2022 清明の養生法

清明[せいめい]の養生法

 今日から二十四節気「清明(せいめい)」ですね。清浄明潔の略で「空気は澄んで、陽光は明るく万物を照らし、全てがはっきりと鮮やかに見える」頃という意味で、 暦便覧には「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也」とあります。日本では、春分の日にお墓参りに行きますが、中国や台湾、沖縄などでは「清明」の日にお墓にお参りして先祖を敬うそうです。
 北宋に描かれた「清明上河図」は、春たけなわの頃の賑わい栄えた様子が描かれています。また映画やアニメなどでも有名な「白蛇伝」は、この清明の日に杭州の西湖にある断橋で白蛇の化身の主人公と若者が出会うという中国ではとても有名なラブストーリーだそうです。 

 杭州といえば、「西湖龍井」という緑茶の産地で有名ですが、特に清明節の前に摘まれる新鮮みあふれる新芽の茶葉は、最高級品とされ、茶葉はまるで碧玉のような緑色を帯び、やわらかい甘味と龍井茶ならではの豆のような香りが特徴的で、昔から皇帝に献上されてきました。 香港や上海などのお茶市場では、ワインのようにとても高額で取引されるそうです。

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 今回も前回(2022春分の養生法)と同じ、賀茂川の出雲路橋という橋からの写真を撮りました。

もう両岸の桜が満開です。京都は桜の名所がたくさんありますが、賀茂川の両岸はずっと桜並木で本当にきれいです。賀茂川の堰から流れ落ちる水音にも癒されますね。

 前回(春分の日)の写真と見比べてお楽しみください。
 もう一つ京都と言えば良く登場する東寺の五重塔。
こちらの桜は弘法大師の「不二のおしえ」から『不二桜』と名付けられている樹齢130年の桜だそうで、
こちらも満開でとてもきれいです!
本当にアチコチで桜が満開になり、桜吹雪がキレイに舞って「まぁ日本に住んでて良かったなぁ」と思う時ですねぇ。

 さて、各地で桜も満開になり、新年度もスタートして、入社や入学、転勤などで環境が大きく変わる人もいらっしゃいますね。新しい出会いにウキウキする人もいますが、逆に不安になったり、引っ込み思案になったりする人もいます。春の季節病ともいえる「木の芽時」や「五月病」など、人間も情緒が不安定になりやすい時期です。最近では「木の芽立ち症候群」などという病名もあるようですね。

 中医学では、私たちが生命活動を営むのは五臓(肝・心・脾・肺・腎)が中心となり互いに協調して働きココロも含めたカラダ全身をコントロールし、また調和させて生命活動を営んでいると考えます。この考え方を中医学では有機的統一的整体観念と言います。
そして五臓は各季節とも密接に関係しており、が活発に活動する季節と考えます。これは陰陽五行論を基にした考え方ですが、五行論の木・火・土・金・水はそれぞれの気質を表し、その気質により分類されます。

 は「曲直」という特徴のある気質で、くねくねと曲がりくねったりしながらも幹は真っすぐ空に向かって伸び、枝葉は横に横に広がり、根は地中深く伸びて養分を吸い取ります。このように伸び伸びと伸び広がるものが「」の特質で、もこの気質を持ち、伸び伸びと全身に気を巡らせることが肝の役割であり、肝が健やかでいるための条件でもあります。
は植物が芽を出し、スクスクと伸びていく季節で、夏・夏・土用(梅雨)・秋・冬の五季の中で肝と同じ「」に分類されます。
春は、肝が活発に働き全身に伸び伸びと気を巡らせてくれる季節ですが、それ故に逆に傷みやすい季節でもあるのです。
 また、五情(怒・喜・思・悲憂・驚恐)の中では、が「」に分類され、怒りやイライラなどストレスによって肝は傷められやすいと考えます。
肝がストレスによって傷められると気が伸び伸びと全身に巡らせられなくなって鬱(肝鬱気滞)になったり、地面からメラメラと陽気が立ち昇るように春の肝気は上に上がり(肝陽上亢)やすいので、上昇し過ぎて興奮状態(肝火上炎)になったりしやすいのです。

