しみぬき・丸洗い・洗い張り・ヤケ直し等

"しみぬき"について教えて

"しみ"には大きく分けて"水性"のものと"油性"のものがあります。"水性"のものには
   ジュース・コーヒー、血など、"油性"のものには化粧品、衿アカ、天ぷら油などが
   あります。また"水性"と"油性"の混じり合った"しみ"も多くあります。(料理のソース
   や汗など)

   基本的に"水性のしみ"は水性の溶剤で、"油性のしみ"は油性の溶剤で落としますが、
   それぞれの原因によって落とし方も少しずつ異なってきますので"しみ"の原因が
   判っている場合はそれを専門の方にお話した方がよいでしょう。(「ポイント2:
   "しみ"が消えるとは?
」下段参照)
   また、"しみ"が新しいものか古いものかによっても処理が異なるそうなので「いつ」
   汚れたかも判るようでしたら伝えた方がよいようです。

   よく、ベンジンを使った"しみぬき"の方法が紹介されていますが、ベンジンは"油性"の
   溶剤ですのでファンデーションなどの"油性"のしみには有効だといえるでしょう。(逆
   に水性の汚れにはあまり効果が期待できません)この場合は、まず乾いた布を敷き、そ
   の上にしみの部分を乗せ、ベンジンをたっぷり含ませた布をその部分に当てます。液
   を充分なじませたらその部分をトントンと軽く叩くようにして汚れを写しとります。
   この際「こする」ことは汚れが織り目に入り込んでしまうことになりかねませんので
   気を付けて下さい。
   また、液の付いた周辺部はそのままですと"輪じみ"(液の付いた部分がそのまましみと
   して残ってしまう)になってしまう可能性があります。周辺部はなるべくボカすように
   して液をつけて下さい。(タオル等で液がついた部分を内側から外側にのばすようにす
   るか、霧ふきなどを使う)
   乾かす際にはドライヤー等でやはり周辺部分から内側に向けて乾かすようにして下さい。 
                
                     

   自分で手を付ける場合一つ注意点があります。それは、必ず「油性の汚れ落としを優先
   する」ということです。最初に水性の汚れに手を付けると油性の汚れはその水分によっ
   て凝固してしまい、本来落ちるものが落ちなくなってしまう可能性があるのです。また
   絹地は水分を含むと縮みやスレ、色泣きなどを起こすことがありますので、1, 基本的に
   ベンジンでお手入れをして、2, それでも落ちない場合はプロに任せるといった順番が良
   いかと思われます。

   専門の方にうかがうと、最初の"しみ"よりも一度お手入れしかかったものや"輪じみ"の方
   が落としづらくなってしまうとのことです。落としづらくなるということはコストの面に
   も当然はね返ってきてしまいますので、自分で処理することに自信がない場合、始めから
   専門家に任せてしまった方がよいのかも知れません。

加工(お手入れ)Q&Aメニュー
きものQ&Aトップ

ポイント2 "しみ"が消えるとは?


   "しみ"は完全に消えてしまうのではなく、「薄めて洗い落とす」、もしくは「薬品で中和
   させて別の物質に変化させてしまう」といった方法で「見えなく」させるわけです。です
   から、原因がはっきり判っていれば対処法もより正確なものとなりキレイになりますが、
   誤った対処をするとかえって落ちない"しみ"になってしまうこともあるというわけです。

"黄変"って何?

黄変(おうへん)とは読んで字の如く、"しみ"あるいは"カビ"等が長いあいだに生地を黄色っ
   ぽく変色してしまった箇所のことをいいます。ポツンポツンと点在することもあれば、き
   もの全体に拡がってしまっている場合もあります。この黄変は生地自体を変質させてしま
   っているため、なかなか落ちません。落とす方法としてはその部分を脱色して後から色を
   掛けるということを行います。
   脱色の際、あまり強い薬品を使うと生地そのものを痛めてしまうため、そうならない状態
   で処置をあきらめなければなりません。でも程度のよいものであれば上記の方法できれい
   になってしまう場合もあります。また、黄変の場所によっては上から柄を描いたり、金箔
   加工等で「隠して」しまうこともできますので、すぐにあきらめてしまわないでください。
加工(お手入れ)Q&Aメニュー
きものQ&Aトップ

"丸洗い"って何するの?

