こだわり安眠館 メールマガジンコラム バックナンバー

第1回ふとんの歴史「不明なことだらけの生活史」

歴史の研究は、多くの学者の努力によって、ずいぶん進歩してきましたが、身近な生活史はよくわからないことが多いようです。
あまりにも日常的なもの、特にふとんのように毎日繰り返し使うものは、歴史にその姿をとどめにくく、参考となる資料はごく限られています。
そのため、先人たちの残した歌集や日記、それに絵巻物や浮世絵などが重要な手掛かりになっています。

第1回ふとんの歴史「ベッドに寝ていた弥生人」

今から約2千年前の弥生時代に大陸から稲作が伝わり、農耕が始まると、人々は定住するようになり、竪穴式(たてあなしき)住居で暮らし始めます。
当時の遺構を見ると、土間の一部が高くなっており、ここをベッドのような寝処(ねとこ)にしていたようです。
ベッドといえば、後に中国の寝台が西に伝わって西洋のベッドとなり、日本に入って御帳台(みちょうだい)になったともいわれます。
奈良時代に聖武天皇が愛用したとされる寝台は、正倉院御物として今日まで伝えられています。

第1回ふとんの歴史「竪穴式住居の土間に藁(わら)を敷く」

しかし、ほとんどの庶民は、その後も長い時代、粗末な竪穴式住居の暮らしが続きます。
残した「貧窮問答の歌」には「伏いお(当時の住まい)の曲いお(当時の住まい)の内に直土に藁解き敷きて父母は枕の方に妻子どもは足の方に囲みいて…」と、竪穴式住居で土間の上に藁を敷いて寝ていた様子が歌われています。
平安時代になっても、庶民の生活は長い間あまり変わることはなく、土間にじかに寝ていたようです。都には壮大な寺院や寝殿造りの住居が建てられましたが、地方の庶民の住居は、依然として古い時代の竪穴式住居から一歩も出ないものでした。

ボンニュイ 春夏号 Vol.34
※こちらのコラムは日本寝装品研究所の許諾を頂き、掲載させていただいております。