 何度も書いていますが、瞬間湯沸かし器のように急にカッとなって喚き散らすのも危ないですが、心のどこかに持ち続けている許せないという沸々とした怒りも非常に危険です。
 特にこの季節は、セカセカしたり焦ってイライラしないよう心掛ける必要があります。じゃないとすぐに肝気が上半身に昇ったり、逆に伸び伸びと巡らなくなって鬱状態に陥ってしまいやすくなります。
 スケジュール管理も、出来るだけ予定をツメツメにしないで移動や食事、休憩の時間など余裕をもって組むようにしましょう。
 衣服などもピッタリした物や締め付ける物は避け、髪もキツク縛らずゆったりふんわりしておくことがおすすめです。出来るだけココロもカラダも緊張しないように配慮することがこの季節の養生法になります。
この養生法を「疏肝理気」と言い、肝の働きを健やかにして、全身に伸び伸びと気を巡らせることです。

 怒りやイライラなどストレスが高じてくると中医学的には肝鬱や肝陽となって陰陽失調するという風に表現しますが、同じことを西洋医学では自律神経失調症と言います。自律神経が正常に働くことによって恒常性(ホメオスタシス)と呼ばれるカラダの調整機能が正常に作動します。
 朝になったら遠くまで出かけて行って獣と戦ったりエサや食料をいっぱい取れるように自分で意識しなくても自動的に交感神経が優位になって心臓からの拍動が高まり血圧も上昇しカラダ全身に血液を巡らせて酸素と栄養を供給します。夕方になって取ってきたエサや食料で食事も済ますともう全身にたくさん酸素と栄養を送らなくてもよいので、今度は副交感神経が優位になって心臓の拍動は緩やかになり血圧も下がってきます。

 この交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズに行われていると問題はないのですが、切り替えがうまくいかなくなると自律神経失調状態になります。夜になってもなかなか寝付けない、お布団に入っても寝られないという不眠の方は、だいたいこの自律神経の切り替えがうまくゆかず、夜になっても心臓の拍動が高いからと考えられます。
 自律神経の切り替えがうまくいかない原因は、ストレス過多(環境の変化、時間に追われる多忙、人間関係、極度な緊張状態、不安など)、更年期のホルモンバランスの乱れ、夜遅くまでスマホやパソコン作業、カラーテレビやゲームなどチカチカするものを見て神経が夜遅くまで興奮しているなどです。

 五臓と五官の関係では、肝と目は密接に繋がっていると考えます。
 今ごろはカメラもオートフォーカスと言ってほとんど自動でピントを合わせてくれますが、目のピント(焦点)を合わせるのも自律神経なのです。
近いところを見ると瞬間的に副交感神経が働いて毛様体筋を収縮させて水晶体を厚くして近くて小さい文字が読めるようにピントを合わせてくれます。その時に例えば入り口から誰かが入ってきたりしてそちらを見ると今度は瞬間的に交感神経が働いて毛様体筋を緩め水晶体を薄くして遠くのものにピントが合うようにします。
 ちょっと話がそれますが、近業作業と言って近くのものや細かい文字ばかり見ていると、近い物にピントを合わせるために副交感神経が働いて緊張状態が長時間持続するため眼精疲労に繋がります。そこで目薬を差すのですが、この目薬がクセモノです!目薬には、実は副交感神経を遮断する薬が使われているのです。副交感神経を遮断して毛様体筋の緊張を和らげ眼精疲労を改善しようとするので眼精疲労は改善するかも知れないのですが、しょっちゅう目薬を使っている人は要注意です。副交感神経を遮断させる薬を使ってばかりいるとだんだん交感神経優位なカラダになっていきます。毛様体筋にだけ作用してくれるといいのですが、そうはいきません。やがて血圧が上昇し心拍数が上がり、ドキドキして寝付きにくくなりやがて不眠症などに。自律神経失調症はそれだけではありませんね。

 やはりたとえ目薬と言えども、薬を自分のカラダに使うときはどんな作用があるのか?なぜ効くのか?副作用は?と言ったことは一応確認して使った方が良いですね。

 目薬よりもずっと安全安心に眼精疲労を取る方法が目の回りのつぼマッサージです。目の周りのツボを適度に刺激することで緊張をほぐし血流を増やし眼精疲労を改善することが出来ます。子どもの近視改善にも繋がるのでこの話はまたの機会にじっくりしたいと思います。

