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海人(あま)の採った海藻

太平洋から日本へ

 遠い遠い昔、東南アジア方面に、船を家として漁労暮らす海住民(海人族)が出現しました。  航海術に長じる彼らは、次第に北上を始め、華南から華中へ、沖縄へと到達する集団も現れました。  そこから一派は朝鮮海峡方面へ、他の一派は四国方面へと向かいました。

 彼らは日本列島へ長年をかけ、何派にも分かれて到達したのです。

 まず、日本海側では北九州・山陰方面に、太平洋側では四国・紀伊半島に住みつき漁労生活に入りました。  かれらは、列島のいたるところで、沿岸におびただしく遊泳する魚群や美しく澄んだ海底にびっしりと棲息する貝類、腹足類に感声をあげたでしょう。

 意外だったのは南方よりはるかに多種類の海藻が、海底のかげるほど豊かに、色とりどりに揺らいでいることでした。  海人こそ日本で最初に海藻に着目した人たちなのです。  彼らはサメの害をも恐れず、勇敢に潜水して魚を捕ったり、ウニやアワビを採取 しました。

 アワビはなかでも最良の獲物です。  その中から得られる天然真珠は、最高の価値がありました。(古代中国で珠玉、白玉と称し、今でも東南アジアの天然真珠は、南洋玉といって高価なものです)

 そして、肉は美味で、干せば交換物資となり、貝殻は食器となりました。  ふんだんにとれる魚介類はどれも美味で、腹一杯に堪能することができました。  真珠や宝貝や各種魚介類の乾物等で、必要物資との交換にも事欠きません。

 ですから、比較的淡味で、ヴォリューム感の乏しい海藻には、始めは食べ物としてあまり強い関心を示さなかったのではないでしょうか。