気楽なふとん屋さんのタイ出張記

7月7日 (1日目)

今日は七夕だが家族と星を見ることもせずに私は久しぶりの中国出張だ。 サーズや鳥インフルエンザの問題があったのでなんと2年ぶりのことになる。13:40関空発 14:50上海浦東空港着の中国東方航空・JALの共同運航便で旅立つ。

今回は当社の取組メーカーMのY本氏と一緒の道中である。現地では同じくMのY田氏が待っていてくれるはずだ。

今回の目的は10年以上付き合いのある枕メーカーの社長が上海に工場を建てたのでこれを見に行くことと上海付近のメーカーで新商品を開発して輸入しようということである。

飛行機はほぼ予定通りに浦東空港に到着したのだが同行のY本氏がなぜか入国審査に引っかかり時間をとられる。結局なぜ止められたかを理解できないままに解放されたのだが不思議な話である。もしかしたら彼に似たテロリストでもいるのだろうか?

出口には大勢の出迎えが来て混雑していたものの我々はそれぞれ目当てのY田氏と枕メーカーのT社長を見つけることができた。
ここで私はY本氏とはしばらく別れてT社長と一緒に彼の工場へ向かう。
空港からは30分ほどの場所だが久しぶりに会ったので道中はお互いに経営や採用について意見を交換する。

到着してまず工場を見せてもらったが、想像していたより大きい。
私はたくさんの工場を見てきたが、工場を見るときに一番力点を置いて見るのは工場内のクリンリネスである。

どんなに偉そうなことをいうメーカーでもクリンリネスの悪いメーカーはB品の発生率は必ず高いし納期にもシビアでない場合が多い。

この工場は私の基準で見る限り合格点を出してもいけそうだ。検針も何社もの大手量販店に納品しているだけあって徹底されているようだ。
工場をチェックした結果、これなら取り引きしても大丈夫だと考え商談に入ることにする。

枕や低反発のマットレス等いろいろな商品を検討するが、今回は備長炭入りの低反発ウレタンマットレスを1コンテナ分発注する。
備長炭は色々な効果があると言われているが、誰もがすぐ体感できるのは消臭効果である。

備長炭を練り込んだウレタンはウレタン独特の臭いがほぼなくなるのでウレタン臭のきらいな人には非常に価値があるといえる。

T社長はせっかく来てくれたということで今回に限り価格も特に安くしてくれた。お陰で今年の秋にはお客様に良い品を安く提供できそうでうれしい限りである。
他にも枕やクッションのサンプルを見た後、6:30頃に工場を出る。

この日は虹橋地区の古北湾飯店に予約してあるので虹橋地区に向かう。
工場からは一時間半の距離でホテルに到着したのが8:00頃である。

その後、焼肉をごちそうになりホテルに帰って仕事を始める。  今回のホテルはインターネットをブロードバンドで部屋からつなげることを条件に予約を頼んでおいたので仕事がゆっくりできる。接続料金は1分1元(13円位)で最大60元までということだ。

早朝に家を出たので11時くらいまで仕事をすると眠くなったのでこの日は寝ることにする。

7月8日(2日目)

8時にホテルで食事をとりその後、MのY田氏、Y本氏、現地に事務所を構える台湾人のB氏と合流する。
このB氏は気さくな良いおじさんといった感じで日本語もぺらぺらだ。
全員揃ったところで紹興酒で有名な紹興に向けて9時にホテルを出る。
紹興へは2時間半くらいの道のりだ。道中が長いのでB氏に最近の中国布団業界についていろいろ教わりながら紹興へ向かう。

紹興には11:30頃に到着したので早めの食事をとる。
昼食はB氏お勧めの店でとることにする。レストランの入り口には「天上の龍肉、地下の驢馬肉」と書かれてある。
出てきた料理は火鍋、鍋の半分が塩味、残り半分が激辛唐辛子味だ。この鍋になんと驢馬(ロバ)の肉を入れて食べるのだが今ひとつ好みに合わない。
めずらしいからということで連れてきてくれているんだろうと思い無理して食べているとどうもそうではなく美味しいということで連れてきてくれているのが途中でわかる。こちらは無理して食べているのだがどうやらこの料理を気に入ったと思われたらしくどんどん私の皿にロバ肉を入れてくれる。

