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Interview

突撃インタビュー

2023/03/15

ジャン クリストフ ベルナルディン氏 Mr. Jean-Christophe Bernardin

『ワインアドヴォケイト』100点満点を最多で獲得!ビオディナミ農法の先駆者としてローヌ地方のテロワールを忠実に表現するエルミタージュの最高峰「M.シャプティエ」

ベルナルディン氏
1808年創業、ローヌ地方の銘醸地エルミタージュに根付く老舗ワイナリー「M.シャプティエ」。7代目のミシェル シャプティエ氏に至るまで一貫した家族経営のもと、畑を守りテロワールを尊重する造り手です。ワイン評価誌『ワインアドヴォケイト』では、世界最多となる50回以上もの100点満点を獲得。ロバート パーカー氏に「これ以上に並外れたワインを造り出すワイナリーは世界中探してもほとんどない」と評価されるエルミタージュの最高峰として知られています。「自然は常に最終決定権を持っている」というミシェル氏の哲学のもと、いち早くビオディナミ農法を取り入れ、ローヌ地方のテロワールやヴィンテージの特徴を忠実に表現しています。今回は、シャプティエ社のブランドアンバサダー、ジャン クリストフ ベルナルディン氏にオンラインでお話を聞きました。

エルミタージュ最大にして最高峰
7代目ミシェル氏により大飛躍を遂げたローヌの老舗「M.シャプティエ」

――それでは、よろしくお願いします。
 このような機会をありがとうございます。私は、ブランドアンバサダーを務めるジャン クリストフ ベルナルディンです。シャンパーニュ出身で、実家がレコルタンとしてワインを生産しているので、ワイン造りから販売まで経験しています。本日は、シャプティエ社の歴史や哲学、ローヌ地方、ワイン造りについて話したいと思います。

7代目ミシェル氏 シャプティエは、1808年に創業した200年の歴史を持つ家族経営ワイナリーです。ワイナリーとして評価が高まったのは、現当主である7代目のミシェルが引き継いだ1989年以降のこと。それまでは毎年変わらない味を追求していたのですが、ミシェルはブルゴーニュスタイルを導入しました。つまり、気候や土壌が異なる畑の個性を細分化したのです。7代目のワイン造りと哲学が評価された結果、合計50回を超えるパーカーポイント(ワインアドヴォケイト)100点満点を獲得しています。(写真は7代目ミシェル氏)

――M.シャプティエの「M」は何を現しているのですか。
 ファミリーネームの頭文字です。営業部長マチルダ(8代目)、畑と醸造の責任者マキシム(8代目)など、名前は全てMから始まっています。

エルミタージュ全体の25%を所有する最大生産者
――畑についても教えてください。たくさんの畑を所有されていますよね。
 ローヌ地方は大きく北部と南部に分けられます。北部は高品質ワインが生まれる産地で、ローヌ全体生産量の5%しかありません。急斜面で痩せた土壌で、単一畑で造られることが多いです。南部は全体生産量の95%を占め、複数品種のブレンド、平地であることが多いです。

 シャプティエの本拠地は北部のタン エルミタージュ。まさに急斜面です。自社畑はローヌ全体で250ヘクタールあり、そのうち34ヘクタールがエルミタージュの丘にあります。エルミタージュ全体の25%をシャプティエが占めており、私たちはエルミタージュ最大の所有者でもあります。
ローヌ地図
全てのワイン愛好家に向けた点字表記ラベルを採用
点字ラベル シャプティエは、全てのワインに点字表記ラベルを採用しています。かつてエルミタージュに畑を所有していたシズランヌ家のモーリス モニエさん(1857-1924)が失明してしまい、事業を継続できなくなり、シャプティエが彼らの畑を引き継ぎいた過去があります。シャプティエは彼に敬意を表して、点字ラベルを用いています。

――点字を入れる生産者は他にいらっしゃいましたか?
 誰もいません。シャプティエが初めてです。

1991年にいち早くビオディナミ農法を導入し、ヴィンテージと畑の個性を忠実に表現

ビオディナミ農法の先駆け的存在
 7代目のミシェルは、畑とヴィンテージの個性を最大限に引き出すために、ローヌで誰よりも早くビオディナミ農法を導入しました。先ほど話したように気候や土壌が異なる畑を細分化したり、単一ブドウで造ることも彼の哲学の一つです。これがワイナリーにとって大きな転換点となりました。

テロワールを忠実に表現するコンクリートタンクの導入
 また、テロワールを忠実に表現するためにコンクリートタンクを使用しています。例えば、ステンレスタンクは、空気を全く通さないため果実感が前面に出るピュアなワインを生みます。樽は樽由来の香りやタンニンなどの複雑性を生みますが、テロワールが隠れてしまいます。一方で、コンクリートタンクは、微量の空気を通しワインに柔らかさを与え、樽の香りを移しません。このことから、私たちはコンクリートタンクが最もテロワールが表現できると考えています。

