TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2023/06/07

ルクレツィア ポーヴェロ氏 Ms. Lucrezia Povero

新たにDOCGに昇格したテッレ アルフィエーリ唯一の自然派!土壌や動物に敬意を払い優しい味わいを表現する「カッシーナ ヴェンゴレ」突撃インタビュー

ピエモンテのDOCGテッレ アルフィエーリ地区で自然と調和したワイン造りを行う「カッシーナ ヴェンゴレ」。同地区で生まれ育った3姉妹が手がける家族経営ワイナリーです。畑と森が共存する合計26ヘクタールの土地で「自然保護の観点で環境に優しいワイン造り」を行い、100%有機栽培でワインを生産。オーガニック認証「ユーロリーフ」とヴィーガン認証を取得しています。彼女らが造るアルネイス、バルベーラ、ネッビオーロはどれもクリーンで優しさがありながら、力強さとエレガンスが調和する味わいが引き出されています。今回は、長女で当主のルクレツィア ポーヴェロ氏をお招きして、お話を聞きました。

DOCGテッレ アルフィエーリ唯一の自然派
「カッシーナ ヴェンゴレ」

――それでは、自己紹介とワイナリー紹介をお願いします。

 カッシーナ ヴェンゴレは、2012年に3姉妹で始めたワイナリーです。私が長女のルクレツィアです。テッレ アルフィエーリに位置しています。バルベーラ ダスティとも重なっています。カンティーナの周りを劇場型の畑が取り囲んでいて自然豊かな場所です。16ヘクタールのブドウ畑、10ヘクタールの森を所有しています。そこで、アルネイス、バルベーラ、ネッビオーロを栽培しています。

畑を購入後すぐにビオディナミ栽培を開始
――もともとワインを造っていたご両親のワイナリーとは別で3姉妹が独立して始めたんですよね?

 両親は別の場所でワインを造っていて、今の場所を前所有者が手放したので3姉妹で始めることにしました。2012年に購入してから、6万本のブドウ樹を植え替えると同時にビオディナミ栽培を始めました。私たちは、テッレ アルフィエーリ地区で唯一のオーガニック生産者なんですよ。
畑

――ワイナリーを始める前はどこで勉強されたのですか?

 私は高校の時からワイン生産に携わっていて、カリフォルニアのワイン学校で学びました。実は交換留学で大阪に半年間いたことがあるんですよ(笑)。妹たちはミラノでワイン醸造を学びました。

――ルクレツィアさんはヴィーガンなんですね。

 そうなんです。10歳頃から動物性のものは食べていません。ヴィーガンになったことで舌が鋭敏になったと思います。エレガントや優しい味わいのものがより美味しく感じるようになりました。私たちのワインもヴィーガンワインですが、「ヴィーガン」と記載したからと言って注目を集めるとは考えていません。あくまで私たちの自然な考えであったり、一つのロゴとして資料に載せています。
3姉妹

自然保護、生物多様性を重視したワイン造り
クリーンで優しい味わいを表現

環境保全に配慮したワイン造り
――2020年にDOCGに昇格したテッレ アルフィエーリの特徴について教えてください。

 テッレ アルフィエーリはロエロと比べて石灰質土壌が多く、ミネラル感のあるワインが生まれます。例えばネッビオーロで比較すると、ロエロよりは力強いですが、ランゲよりはエレガントに仕上がります。力強さとエレガンスを兼ね備えたちょうどいい味わいです。

また、テッレ アルフィエーリは生物多様性の保持にフォーカスしているエリアでもあり、多くの生産者がブドウだけでなく野菜や穀物を生産しています。私たちも毎年木を植えていますし、ブドウ畑ではロバやアルパカ、羊も飼っているんですよ。ヴェンゴレは自然保護という観点で環境に優しいワイン造りを行っています。
動物

ビオディナミ栽培の先駆者と定期的に意見交換
――ルクレツィアさんたちにとってのワイン造りの師匠はいらっしゃいますか?

