2022啓蟄の養生法

啓蟄[けいちつ]の養生法

 今日は春の3番目の節気「啓蟄(けいちつ)」ですね。「啓」は開く、「蟄」は虫などが土中に隠れ閉じこもるという意味で、「啓蟄」は、冬眠していた虫たちがゴソゴソと土を分けて這い出して来る季節ということですね。 また、立春が過ぎ啓蟄のころになると東北からの季節風が徐々に弱まり、南西の暖かい気流が吹いて大気が不安定になり、春雷と呼ばれる雷が発生します。この雷を「虫出しの雷」とも言うそうで、雷に驚いて虫たちが這い出てくるので中国では「驚蟄(けいちつ)」と書くそうです。

 "雷”というと易経の八卦では「震」になります。震は九星気学の三碧木星の本宮です。震は十二支の「卯」に相当し、季節は春、時間は卯の刻(5:00~7:00)、方位は東で青龍が守り、卯の刻のことを日出(じつじゅつ)と言い、東から太陽が昇ってくる旭日の勢いがある時ですね。
春の陽気に誘われて万物が冬眠から目覚め、新しい命が生まれ、若芽のように真っすぐにスクスクと育つ若々しさと勢いがありますね。

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 暦便覧には「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也」とあります。 

 冬は寒く、夏は暑いので、春と秋が一番過ごしやすく気候も穏やかだと思っていますが、実は荒れやすいのは春と秋の方です。
もちろん厳しい寒さや猛暑は耐え難いものがありますが、冬はシベリア気団の勢力が強く西高東低と言われる冬型の気圧配置で日本海側は雪、太平洋側は乾燥した晴れの日が多くなり、逆に夏になると小笠原気団の勢力が強く南高北低の気圧配置となり高温多湿で蒸し暑く雷が発生しやすい日が多くなります。

春と秋は、このようにはっきりとした気団の勢力が強くなく、移動性高気圧と温帯低気圧が交互に通過するので大気が不安定になり、春の嵐や秋の台風など非常に荒れやすいお天気となります。

 私たちのココロとカラダも、自然の四季と同じように、子どもから大人に変わる頃(女性は七の倍数なので14歳頃、男性は八の倍数なので16歳頃)が最も不安定となり、ココロとカラダの成長がアンバランスで、ある時は子どものように素直で甘えているかと思えば、急に反抗的になったり暴力をふるったり罵ったりと荒れた状態になります。この時期を「思春期」と言いますが、まさに「春」と同じように暖かくなったかと思えば急に寒くなったりして三寒四温を繰り返して徐々に夏の気候になって安定していきます。

 そして、夏の小笠原気団の勢力が弱くなると大気が不安定になり、南の海で発生した熱帯低気圧がさらに発達して台風になります。だいたい立春から数えて210日目や220日目が多く、旧暦9月1日と合わせて昔から農家の厄日とされ災害が発生しやすい時期とされてきました。

 同じように私たちのカラダも、壮年期から老年期に移行する頃は「女心と秋の空」(もともとは「男心と秋の空」だそうです)とも言われるようにコロコロと変わりやすく非常に不安定です。この頃を「更年期」(女性は七の七倍で49歳頃、男性は八の八倍で64歳頃、どちらも+?5歳の10年間ぐらい)と言います。ホルモンバランスが乱れ、生理が遅れたり来なくなったりまた来たり、イライラしたり、何をするにも億劫になったり、カラダが昔のように言うことを聞かなくなったり、物忘れが多くなったりして自分に自信がなくなってきたり…など、女性も男性も非常に不安定になるのです。