 どれがいいということではなく、スタイルの違いです。ローヌの造り手の中でも、ポール ジャブレ エネは主にステンレスですし、ギガルは木樽を使用しています。そして、私たちはコンクリートタンクです。
タンク特徴

ブランドアンバサダー、ベルナルディン氏によるワイン解説

日常ワインから高級ワイン、ビオディナミ特化ワインまで多岐にわたるワインシリーズ
ワインカテゴリーシャプティエは複数のシリーズに分けてワインの位置づけを行っています。また、別ラインとしてビオディナミ農法に特化したシリーズも造っており、SDGsへの取り組みなど多角的な視点で活動をしています。

1. 「ファク エ セペラ」~絶対的シリーズ~
テロワールの最高峰、単一畑シリーズ。著名な産地の中でも特に区画ごとに分けて土壌の違いを表現しています。非常に低い収量で全てビオディナミ農法。

2. 「エクセレントシリーズ」~ワイン愛好家向けの長期熟成ワイン~
北部の高級産地や南部のシャトーヌフ デュ パプなど、7つの優れた偉大なAOP。自社畑の高品質ブドウを使用したラインナップ。全て有機栽培、ビオディナミ農法、ワイン愛好家向けの長期熟成可能なワイン。
(例)シャンタルエット、ラ シズランヌ

3. 「プレステージシリーズ」~シャプティエの財産~
世界的に知られるローヌの定番クリュ。シャプティエの財産とも呼べるシリーズです。赤ワイン5種、白ワイン5種、計10種のAOP。ローヌの銘醸ワインをリーズナブルに楽しめるワインです。
(例)ラ ベルナディン、レ メゾニエ

4. 「トラディションシリーズ」~シャプティエの主要ワイン~
シャプティエの主要シリーズ。ローヌ全体のブドウを使用して造られています。リッチで滑らか、飲みやすいワインが揃っています。

5. 「アルシミー」~ビオディナミに特化~
シャプティエが先駆的に行ってきたビオディナミ農法によりフォーカスしたシリーズ。人と自然とのつながりを強調し、ブドウへの愛を表現しています。
(例)ミラベル ビオ

プロが試飲してもヴィオニエだとわからない個性的スパークリングワイン

ベルナルディン氏
ヴィオニエ100%で造るスパークリングワインです。大樽で発酵させている途中のワインを瓶詰めして仕上げる造りです。土壌が石灰なのでミネラル感があります。プロフェッショナルソムリエがブラインドで試飲しても、ヴィオニエだとわからない個性的なスパークリングです。2018年は暑すぎず雨もそこまで降らない良いヴィンテージです。
ラ コンブ ピラット ブリュット ナチュール ビオ2018

試飲
コメント

淡い麦わら色。パン香やミネラルの要素を感じる、繊細ながら芯のある華やかな香り。口に含むとスッキリとした酸が口の中を駆け上がります。レモンなどの柑橘系果実の余韻が数分も持続します。

エルミタージュの丘の完熟ブドウで造られるフルーティな白

ベルナルディン氏
私はこのワインが大好きです。岩が転がっているエルミタージュの丘の下部で造られていて、その岩が太陽の熱を保ってくれるので放射熱でブドウの成熟が高まります。とてもフルーティで酸があります。これもまた、プロが試飲してもマルサンヌ種であることに気づかないと思います。寿司などの魚介類、フルーツを添えた料理と相性がいいです。
クローズ エルミタージュ ブラン レ メゾニエ ビオ2020

試飲
コメント

輝く黄金色。オレンジ色や黄色の果実、ミネラルを感じる奥行きのある香り。口当たりはまろやかで柔らかい酸が際立ち、温かみのある印象です。柑橘の皮、ミカン、完熟果実の風味。

旨味と丸みが表現されたコストパフォーマンスに優れた逸品

ベルナルディン氏
ヴィオニエ100%で造られる、リトルコンドリューとも言える白ワインです。個人的には安すぎるワインですね(笑)。(ラベルも特徴的で)テロワールを強調させたデザインです。澱と一緒に熟成させて、バトナージュもしているので、うまみ成分が抽出され丸みが表現されています。
コトー ド ラルデッシュ ヴィオニエ ドメーヌ デ グランジュ ド ミラベル ビオ2020

試飲
コメント

黄金よりの麦わら色。フレッシュさとまろやかさを感じる、やや甘やかでアロマティックな香り。口当たりもフレッシュでまろやか。梨などのジューシーな白い果実、ミネラル感、苦みのある風味が最初から最後まで持続します。

エレガントで圧倒的に長い余韻が特徴の玄人好みの味わい

ベルナルディン氏
ヴィオニエ100%。コートロティの丘の南側で造っています。花崗岩の特徴であるスモーキーさが出ています。フルーティさもありますね。このワインは、エレガントで圧倒的に長い余韻が特徴的です。よりプロフェッショナルで玄人好みの味わいです。2020年は、天候に恵まれた素晴らしいヴィンテージです。暖かくてブドウはよく熟しました。
コンドリュー インヴィターレ2020

