久宝堂 工房研修会

大阪松屋町の節句人形専門店として、お客様に安心してお買い物頂けますよう、工房研修会を行っています。
工房での貴重な体験を通じて、 正しい知識と作り手の想いを お客様にお届けするために訪問させて頂きました。

二代目小出松寿
当店スタッフ
当店スタッフ

今回は、人形司(にんぎょうし)小出松寿(こいで しょうじゅ)さんの工房を訪問し、
人形制作工程やこだわりなど普段は聞けないことを伺いました。

小出 松寿

創業1960年、大阪府東大阪市で雛人形・市松人形を製造。
6名の節句人形工芸士を中心に時代に合わせて進化しながら、受け継がれた伝統の技術を大切に人形制作に取り組んでいます。
そのクオリティの高さから全国有名百貨店をはじめ、人形専門店ではなくてはならない人気ブランドとなっております。

創業者
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当店スタッフ
当店スタッフ

道子さん本日はどうぞよろしくお願いします。
それでは、まず、工房「小出松寿」の始まりをお伺いしてもよろしいでしょうか。

小出松寿
小出松寿

どうぞよろしくお願いします。
工房は1960年先々代「小出 愛」が大阪府東大阪市にて
松よし人形店を開店したことが始まりになります。
小出愛(現小出松寿の祖母)が、ものづくりをするのが好きだったことから雛人形制作を始めました。

当店スタッフ
当店スタッフ

なるほど、好きなモノづくりから雛人形制作に移っていったんですね。
なぜ、雛人形制作だったんでしょうか?

小出松寿
小出松寿

昔はお人形屋さんや、節句人形のお道具類メーカーさんやケース屋さんが近くにもたくさんありました。
また、東大阪は、産業の街ですから、モノづくりや手仕事が盛んで、そういったところも背景にあるのかもしれませんね。

小出松寿

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当店スタッフ
当店スタッフ

では、小出愛さんから、松寿の名前で作品作りをされていたのでしょうか?

小出松寿
小出松寿

いえ、「小出松寿」は私の父が作号として名乗り始めました。
初代「小出松寿」は1963年より松よし人形店を継ぎ、尾山人形の製作に打ち込みました。
その後、雛人形、市松人形、球体関節人形等、その時々のライフスタイルに合わせて様々な人形を製作してきました。

小出松寿

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当店スタッフ
当店スタッフ

それで、現在道子さんが2代目「小出松寿」ということですね。

小出松寿
小出松寿

そうです。 令和3年私が「小出 松寿」の作号を継ぎ、製作集団「人形工房松寿」の主宰として、
6名の節句人形工芸士を中心に、 時代に合わせて進化しながら、同時に昔から受け継がれた技術を大切にしつつ、日々人形づくりに勤しんでおります。

受け継がれた技術目次へ戻る

道子さんで2代目の「小出松寿」先代から受け継がれた技や、小出愛さんから受け継がれるお人形への想いなどひきつづきお伺いしました。

企画と裁断目次へ戻る

当店スタッフ
当店スタッフ

それでは、次に先代から受け継がれた技術などについてお伺いします。

小出松寿
小出松寿

そうですね、やっぱりおひな様を作る一番最初の作業、「企画」と「裁断」でしょうか。
お人形のサイズ毎に専用アクリル板を作っており、その大きさに合わせて柄行、色味を企画し
裁断依頼をかけます。
 アクリル板を使用するのは柄の確認をしやすく、誤差をなくすためです。
柄と下地の色の組み合わせがずれてくることがあるのですが、柄が合っていても下地が合っていないとちぐはぐになるのでそこもきっちり合わせます。
まるでパズルのピースを合わせるような作業で、とても大変ですね。

小出松寿
小出松寿
小出松寿

胴、袖、肩山、らん、それぞれを自然に見えるように生地の柄、色味を合わせていくのですが、袋帯は時間も手間もかかります。 文様の生地も柄が自然に合うようにして、いよいよ裁断作業に移ります。