 だいたい35歳で女児を出産したお母さんは、14年経つと、自分は49歳で更年期、子どもは14歳で思春期真っ盛りになります。推拿の施術をしていて、肩こりがひどくて、腰も痛くて、時々めまいや不眠もなどと、とてもしんどそうなお母さんが来られて、本人の年齢とお子さんの年齢性別を聞くと、だいたいこの年頃セットの母娘が多く「あぁ、やっぱりなぁ」と思うことがとても多かったです。自分は家事や仕事に追われ、人によっては介護もしてるという人もいたりで毎日フラフラなのに、子どもは子どもで受験勉強やクラブ活動、塾や習い事でフラフラ、おまけにお互い人間関係でも非常にストレスフルな毎日で、よく頑張ってますねぇと言う人がほとんどでした。

 以前、健康体操教室をやっていたことがありますが、そこに来てくれていたのはほとんど女性で、60代から70代の人が多く、80代だと言う人も珍しくありませんでした。
皆さん異口同音におっしゃっておられたのは「あのころが一番しんどかった!」でした。あの頃というのはやはり50歳前後。皆さんその頃に体調や精神的に最悪になって、健康体操やダンス、ヨガなど藁にも縋る思いで何かに頼られたそうですが、それから10年、20年、80代の方など30年以上歳をとって老いているはずなのに、「あの頃より今の方がずっと元気で調子が良い」とおっしゃっていましたし、実際、電車の中など苦情が出るほど声も大きく張りがあり、一緒にご飯を食べてもモリモリパクパク食欲旺盛、皆さん本当に元気でした。やはりこの「更年期」を抜けると、どんよりしていた雲が晴れたかのように、スッキリするんだなぁと感じました。

 いま、50歳前後で更年期の方、あるいはお嬢さんが14歳で思春期の真っ最中で接するのが難しいと感じている方もいらっしゃるでしょうし、この状態がいつまで続くんだろうと不安だと思いますが、必ず「気」は巡り、2~3年もすれば穏やかになり安定していきます。それが天の道…宇宙の法則です。明けない夜はないし、春から冬に逆戻りした年もありません。時間が解決してくれることも多いですから、あまり神経質にならず、また過剰に反応して却ってシコリや禍根を残すようなことにならないよう、自分の五感を癒すことを最優先してそっと見守りましょう。

 春の養生法は「疏肝理気」。春は「」が活発になる季節ですが、それゆえに傷みやすい時期でもあります。特に肝はストレスやイライラ、怒りと言った感情に傷みやすく、そういった感情が長引くと肝の働きが低下し気血が全身に疎通しなくなってきます。肝の働きを健やかに保つためにも、ストレスを溜め込まないように気をつけ、イライラしたりすぐカッとならず穏やかな気持ちで過ごすように心掛けましょう。タイプがあります。

 もう一つの養生法は「養陽防風」。春の主気は「」、東からの暖かい風で枯れていた山々も青く色づいてきますね。しかし邪気となると「風邪(ふうじゃ)」となり、中国大陸の西部では大風が吹いて砂漠の黄砂が砂嵐となって街を覆います。日本でも九州など大陸に近い地域では、毎年黄砂に悩まされますね。
私の住む京都でも風の強い日や風向きによっては、洗濯物や車が砂で汚れることがありますが、日本ではやはり風邪というと「花粉症」が一番つらいですね。

 私も花粉症持ちで、数年前は鼻が詰まって息苦しく、夜中に何度も目が覚めましたが、今は毎月1回花粉症予防の注射を打っているので「スギ花粉」はかなり楽になりました。でもまだ「ヒノキ」に対する薬がないそうで、「スギ花粉」の人がちょっと楽になってきたという頃に、こっちはツラくなってきます。

 

 中医学的には、「花粉症」は前回書きました風・寒・暑・湿・燥・火の外感六淫の「寒」と「風」の邪気が影響します。また脾虚(お腹が弱い)体質の人は内因として「湿」が溜まりやすく、ここでも「風・寒・湿」の連合軍が敵ですね。 日ごろから「寒邪」と「風邪」を遠ざけ、脾(お腹)を弱めないために冷たい物や甘い物の食べ過ぎに注意です。これらは本当は、花粉が飛び始めてからより、まだ寒い花粉が飛ぶ前からの「冬の養生」が大切になります。
 病因病機から見ますと、「花粉」は病機(きっかけ)であって、免疫力が弱い(気虚という)根本体質があって、さらに寒さや夜更かし、過労、ストレス、食事不摂生などで抵抗力が落ちているところに花粉が舞い散ると「花粉症」を発症します。