試飲
コメント

淡い黄金色。熟した白果実、アプリコット、ナッツを感じるリッチで骨格のある香り。香り同様に骨格に優れたリッチな味わい。後味に苦みもあります。力強くボリューミーながら柔らかいタッチ。非常に長く持続する余韻。

あえてマルサンヌ単一で造る長期熟成も可能な複雑で爽やかな味わい

ベルナルディン氏
主に斜面にある三つの区画のブドウをブレンドしています。他の生産者は、マルサンヌとルーサンヌをブレンドして造ることが多いですが、シャプティエはマルサンヌ単一で造っています。熟成可能なワインに仕上げるためにそうしています。ビオディナミのブドウを使用し、一部古い樽も使用しています。クリームソースがかかった魚料理、ヤギのチーズと相性がいいです。
エルミタージュ ブラン シャンタルエット2018

試飲
コメント

縁が黄金色に輝く淡い麦わら色。白や黄色の果実が混ざり、ミネラルさやハーブも感じる複雑で濃密な香り。味わいは香り同様で様々な果実が混ざり合う複雑性があります。爽やかさも感じます。

フレッシュ&フルーティーでいながら凝縮感も際立つ毎日楽しめる赤!

ベルナルディン氏
エルミタージュの丘の斜面下部で造られたシラー100%。斜面上部にある花崗岩がゴロゴロ転がってくる堆積土壌です。85%はコンクリートタンクで熟成しているので、非常にフルーティで毎日楽しめるワインです。
クローズ エルミタージュ ルージュ レ メゾニエ ビオ2020

試飲
コメント

縁が淡い紫色を帯びたルビー色。紫果実のフレッシュで軽やかな香り。フローラルでやや甘やかな印象もあります。口当たりはソフト。フルーティで少しのスパイシーな味わい。クリーンで軽やかながら、酸が全体を支えており凝縮感もあります。

多種多様な果実、ハーブ、スパイスが複雑に溶け合う熟成エルミタージュ ルージュ

ベルナルディン氏
シズランヌは、シャンタルエットと同じ立ち位置のワインで、三つの区画をブレンドしています。一部木樽を使用している複雑な味わいです。2015年ということもありますが熟成が進んでレザーの要素が出てきていますね。ディナーで楽しめるようなワインです。シラーは長期熟成できる品種で30年熟成するとピノノワールと間違えるくらい洗練されていきます。スパイスソースをかけた牛のカルパッチョ、鴨肉と合うと思います。とても美味しいですね。
エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ2015

試飲
コメント

僅かにガーネット色がかったルビー色。マスク越しでも伝わってくる力強い香り。黒と赤の完熟果実、スモーキーさ、甘やかなスパイスの香り。まろやかな口当たり。スパイス、ドライフルーツ、黒系果実、ハーブ、革など複雑な味わい。全体的に繊細ですが、複雑な風味の余韻が非常に長く持続します。

温かみのある複雑な香り、柔らかく洗練されたタンニン、豊かな果実味が際立つボリューミーな味わい

ベルナルディン氏
シャトーヌフ デュ パプには、熱を保った丸みのある石が多く転がっているので、成熟したブドウが生まれます。飲んでいただくとボリューミーな果実味を感じていただけると思います。セパージュは、グルナッシュ70%、シラー30%です。
シャトーヌフ デュ パプ ルージュ ラ ベルナルディン2016

試飲
コメント

ガーネットよりのルビー色。小さい実の赤系果実、黒系果実、スパイスを感じる温かみのある複雑な香り。香り同様に複雑な味わい。口当たりは柔らかく洗練されたタンニンがあります。骨格に優れており、黒い果実やリコリスなどの風味が余韻として数分間持続します。

インタビューを終えて

今回試飲したシャプティエのワインは口当たりがまろやかで丸みを帯びた味わいでした。食事と寄り添う味わいも多かった印象です。例えば、エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌは、様々な要素を感じる複雑性、口中を優しく包み込む柔らかさがありました。持続性のある洗練された味わいもあり、お肉料理とピッタリだなと思いました。どのワインも優れたバランスで美味しかったです。

そして、ワイナリーの規模感に圧倒されました。創業200年を超える歴史を持ち、現当主は7代目で、8代目も活躍されています。ローヌに250ヘクタールもの自社畑を所有。とりわけ本拠地エルミタージュでは全体の4分の1を所有し、エルミタージュ最大の造り手として君臨しています。インタビューでは話されませんでしたが、国内ではラングドック ルーション、国外ではオーストラリアやスペインなどでワインを生産しています。

今後も拡大を続け、評価誌で超高得点の獲得が期待されるエルミタージュの最高峰「M.シャプティエ」のワインを、ぜひご堪能ください。
生産者さんと

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