小出松寿
小出松寿
小出松寿

 裁断は内職さんに任せることもありますので、たとえロングセラー商品であっても柄行が変わらないように、 人形仕様書を商品毎に作成して管理しています。
仕様書を必ず確認しながら裁断することで、統一された裁断後の生地が出来上がります。
裁断後は何にどれだけ反物を使用したかも記録を残して、在庫確認や再注文を行っています。

小出松寿
当店スタッフ
当店スタッフ

ひな人形は、いろいろな生地で構成されていますので、継続したら色は同じだけど柄が違うとか、 入荷したらちょっと雰囲気が変わっていた…なんてことありますものね。
長年人形制作を行ってきた「松寿」ならではの企画や管理で、毎年、同じ商品を安心して店頭に並べることができます。

小出松寿 小出松寿

徹底された分業制目次へ戻る

当店スタッフ
当店スタッフ

では、その企画・裁断を経た生地はこの工房でどのようにお人形に仕立てられていくのでしょうか?

小出松寿
小出松寿

人形工房松寿では、各工程を熟練の職人が分業します。
まず企画では、デザイナーを中心に衣裳の素材・色・加工方法・形などを決定します。ここでどんなお人形になるか決まります。
そして裁断・縫製を行い、その後仕上がった生地の出来栄えを確認します。ここで縫製の甘さがあれば最終的なお人形の仕上がりに響きますので、やり直しをします。そして最後に着せ付けを行い、お人形となります。
余談にはなりますが、つるし飾りも販売させていただいていますが、つまみ細工も全部手作りで作っているんですよ。

小出松寿 小出松寿 小出松寿 小出松寿 小出松寿 小出松寿

小出松寿の雛人形とは目次へ戻る

「小出松寿」の始まりをお伺いしました。
先代からの職人さんも作業をされている工房で、クオリティの高いお人形が誕生する「小出松寿」の雛人形とはどういったものか引き続きお伺いしました。

松寿らしさ目次へ戻る

当店スタッフ
当店スタッフ

それでは、次に「小出松寿」の雛人形についてお話を伺ってもよろしいでしょうか?

小出松寿
小出松寿

わかりました。
「小出松寿」の雛人形は、「松寿らしさ」にこだわりを持っています。
お子様も楽しく笑顔になるような、優しくて可愛いひな人形 づくりを心がけています。

小出松寿

お顔へのこだわり目次へ戻る

当店スタッフ
当店スタッフ

「優しくて可愛いひな人形」いいですね。
店頭に並んでいるおひな様をみても、特にお顔が微笑んでいるというか楽しそうな雰囲気が伝わってきますね。

小出松寿
小出松寿

ありがとうございます。 おっしゃるように、お顔にはこだわりがあります。 小出松寿では、美しさ、上品さ、優しさを兼ね備えた頭師(かしらし)市川伯英のお顔を特に大切にしています。
元々、市松人形部門でお付き合いをしていた伯英氏に、先代松寿が雛人形の頭の作成を打診し、雛人形部門にも参画していただきました。
衣裳の色見やお人形のサイズに合わせていろいろ試行を繰り返し、今に至っています。

当店スタッフ
当店スタッフ

お店でも伯英氏のお顔は人気があります!
松寿のお人形を引き立てるというか、魅力を最大限に引き出すというか…人気が物語っていますよね!

小出松寿

松寿4つのこだわり目次へ戻る

当店スタッフ
当店スタッフ

では、お顔ももちろんですが、その他にこだわりの部分などありますか。

小出松寿
小出松寿

松寿には、4つのこだわりがあります。
1.桐木胴(きりもくどう)
松寿の雛人形は、防虫効果のある樟(くすのき・・・樟脳の原料)をはさんだ「桐木胴」を使用しています。
中心に藺草(いぐさ)を使い安定感のある太串の頭に対応しています。
また、胴の型部分には針金を埋め込んだ胴を使用しています。針金を埋め込むことによって、人形そのものの型崩れを防止しています。
また、虫がつかず長年経っても型が崩れず、樟脳などから発生する溶解の心配がないことから、ふくらみや形状を出すためにウレタンを胸元、足元に使用しています。【特許 第4389193号】