"丸洗い"はきもののドライクリーニングです。ただ洋品を洗うのに使われる薬品とは違いま
   すので、かならずきもの洗いの専門業者に依頼しましょう。

   丸洗いの長所・短所を簡単にまとめてみますと、

   (長所)
   ・着物を解かずに洗える。
   ・全体に汚れがある場合などに費用が安価で済む。
   ・"仕上げ"が為されてくるため、収納が容易である。

   (短所)
   ・丸洗いで使われる溶剤は油性であるため、カビや汗などを完全に落としきることができ
    ない。
   ・生地によって縮むことがある。
   ・古い金箔加工やのせ加工などをはがしてしまうことがある。

   となります。短所についてはあまり神経質に考えることはないと思いますが、洗いに出さ
   れる場合、一度きもの屋さんに相談してみるとよいかと思います。

加工(お手入れ)Q&Aメニュー
きものQ&Aトップ

"洗い張り"って何するの?

"洗い張り"を過程を追って説明しますと、まずきものの仕立てを解いて、各生地を縫い合わ
   せ反物状に戻します(とき・ハヌイ)。それから丸洗いと同様にドライクリーニングをします。
   そのあと水性洗剤を使った"水洗い"(手作業)で仕立て跡のスジをキレイにしたり、ドライク
   リーニングで落ちきれなかった汚れなどを落とします。(この過程はあまりに生地が傷んで
   いる場合省略されることもあります。)そしてテンターという機械で生地を張り直し、巾を
   整えて仕上がりです。

   "洗い張り"はきものを染め替えたり、寸法を変えて仕立て直しをしたりする際に行います。
   またこの時に胴裏や比翼、八掛を新しいものに変えるのもいいでしょう。

"とき・ハヌイ"って何?


"とき・ハヌイ"を"解き・端縫い"と書き換えればわかり易いでしょうか。きものを染め/仕立
   直したり、洗い張りするときにいったんバラします。これが"とき。"そしてバラされた生地
   を加工しやすいように(あっちこっちいかないように)端っこを縫いあって反物の状態にする
   ことを"ハヌイ"といいます。
加工(お手入れ)Q&Aメニュー
きものQ&Aトップ

"色ヤケ"って何? 直るの?

生地を光などに長時間当てておくとその部分がうっすらと茶色く変色してきます。これを
   "ヤケ"といいます。きものに限らないことなのでご存じの方も多いでしょう。
   "ヤケ"は生地の表面の染料が「飛ぶ」ことであり、、直し方としてはその「飛んでしまっ
   た」色の「成分」をもう一度そのヤケた部分に掛け直してやるということをします。
   (かなり技術のいることです)

   ヤケてしまった部分というのは、生地自体がいくぶん変質をきたしています。上記の方法
   でほぼキレイになってしまいますが、若干残ってしまう場合もあります。
   ヤケ直しは結構値段も張りますので事前に見積もりしてもらった方がよいでしょう。ヤケ
   やすい色、染料というのもあるようで、2度とヤケないという保証はどこにもありません
   し・・・。
   

タンスに入れて置いたのに色ヤケしてしまった!?

タンス等に入れっぱなしで、光に当てていないのにきものがヤケた様に変色している場合、
   ガス(酸化窒素ガス、亜硫酸ガス)が原因になっていることがあるようです。ガスがタンス
   の中に溜まってきものの染料を分解してしまうのです。なぜガスが発生するかについては、
   タンスに使われている塗装料や、北陸や東北地方などの寒冷地で多く発生していることか
   ら石油、ガスストーブなどの暖房器具が通気性のない部屋で使われることに原因があるの
   ではないかとされています。

   特徴としては、ガスが自在に生地を通り抜けるため生地の表裏が同じように変色すること、
   変色しているところとしていないところの境目がボヤけてはっきりしていないことなどが
   あります。

   予防策は、時々部屋やタンスの空気の入れ換えをすることにつきます。

加工(お手入れ)Q&Aメニュー
きものQ&Aトップ

"汗抜き"って何するの?

"汗抜き"というサービスはあまり一般的ではないかもしれません。

   「汗」というのはいわば水性"と"油性"の混じり合った汚れであり、厳密にいうと"丸洗い"
   だけでは落ちきれません。<「Q:"しみぬき"について教えて」参照>その残った汚れを落と
   すべく"汗抜き"という処置があるわけです。多めに汗をかいてしまったと思われる場合、
   長くそのきものを着用しないと判っている場合などに利用するとよいでしょう。

   "汗抜き"は汗を多めにかく部分(腋の下、帯の当たる部分等)に充分な水を含ませ、上から
   タオル等の柔らかい布でたたきます。そして、やはり下に敷いたタオル等に汗や不純物を
   移していくということをします。絹地は水分を含むと型くずれや生地の縮み等をおこす可
   能性があります。特殊な器具に固定しての作業が必要となりますので、やはり専門の業者
   に任せた方がよいでしょう。

 
 加工(お手入れ)Q&Aメニュー
 きものQ&Aトップ