単に「革」「レザー」と言えば「牛革」を指すほど、革の中でもっとも普及し、ポピュラーな存在なのが牛革です。その牛革は、年齢や身体の部位によって革質が変わるため、それぞれの特性に合わせて利用しています。ここでは、その分類の仕方を簡単にご紹介しましょう。
牛の原皮は成長の度合いと性別で革の面積や厚さ、革質などが変わります。
その特徴を活かし、適切に使い分けされています。
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最も広く使われる、去勢された雄の成牛。
生後半年以内に去勢され、2年以上生育された雄の成牛の原皮。やや肌目が粗いが大判で厚く丈夫なため、最も広く使われます。そのため、単に「牛革」と表記されているもののほとんどは、この「ステアハイド」が原皮です。 -
雌の成牛ゆえの、しなやかさと肌目細かさ。
生後2年以上の、出産経験のある雌の成牛の原皮。
ステアハイドよりやや判が小さく薄いですが、その分、革質はしなやかです。また肌目がより細やかで、表面も滑らか。ステアハイドに次いでよく使われます。 -
バランスの良さで人気の、若い牛の原皮。
欧州ではカーフとされる生後半年~2年ほどの若い牛の原皮を、北米では「キップスキン」として分けます。
年長のためカーフスキンより若干厚くて判が大きいですが、
ステアハイドやカウハイドよりも肌目細かくしなやかです。 -
フランス産が有名な仔牛の最高級原皮。
北米では生後半年未満、欧州では2歳未満の子牛の原皮を
「カーフスキン」と呼びます。
仔牛のため非常に薄く判も小さいですが、とても柔らかくて
肌目細やかなので最高級とされます。特に仔牛料理の盛ん
なフランスで多く供給されています。
牛原皮はサイズが大きいため、普通は分割して扱われます。北米や日本では
背中で分割した「半裁」で取引することが普通です。一方、欧州では原皮を背割り
しない丸皮をベースに、品質が異なる身体の部位ごとに細かく分けて扱います。
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最も高価な、背中と腰の部分
背中から尻までの部分。北米式の半裁の場合は「ベンズ」と呼びますが、欧州式の丸皮の場合、「バット」と呼び分けます。この部位は最も線維が密で充実し、肌目が細かく揃っているため美しい革に仕上がり、最も高価な部位です。 -
頑丈で厚くシワが特徴的な肩部分
肩の部分。この部位は背・腰部分よりも厚く、太い線維が密に絡まりあっているため、非常に丈夫です。 また元々皮膚が大きく伸縮する部位なので、革にするとトラと呼ばれる大ジワが出やすいのが特徴です。 -
表情豊かな、腹周りの部分
四肢と腹の部分。元々皮膚がたるんでゆるくなっている部位なので線維の密度が薄く、肌目が粗くなっています。 シワや大シボが多く表情の変化に富みますが、強度にやや劣るので、鞄などにはあまり使われません。
※写真は全て鞣した革になります。