 最近、アチコチの受付やレジなどでキレッキレ老人を見かけることも多くなりました。また相変わらずあおり運転も減らないようです。さらに子どもの虐待なども本当に考えられないことが頻発していますね。躾というより自分の気に入らないことをすると抵抗できない子どもに暴力をふるうなど本当にひどいですね。
この季節は自律神経失調から狂暴になりやすいので、そういった攻撃性が自分の方に向かってこないように、あまり刺激したりしないよう気をつけて過ごすしかないのでしょうか。

 またストレス過多からくる自律神経失調により高血圧になりやすいのもこの季節の特徴です。高血圧になると、さらに冠状動脈性硬化症急性心筋梗塞の発病率が正常な血圧より3〜5倍高くなります。冬期のヒートショックも危険ですが、この季節も脳梗塞や心筋梗塞が多くなる季節です。
ストレスにより肝が傷み気の巡りが悪くなった状態を肝鬱気滞と言いますが、だいたい気滞と血瘀はセットです。気の巡りが悪くなると血の巡りも必ず悪くなります。逆に血の巡りが悪くなると気の巡りも悪くなる。どちらも巡りを良くしておくことが健康に過ごすためには大切です。
脳梗塞や心筋梗塞にならないためにも「疏肝理気」の養生法を心掛けて過ごしましょう。

「疏肝理気」の薬膳
1.省酸増甘で酸味と甘味のバランス調整
柑橘類(レモン、ミカン、グレープフルーツ、柚子、金柑、陳皮など)、
梅、山査子、黒酢などの酸味の食材がおすすめですが、酸味は収斂・収縮作用があり発散しにくくなるのでバランスよく。
2.香味野菜や香辛料
生姜、ねぎ、ニラ、紫蘇、大葉、三つ葉、香菜(パクチー)、春菊、セリ、玫瑰花(マイカイ花)、茉莉花(ジャスミン)、胡椒、山椒、とうがらしなど
3.滋陰清熱
菊花、白きくらげ、金針菜、百合、はと麦、緑豆、薄荷、枸杞の実など
4.その他
玉ねぎ、らっきょう、ニンニク、ジャスミンティー、緑茶、ウーロン茶など

 

「疏肝理気」のツボ
期門、太衝、肝兪、血海など

 


京都伝統中医学研究所の"清明におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「疏肝理気解鬱」におすすめ薬膳茶&食材  
薬膳茶では、
気血巡茶」、「麗香茉莉花茶」、「理気明目茶」、「ジャスミン茶」、「野ばらとなつめの美顔茶」、「そろそろダイエット茶」など
崑崙雪菊茶」は、私が中国で三高が気になると漢方茶の店で言ったときにすすめられました。たっぷりの崑崙雪菊茶に高価ですが高血圧でも安心して飲める西洋人参をブレンド。

薬膳食材では、
菊花」、「白きくらげ」、「金針菜」、「百合」、「はと麦」、緑豆」、「枸杞の実」、「山査子」、「マイカイ花」、「茉莉花」など

 

2.漢方入浴剤 
ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」もカラダが温まりココロの緊張もほぐれ気の巡りを促進。
すっきりさっぱり乃湯」は、エキゾチックでオリエンタルな香りでストレス解消、気鬱解消に。


 いよいよこれから夏至に向けて陽の気がどんどん多くなります。
春の気は「生」、夏の気は「長」、万物はどんどん生長を続けます。私たちもこの春夏の「気」に合わせて過ごすことが天人合一です。

 

中医学の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
商品は下記ショップでお買い求めいただけます。
京都伝統中医学研究所 楽天市場店

https://www.rakuten.co.jp/iktcm/

 

 中医学は難しい理論などもありますが、それよりも実際に暮らしに活かせる養生法や薬膳など健康に生きる知恵が満載です。 
専門用語や四文字熟語などもたくさん出てきますが、出来るだけわかりやすくお伝えしますので、少しでも実際の暮らしに活かしていただき、皆さまがより穏やかに健やかに過ごしていただきたいと願っています。

 

 次回は、4月20日「穀雨」ですね。穀物の成長を扶ける生温い春雨の季節♪ 新しい生活が始まった方も多いでしょうね。
新しい生活に慣れるまで心身ともに大変でしょうが、出来るだけゆったりと穏やかにお過ごしくださいね~!

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