コサイン / ものづくりを訪ねるコサイン / ものづくりを訪ねるコサイン / ものづくりを訪ねる

木製の家具や小物を手がける小家具メーカー「コサイン」を訪ねて、北海道へ。
いまや旭山動物園がある街として知られる、北海道旭川市。質の良い木材が集まり、家具生産が盛んな地域でもある。市内にはいくつもの家具メーカーがあり、コサインもそのひとつだ。

コサインを個人的に知ったのは、いまからおよそ6年前。木のテーブルを探していたときだ。“コサイン”という数学できき慣れた単語が社名でおもしろいな、と思いずっと記憶に残っていた。
(ちなみに、コサインという社名には「ともに存在する」という想いがこめられている)

事務所で迎えてくださったのは、工場長の北島信吉さん。見てもらいながら説明するほうがわかりやすいですから、ということでさっそく敷地内の工場を案内していただく。その工場内ですれ違う従業員の方は、皆にっこりと「こんにちは」と迎えていただいたことが、とても印象的だった。コサインがつくり出す、ほんわかとした家具や小物のイメージがそのまま重なった。

コサイン / ものづくりを訪ねる
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「おもにナラはロシア産、メープル(楓)やウォルナット(くるみ)は北米産のものを使っています。唯一、北海道産の木はサクラ。やわらかいし経年変化でだんだん朱赤になっていくので、すごく風合いが独特できれいですよ」

各地から届いた木材を、工場内で加工していく。その作業工程のなかで特につくり手の強いこだわりを感じたのは、製作においていちばん最初の工程である「木取り」。木材の木目や節目を確認して選びぬき、ある程度決められた厚みや幅に揃えていく作業だ。
テーブルの天板など大きなサイズの木材が必要となる部材の場合は、ただサイズを整えるだけではなく、このあと複数枚の木を接着し“一枚の板”として仕上げるための準備を行う。ここで大切なのは、組み合わせた木の木目や色味が違和感のないように見えること。

「木取りは、ひとりひとりのセンスによるところが大きいんですよね。はじめは先輩から教わって、単純な分け方とか決まりは教わるんですけど、ただそれだけじゃうまくいかないこともたくさんある。木は、1枚1枚当然色が微妙に違うし、木目の角度も違う。どういうふうにつなげてあげたら違和感なく見えるかを考えています」

使用できる限られた数の木のなかから、いかに隣りあう木どうしをなめらかにつなげるか。いちばん最初のざっくりとした作業というよりは、すでに完成時の仕上がりに大きく影響する、大事な工程だ。説明なしで工場を見学していたら、その重要度に気がつかなかった作業かもしれない。

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「さらに、家具をこっちから見るのとあっちから見るのでは、木目の感じが変わって見える。そういうバランスも考えないといけないんです」

決まった形に加工していくだけではない、そういった細部に気がつける感覚がコサインのものづくりを大きく支えている。
「そういうことってその場で説明してあげても、ほかにもいろんな場面が出てくる。毎回そばで教えてあげられないので、経験して培ってもらうというか、やっぱりセンスですね」

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木は見ていて飽きない。
北島さんに木の魅力をうかがうと、すぐにその答えが返ってきた。
「木はひとの温度に近いと思うんです。独特の手触り感は木だけがもってる。同じ色味や木目もない。同じサクラでも薄いピンクもあれば、青っぽいのもあって、本当に全然種類が違うんですよね」

「きれいな木目がでてるウォルナットに出会うと、品があって美人だなって思う。だからこそ、それを生かしていいものをつくりたいんです」

材料の美しさを、できるだけ生かした商品をつくりたい。そのためには、木取りの担当者とコミュニケーションをとって、家具のどの部分で木の美しい面を生かすのかを決めていくという。たとえば、木材全体に美しい木目が出ていたら、小さく切って小物に使うのではなく面を生かせるテーブルの天板に使う、といったように。
天然素材のため、もちろんこだわれる部分とこだわれない部分がある。しかしそのなかで、できる限りのことを探って商品の完成度を高めていく。

毎日木と向き合う北島さんからお話をうかがっていると、木がもつ「心地よさ」に結びつく理由や、そこにいたるまでの感情をちゃんと自分のことばや感覚で伝えてくれる。そこに木への深い理解や、大切に思う気持ちを感じた。

また、木を通してもののスケール感を培ってきたという。 「手で触って確認することが多いかな。ものに触れると、立体的な形が体感的に入ってくる。この仕事をするようになってから、特にやるようになりました」
いろんな素材にそれぞれプロの人がいて、木を扱う自分は技術でどう打ち勝っていくのか。素材に触れるとき、そんなことも思うと教えてくれた。

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コサインの商品は、ノックダウン(組み立て)式のため、お客さまが商品を組み立てることとなる。そのため、誰でもちゃんと組み立てられるよう、高い精度で部品をつくらなければならない。
「つくり続けていくこと、コンスタントに同じ加工を続けていくことも技術。そのための機械操作のスキルや精度がコサインの技術ともいえます」

また、修理作業も勉強になる。どう使われて、どう壊れたのか。修理で戻ってきた商品を前に、なぜ壊れたのか、お客さまの背格好も考える。修理にも想像力を存分に働かせているという。

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コサインの工場には、若い方が多く働いている。
「そうですね、けっこう多いです。webサイトやコサインギャラリー、あと以前弊社で発行していた『toil(季刊ニュースカタログ)』を通してうちのあり方に共感してくれるひとが来てくれていて」

工場長になって7年。
「自分たちの手でつくり、お客さまに届けてその対価を頂ける。ものづくりは、すごく建設的なことだと思います」
旭川は、ものづくりに打ち込むにはとても向いている土地、と北島さんはいう。静かで没頭できるし、なによりもものづくりが昔から盛んな地域のため、旭川には「自分たちの手でひとつのものを生み出す」感覚がある。

「木は、いろんな意味で環境のおおもとになっています。森をどれくらい切っているのかなって、ときどきこわいと思うことがある。無駄にできないなと。自分たちがこれからも質のいいものをつくって、お客さまにはそれを永く使ってもらいたいです」

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「天然素材だから、やはり手触りがいいですよね」
オイルヌメ革の素材感をしっかりと手で確かめながら、そう答えてくださった。

「革はメンテナンスすれば、ずっと現役で使える。自分がそれに似合う男になろう、と思えます」革製品をもつと、いいものを身につけているという感覚がもてるという。
「木も革も経年変化していくところがいいですよね。木の場合は、使えば使うほど強くなっていく。革にも革の変化があって、おもしろいなと思います」



コサイン
北海道旭川市永山町6-6-5
TEL 0166-47-0100
url. http://www.cosine.com/