小出松寿 小出松寿
小出松寿
小出松寿

2.絵羽あわせ(えばあわせ)
絵羽あわせとは着物の柄合わせのことをいいます。松寿では殿の胸元の柄を合わせて裁断し、仕立てています。
生地の用尺(必要数)もその分余計にかかりますが、装束の柄の美しさをを効果的に演出します。小さな柄でも合わせていますので、男雛の胸元をぜひ見てみてください。

小出松寿 小出松寿
小出松寿
小出松寿

3.丁寧な縫製
製品になった時の仕上がりが、いかにきれいに見えるかを常に考え、裁断した生地を一つ一つ丁寧に縫製しています。

小出松寿 小出松寿
小出松寿
小出松寿

4.バランスの取れた着付け
着付けで殿は「風格・威厳」、姫は女性らしい「やさしさ」を表現します。
頭の挿し方、腕折り(かいなおり)など、長年培われた技術と感性によってなされるものであり、その全てが揃っているのが松寿の「ひな人形」です。

小出松寿 小出松寿

新生松寿目次へ戻る

当店スタッフ
当店スタッフ

なるほど、形のというか姿の美しさはこの4つのこだわりから生まれているんですね。

当店スタッフ
当店スタッフ

では、主催が道子さんになられてから、今後こうしていきたいなどビジョンなどはありますか?

小出松寿
小出松寿

様々な生地に触れ、その発色やデザイン性をおひな様に活かしていくこと。
また、時代の変遷でも似合うおひな様を考え、現代のインテリアや生活様式にあったお人形を提案していくこと。
その中で、「松寿の人形」らしさを感じ取っていただき、幸せなひな祭りをお迎えいただけると幸いです。

良いなとかかわいいなと思ったら、まずやってみる目次へ戻る

当店スタッフ
当店スタッフ

衣裳の色や重ねのグラデーションなど、斬新と言いますか、インテリアを意識したような雰囲気のお雛さまが増えてきたように思うのは、そういったところからなんですね。

小出松寿
小出松寿

いろいろな生地も持っていますし、「 良いなとかかわいいなと思ったら、まずやってみる」直感的にやってみてから考える方が後からアレンジを利かして良いこともあるんです。
なにより、生地が好きなんですよね。
生地の売り場に行くと割とごきげんな状態になりますし、特に外国の物だと発色が違っていたり、デザイン性に富んでいたり、 その違いを見るのも楽しくてつい見に行ってしまいます。
それをどう味付けしたらお雛さんに似合うか?とか、お雛さんへの活かし方を考えるのが、ほんとうに楽しいんです。
この柄出したらいけるかな?とか、これはアクリルの飾台なら合いそうだな。とかまた、最近はアーティフィシャルフラワーとの相性を合わせたり考えるのが楽しいです。
もっときれいなもの、もっと可愛いものを作ってみたいなと思います。

小出松寿
当店スタッフ
当店スタッフ

これは、今後もどんどん新しいお雛さまが生まれてくる予感がしますね 。
本日は本当にありがとうございました。久宝堂も「松寿」のお人形に合うように舞台や屏風などコーディネートをしっかり考え、お客様に喜んでいただけるような、選んでいただけるような商品をどんどん開発していきます!

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久宝堂は小出松寿さんの工房をお伺いし、
小出道子さんの「直感とチャレンジ精神」にとても感銘を受けました。
また、堅苦しくなく、「良いな、可愛いなと思ったら、まずやってみる」 という自然な想いから、 他では見られないような物・素材 (特徴ある生地(イタリアンシルク、オーガンジー等)) と雛人形のコラボレーションに意欲的に挑戦されており、 気品のある作品から、様々な進化をとげたお人形まで、 振り幅の大きい、デザイン性の高いお人形が数々生み出されていくのだと感じました。
そして、従来の型にとどまらない大阪の工房らしい斬新なアイデアの裏側には、 人形工房松寿の脈々と受け継がれてきた経験と技術が下支えされており、 そこには一つ一つのお人形に込められた深い愛情を感じました。
この両方が揃っている人形工房松寿は今後も進化をとげられ、今後も躍進し続けられることでしょう。 このことに久宝堂は非常に刺激を受け、その姿勢を学び、ともに成長してゆきたいと思いました。

小出松寿
小出松寿