第22回 犬フィラリア症の症状と予防法


滝田雄磨 獣医師

  • 前回に引き続き、
    犬のフィラリア症について紹介します。
    今回は、具体的な症状と、治療予防法についてお話しします。

  • フィラリアに感染し、慢性的な症状を呈している病態です。

    ①病態

    フィラリアが心臓〜肺動脈に寄生し、以下のような肺循環障害を起こします。

    ・フィラリアの存在自体による、物理的な障害

    ・フィラリアの刺激による、肺動脈の内膜の構造変化(狭窄)

    ・死んだ虫体による塞栓

    ・虫体がもたらす肺の炎症、浮腫

    これらのうち、肺動脈の構造変化は、治療をしても元にはもどらない可能性が高く、生涯の治療を必要とします。
    肺循環障害が起こると、肺高血圧による右心不全へと進行します。

    ②症状

    肺循環の障害による咳、運動不耐性がみられます。

    また、右心不全になると、腹水が溜まり、お腹が膨らんできます

    ③治療

    重症度によって異なります。

  • ・外科

    頸静脈から細くて長い鉗子を挿入し、
    心臓にいる成虫を直接取り出す方法です。

    重症な症例で、駆虫薬を使ったときに起こる
    肺塞栓症のリスクが高い場合に選択されます

    ただし、特殊な鉗子を使うということと、専門的な技術が必要です。

    そのため、フィラリア症が蔓延していない地域では、
    対応できる病院が少ないことがあります。

  • ・内科

    駆虫薬を投与する方法です。

    外科が選択された場合も、内科的な治療を併用します。

    先述したとおり、成虫に対する駆虫薬と、幼虫に対する駆虫薬は別物です。

    大量に寄生している成虫を一気に駆虫すると、
    死滅した虫体が血管に詰まってしまう可能性があります。

    また、大量の幼虫〜成虫を駆虫すると、血管に詰まるだけでなく、
    その虫体に対する激しいアレルギー反応を起こし、
    死に至る恐れもあります。

    そのため、ステロイドを用いてアレルギー反応を抑えつつ、
    緩徐に駆虫する方法
    がよくとられます。

    この方法だと、体内から完全に駆虫するまでに、数ヶ月〜数年かかることもあり、
    その間に症状が悪化することもあります。

    時間はかかりますが、ほとんどの病態では、最もリスクの低い治療法です。

    フィラリアに感染し、虫体が一気に右房、右室に移動し、全身状態が一気に悪化した病態です。

  • ①病態

    成虫が肺動脈に寄生している段階では、
    成虫が動脈の壁にへばりついているため、
    すぐに血流に大きな障害は起こしません。

    しかし、右心房、右心室の中へと移動すると、
    虫体は激しく振り回され、赤血球を破壊し、血栓を形成し、
    傷を負った虫体から虫体成分が放出され、
    これにより肺炎を起こします。しばしば致死的です。

    ②症状

    咳、運動不耐のほか、血色素尿、呼吸困難、低血圧などの重篤な症状を起こします。

  • ③治療

    慢性的な犬糸状虫症とは異なり、外科的な治療が必須となります。

    ただし、全身状態が著しく悪化していることが多く、
    麻酔に耐えられない状態にあることがあります。

    その場合は、点滴、ステロイド、抗生剤などで治療をし、
    麻酔がかけられる状態まで全身状態を改善します。

    急性期を乗り越えたら、慢性犬糸状虫症に準じた治療へと移ります。

  • フィラリアの予防方法は、以下の順で行われます。

    1.血液検査

    すでにフィラリアに感染していないかどうかを調べる検査です。

    体内にフィラリアがいる状態で予防薬を投与すると、

    大量の虫体が死滅することでショック状態に陥ることがあります。

    昨年の投与し忘れた予防薬が余っていたからといって、数ヶ月あけて予防薬を内服すると、大変危険です。

    昨年の冬までしっかり予防薬を内服していたとしても、
    毎シーズンの飲み始める前には検査をしましょう。

    早ければ2〜3分で結果がでます。

  • 2.予防薬を処方してもらう

    検査の結果が陰性であることを確認した上で、
    予防薬を処方してもらいます。

    時期的に、狂犬病ワクチンの接種と同時に
    処方してもらうことが多いと思います。

    狂犬病のワクチンを打った後は、
    1日〜数日空けてからフィラリア予防薬を内服するようにしましょう。

    フィラリアの予防薬が重篤な副作用を起こすことはほぼありませんが、
    万が一体調を崩したときに、狂犬病ワクチンが原因なのか
    フィラリア予防薬が原因なのかが分かるようにするためです。

    ・投与の間隔とタイミング

    近年、色々なタイプのフィラリア予防薬が開発されています。

    多くのタイプは、月に一回、錠剤もしくはおやつ状の薬を内服します。

    タイミングとしては、蚊に刺される可能性がある時期+1ヶ月です。

    フィラリアの予防薬は、予防とはいえ、感染したものを駆虫する薬です。

    そのため、4月に感染したものを5月の薬で駆虫、5月に感染したものを6月に駆虫、
    といったように、感染から1ヶ月後ろにズレます

    蚊の活動時期は地域によって異なります。

    沖縄などの暖かい地域では、1年を通して休まず予防薬を内服することが勧められています。

    沖縄ではなくても、温暖化により、蚊の活動時期は長くなっていると言われています。

    室内で冬もノミ・ダニの感染が起こることもあり、ノミ・ダニ・フィラリアの複合予防薬を使うなどして、通年で予防をしている飼い主さんも増えてきています。

    ・予防薬の種類

    形状から分類すると、錠剤、おやつタイプ、滴下剤、注射剤があります。

    効能で分類すると、フィラリアだけ予防するもの腸内の寄生虫も駆虫するもの
    ノミ・ダニも駆虫するものマダニも駆虫するものと多岐にわたります。

    注射剤に関しては少し特殊で、一回の注射で1年間フィラリアの感染を予防することができます。

    ・MDR1遺伝子変異

    フィラリア予防薬を使う上で、ひとつ大きな注意事項があります。

    MDR1遺伝子変異がある犬における副作用についてです。

    MDR1遺伝子とは、薬剤を細胞の外へ排泄するときに関与する遺伝子です。

    この遺伝子に変異がある場合、フィラリア予防薬の種類を選択する必要があります。

    MDR1遺伝子変異を好発する犬種があります。

  • 1)コリー

    2)ボーダー・コリー

    3)オーストラリアンシェパード

    4)イングリッシュ・シェパード

    5)ホワイトスイスシェパード

    6)シェットランド・シープドッグ

    7)オールド・イングリッシュ・シープドッグ

    上記の犬種では、MDR1遺伝子変異が好発するため、
    副作用を起こしにくい駆虫薬を投与する必要があります

    また、検査会社に血液を送ることで、
    MDR1遺伝子変異があるかどうかを検査することもできます。

  • ご紹介したとおり、フィラリアはしばしば命を落とす疾患です。

    一方、簡単に予防ができる疾患でもあります。

    感染したときのリスクを考えると、
    月々1000円前後で予防ができるなら、安いものです。

    私自身、南アフリカへ行った時、
    現地でマラリアの予防薬を内服したことがあります。

    フィラリアの予防薬と似ていて、帰国後もふくめ、複数回内服する薬でした。

    比較的高価な薬でしたが、マラリアを予防できるなら、
    たとえ1粒1万円近くかかったとしても、その薬を購入したでしょう。

    犬のフィラリアも同じことです。

    感染するリスクを理解し、しっかりとした予防を心がけるようにしましょう。

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