 漢方的な治療は、まず標治と言って今のツライ症状を抑える対症療法のことですが、外邪の侵入を近づけないためにマスクや眼鏡、洗濯物を外に干さないや外出から帰宅すると衣服の花粉を除去したり、鼻の周りにワセリンを塗るというのも効果的です。このワセリンはとても効果的で私は外出する前はもちろん、寝る前にも塗って寝ます。「鼻ヨガ」でも有名な鼻腔の洗浄もスッキリして寝られるので効果的です。

 

  抗ヒスタミン剤や鼻噴霧ステロイド剤などの西洋薬が有効ですが、眠くなったりする場合は、漢方薬もおすすめです。
ここでも「寒痰」と「熱痰」の寒熱を見極めます。

 

肺気虚寒】で冷えてサラサラ流れる鼻水やくしゃみ連発には小青竜湯(表寒証)や葛根湯加川芎辛夷、【脾虚湿盛】で鼻が詰まり嗅覚が鈍り、吐き気や下痢には薏苡仁湯、鼻水が少ないひとには麦門冬湯(肺陰虚)が合うようですが、【肺経鬱熱】で黄色い粘り気のある鼻水や鼻づまり、目の充血など熱痰タイプには、余分な熱を冷ます辛夷清肺湯、黄連解毒湯や麻杏甘石湯が処方されます。

 食事からも体質に合わせて食材を選びましょう。 冷えには温熱性、熱には寒涼性を摂って陰平陽秘(陰陽調和)を図ります。


京都伝統中医学研究所の"啓蟄におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「肺気虚寒」タイプの花粉症におすすめ薬膳茶&食材  
 薬膳茶では、「そろそろダイエット茶」、「からだを温める黒のお茶」、「黒薔薇茶」など
 薬膳食材では、「新彊なつめ」、「竜眼」、「枸杞の実」、「松の実」、「マイカイ花」、「桂花」、「茉莉花」など 
 薬膳鍋セット「冬の美薬膳鍋」、「手足冰凍鍋」は薬膳食材もセットになってオススメ。


2.「脾虚湿盛」タイプの花粉症におすすめ薬膳茶&食材  
薬膳茶では、「そろそろダイエット茶」、「水巡茶」、「健やか茶」、「増血美肌茶」など
 薬膳食材では、「新疆なつめ」、「枸杞の実」、「はと麦」、など 、 薬膳鍋では、「美潤湯

 

3.漢方入浴剤 

 ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」は、まだまだ寒い日も多いこの季節の養生にオススメ。ヨモギの香りが浴室いっぱいに広がり芳香浴にもなって癒されます。

もう一つは「スッキリさっぱり乃湯」。こちらは藿香をたっぷり配合。オリエンタルでエキゾチックな香りがとても爽やか!藿香・生姜・陳皮の配合で爽やかな香りが纏わります。蕁麻疹などでカラダに痒みがある時にオススメです。

 

中医学の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
商品は各ショップでお買い求めいただけます。
京都伝統中医学研究所 楽天市場店

https://www.rakuten.co.jp/iktcm/

 

 中医学は難しい理論などもありますが、それよりも実際に暮らしに活かせる養生法や薬膳など健康に生きる知恵が満載です。 
専門用語や四文字熟語などもたくさん出てきますが、出来るだけわかりやすくお伝えしますので、少しでも実際の暮らしに活かしていただき、皆さまがより穏やかに健やかに過ごしていただきたいと願っています。

 

 次回は、3月21日「春分」ですね。 「暑さ寒さも彼岸まで」 いよいよ春が訪れますね♪ 
でも、まん延防止も延長される地域が多いようで、まだまだしっかり風邪の対策してくださいね!

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