 オーガニックに特化した方々に影響を受けています。ルッジェロ マッツィッリという各地で有機に関するコンサルティングを行うエノロゴ兼アグロノモや、エンリコ リヴェットというバローロで初めてビオディナミ栽培を行った生産者です。エンリコとは友達で、いつも意見交換をしている仲なんです。

――ヴェンゴレのワインは、力強さがありながらクリーンで優しい味わいですね。

 ありがとうございます。いろいろなシチュエーションで飲み分けていただくといいと思います。例えば、私たちのネッビオーロはタンニンがあって食事ととても相性がいいです。複雑な料理とも合います。透明感のある外観としっかりした味わいが特徴です。
収穫

カッシーナ ヴェンゴレ

完熟果実とフレッシュな酸が調和するアルネイス

ルクレツィア氏:
「Vinitalyの賞をはじめ、国外でも賞を取るアルネイスで造られた白ワイン、サンロメです。サンロメとは、この土地を守る聖人を意味しています。聖人と名付けることで、外部からの敵の侵入を防ぐという意味が込められています。収穫後ブドウを氷点下で冷却することで、フレッシュな酸や、白い花や桃などのアロマを抽出しています。ステンレスタンクでシュールリーの状態で4ヶ月間熟成。生産本数は1万5000本です」
サンロメ2021

試飲
コメント

透明感のある黄金色。熟した黄色い果実、レモン、ミネラル、フレッシュな酸を感じる香り。味わいは香り同様の熟した黄色い果実、フレッシュな酸。やや厚みのある骨格と生き生きとした果実味が特徴的です。

カッシーナ ヴェンゴレ

品種とテロワールの特徴が調和する心地よい味わいのバルベーラ

ルクレツィア氏:
「カンポルンゴとはワイナリーにある森の名前です。土地固有の木が植わっています。第一アロマであるイチゴやブルーベリー、レッドベリー、チェリー、リコリスを保持するためにステンレスタンクだけで醸造しています。オーク樽ではなくステンレスタンクだけで熟成させることにより、より生き生きとした味わいにしています。パスタ料理をはじめ、魚料理やスパイシーな料理も合わせやすいです。暑い日には冷やしても美味しいですよ。クローン選抜をして収量を少なくし、品質保持をしています。生産本数は1万5000本です」
カンポルンゴ2021

試飲
コメント

深いルビー色。レッドベリーやブラックベリーなど森の果実を感じる心地よい香り。フレッシュで軽やかな果実味があり親しみのある味わいです。クリーンかつ程よい余韻の風味が持続します。

カッシーナ ヴェンゴレ

最上区画で造られる骨格に優れたエレガントなバルベーラ

ルクレツィア氏:
「モンピローネとは、この土地の丘の名前です。私のお気に入りのワインです。スラヴォニアオークで18ヶ月間熟成しています。樽のニュアンスとテロワールを両立させています。まろやかでエレガントな味わいで、樽由来のほどよいスパイシーさがあります。ルカマローニで評価の高いワインです。モンピローネは、太陽の光がより当たる最上区画のバルベーラを使用しています。そのため、ストラクチャーが生まれます」
モンピローネ2020

試飲
コメント

深いルビー色。アメリカンチェリーなどの果実、樽由来のスパイス、シナモンなどの甘いニュアンスの香り。優れた骨格を感じます。口に含むと力強さとフレッシュさがあり、両者が綺麗に溶け合っています。それでいて、チェリー系の果実感とスパイスもほどよく調和し、バランスに優れています。甘やかなニュアンスもあります。

カッシーナ ヴェンゴレ

繊細な赤い果実のピュアな風味が際立つテッレ アルフィエーリ ネッビオーロ

ルクレツィア氏:
「ベルガルドは丘の名前から来ていて、かつてお城を統治していた方の名前がベルガルドでした。ネッビオーロ100%、スロヴェニアオークの大樽で16カ月間熟成しています。ロエロより力強いですが、ランゲよりはエレガントな味わいです」
ベルガルド2019

試飲
コメント

ルビーよりのガーネット色。イチゴ、ザクロなどのフレッシュな赤い果実のエレガントに持続する香り。時間が経つと凝縮果実やスパイスのニュアンスが現れます。口に含むとフレッシュな果実とこなれたタンニンが広がり、ピュアな果実感が持続します。

インタビューを終えて

カッシーナ ヴェンゴレのワインはクリーンで優しい味わいでした。自然保護の観点でワインを造るルクレツィアさんたちの思いが詰まっているように感じました。決して優しいだけでなく、骨格やスパイス感もあり食事との汎用性の高さを感じました。

特に印象的だったのは2種のバルベーラの「カンポルンゴ」と「モンピローネ」。森の名前から取ったというカンポルンゴは、まさしく森の果実感が広がり飲み心地の良い味わいでした。その旨を伝えた後のルクレツィアさんの満面の笑みがとても印象に残っています。日当たりの良い最上区画のブドウで造られるモンピローネは、骨格とエレガンスが際立っていて素晴らしかったです。個性の異なるバルベーラの飲み比べは大変オススメです。

自然と調和したワイン造りを行う「カッシーナ ヴェンゴレ」のワインをぜひご堪能ください。

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