュな酸が見事に調和する上質な味わい

所有畑のすぐ近くにあるワイナリーと提携し、百合草氏の完全監修によって造られるピュアな果実味が魅力の「ジー バイ」シリーズの赤ワイン。ピュアな果実味と酸が見事に調和するしっかりした骨格のある逸品です。

百合草氏に「ジー バイ ユリグサ ルージュ」についてお聞きしました。
「このワインは、所有畑の近い畑で造られたブドウを使っていて、ジンコと同じ果実味を感じると思います。ルモンタージュをして旨味を引き出すことも意識しています。時間が経つにつれて徐々に表情が変わっていきます。品種のブレンドはその年の出来を見て私が判断しています。シャトー ジンコのワインは和洋中、どんな食事にも合わせることができます。和食は肉じゃが、すき焼き、鴨しゃぶ。洋食はプルーンと豚肉、チーズ。中華は、麻婆豆腐、チンジャオロース、パーコー麺が最適です」
ジー バイ ユリグサ ルージュ2020

試飲
コメント

ルビー色。黒い果実や赤い果実、スパイスの香り。リッチな口当たりがあり、なめらかなタンニンと口中にピュアな果実味が広がります。しっかりとした骨格の上にフレッシュな酸とじわじわくる旨味が重なります。バランスと余韻に優れた優雅な赤ワイン。

ペトリュスの伝説的醸造家ベルエ氏お墨付きの畑で造るトップキュヴェ「シャトー ジンコ」!
完全有機農法が生む旨味が凝縮されたミネラルと綺麗な酸

話題の日本人女性醸造家、「百合草梨紗」氏が手掛けるトップキュヴェ「シャトー ジンコ」。カスティヨン コート ド ボルドーに位置する1.65haの所有畑は、ペトリュスで44年活躍したメルローの達人ベルエ氏お墨付き!

オーナーの百合草氏は「シャトー ジンコ」についてこう話します。
「(じっと一点を見つめ)美味しいですね…。ムートンのミネラル感を思い出していました。抜栓してから3時間はあけてから飲まれたほうがいいですね。これは60年後も飲めるワインで、次の日が美味しいという人もいらっしゃいます。5日間ほど味の変化を楽しめます。ぜひ大きいグラスで飲んでいただきたいです。

1.65haの畑は2区画に分けられていて、どちらも南向きです。中には95歳の樹もありますが、このワインの複雑さは古樹からというより土壌から来るものだと思います。アルコール度数が上がるとえぐみが出やすくなります。ですので、ヴィンテージによって味を見て、えぐみを消して旨味だけを抽出するように意識しています。ラベルにはハンコとシリアルナンバーがありますが、これは“私、百合草が保証します”という意味が込められています。合わせる食事は、すき焼き、ゴマたれのしゃぶしゃぶ、鴨料理、北京ダック、担々麺などが最適です」
シャトー ジンコ2019

試飲
コメント

ガーネット色。力強さと複雑さを持った香り。ベリー系などの森の果実、土などのミネラル、スパイシーさを感じる味わいで、ぎゅっと詰まった旨味があります。やや果実由来の甘さも感じました。しっかりとした骨格と果実味の余韻が心地良く長く続きます。1週間後に再度試飲すると、全く衰えることなく変わらず生き生きとした味わいでした。

インタビューを終えて

インタビュー中、非常に印象的な出来事がありました。百合草さんは、トップキュヴェ「シャトー ジンコ」を試飲するや否や、一点を見つめたまま5秒間ほど静止したのです。どうしたんですかと問うと、「すみません、いや、本当に美味しいなと思いまして…(笑)。ムートンのミネラルを思い出していました」と。それを見て、本当にこの方は自分のワインを愛し、情熱を捧げているのだなと強く感じました。

サンテミリオンに惹かれてフランスに渡り、ご主人と出会い、そして導かれるように伝説の醸造家ベルエ氏と出会います。一見すると「引きが強い」、「強運」という印象を受けますが、それは百合草さん自身が情熱と信念を持って奮闘し、自ら手繰り寄せた運命なのだと思いました。

将来の目標を聞くと、「ルロワさんみたいになりたいです。土を食べて、長靴履いてポルシェに乗りたいですね(笑)。今後も命を懸けてワイン作りをしていきたいです」と意欲を燃やします。

ペトリュスで44年間、活躍した伝説の醸造家ベルエ氏が太鼓判を押す畑でワイン生産を行うシャトー ジンコ。数年後は入手困難なワインになっているかもしれません。生産本数も毎年、数千本と多くありません。そんな魅力たっぷりのシャトージンコのワインをぜひお楽しみください。
生産者さんと

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