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第2回ふとんの歴史「衾(ふすま)と呼ばれた「掛けふとん」」

現代では寝具といえば「ふとん」という言葉がまず浮かびます。
しかし、「ふとん」という呼び名は中世の末期に中国から入ってきた外来語で、禅宗の僧が座禅をするときに使った座ぶとんのことでした。
「蒲団」が本来の文字で、布団は後世の当て字とされています。

「ふとん」が寝具を指すようになるのは、ずっと後の江戸時代からとの説が有力です。
衾(以下フスマ)というと、今では建具の襖を思い浮かべますが、奈良、平安、鎌倉時代を通して、掛けふとんに当たるものはフスマと呼ばれていました。
語源は臥(ふ)す(寝るとき)の裳(も)(着物)でフスモ、これがフスマヘと変化したのではないかとされています。

フスマの素材には麻や絹、楮(こうぞ)などが使われました。
室町時代の中頃、宿直物とも呼ばれていたフスマに代わるものとして、「夜着(よぎ)」が現れ、江戸時代の中期までには、掛けふとんを表す呼び名としては、夜着が一般的になります。
フスマから夜着へと変化した裏には、建具としての襖の誕生があり、同じ呼び名では紛らわしいことから、次第に夜着が定着したのでいかと推測する人もいます。

第2回ふとんの歴史「源氏物語の直垂(ひたたれ)フスマ」

平安朝のフスマを絵にした資料としては、「源氏物語絵巻」が最も貴重です。
この絵巻には「柏木の巻」と「御法の巻」の2カ所にフスマが描かれています。
いずれも広口の大きな袖が付き、襟なども付いたもので、これらは直垂とも直垂フスマとも呼ばれていました。

直垂は鎌倉時代には武士の平服に、江戸時代には最上の礼服へと、後に寝具から衣服の呼び名へと変化していきました。

ボンニュイ 春夏号 Vol.34
※こちらのコラムは日本寝装品研究所の許諾を頂き、掲載させていただいております。