食文化と味覚の違いを痛感しながら店を出て最初に飛越という生地の染工場にむかう。
非常に大規模な染工場で年間5,800種類もの柄を染めるということである。

■スクリーン染色

■ロータリー染色

■桧反作業

次にMという縫製工場に向かう。
ここはもともとカーテン等インテリア中心のメーカーだったのが、経営者が変わった関係で寝具関係の加工にもラインロビングしてきたメーカーだ。

■転写プリント

■刺繍

■ダウンケット製造工程

工場見学と多少の商談を経た後6:00頃ホテルに入る。
この日はショウ山という羽毛の集散地に泊まる。

ホテルの名前は金馬飯店、4つ星のホテルではあるが、この周辺で高級ホテルはまだまだ数が少ない。
夕食は近くにある中華料理のレストランである。

昼間、訪問したMの社長、運転手、生地の担当者、工場長と4人が来てくれる。
こちらは私とY本氏、Y田氏、台湾人のB氏の4人なので人数を合わせて来たのだろうかと少し嫌な予感がする。 なぜなら、中国で中華料理といえばあの乾杯(発音はカンペエか?)である。

中国の乾杯は日本の乾杯とは少し異なり私の狭い知識の中であるが、会食するときはお酒を飲むにしても自分のペースで飲むのではなく誰かと杯を交わして飲まなければならないし、その時に乾杯と言われるとその字の本来の意味のごとく杯を乾さなければならないのである。

私は主賓なので最初に相手の社長とビールで乾杯をする。
これで終わりかと思うと相手の一人一人が全員、私に乾杯をしにくる。瞬く間にビールが次々と空いていき、地元の酒として有名な紹興酒も出てきて紹興酒でも乾杯が始まる。

私は1周すれば大丈夫だろうとたかをくくっていたが2回目、3回目も始まってくる。今度は紹興酒も次々と空いてきたのでこれはたまらないとY本氏に助けを求める。都合の良いことにY本氏は当社の営業担当という位置づけが中途半端なためあまり乾杯は挑まれていない。

私への乾杯攻撃を封じる作戦は一つしかない。Y本氏が次々と乾杯をしかけ私へ乾杯をしかける隙を相手に与えないことである。Y本氏は普段あまり飲まないにもかかわらず私の壁となってよく戦ってくれた。
しかし、このメーカーと付き合いの長いY田氏によればこの日はまだおとなしい方でいつもはもっとたくさんの酒瓶が空になるとのことで中国ビジネスの恐ろしさを身をもって体験する。

体がもたないので2時間くらいで早々に切り上げ、工場の人たちにお礼を言って別れる。

その後、我々4人は金馬飯店のロビーにある足マッサージに行く。1時間100元(1,300〜1,400円くらいか?)日本と比べるとやはり安い。
Y本氏は食事の最中はそんなに酔った風でもなかったが足マッサージの椅子に座るや失神するように動かなくなった。彼も彼なりに一生懸命に頑張ってくれたのだろうと温かい目で見守る。

足マッサージが10:00位に終わりそれぞれが部屋に帰る。

私はいつものように仕事を始めるのだが、どうもこの日の朝に来たメールにウィルスが混じっていたようでコンピューターがウィルス感染したようだ。 何度もウインドーズが勝手に再起動し仕事にならない。再起動の合間を縫ってウィルスを駆除していくが複合感染しており、主なウィルスは駆除できたもののあと2種類だけがどうしても駆除できない。

2時になったので次の日のことも考えて就寝する。

7月9日 (3日目)

この日は金馬飯店を9時に出発する予定である。
私は両替をするため少し早めにロビーに降りる。フロントでは2万円ほど両替を頼む。
両替したお金をそのまま財布に入れるが相手が両替の控えを出さない。おかしいと思い伝票を出せというと相手の顔に一瞬、動揺が走る。伝票をもらい財布から金を出して数えると案の定、100元足りない。

一度、財布に入れてしまったがここは言うべきだと思い日本語で金が少ないと少し怒り気味に言う。
それまでは中国語でしゃべっていたのだがこんな時は日本語で言うに限る。

私の経験ではこのような確信犯は強いものには弱く、弱いものには強いというのが常なのでいちいち考えながら外国の言葉で話しても仕方がない。
自分が何をしたのかわかっているのだからこちらが怒っていることを伝えればいいので日本語でも十分意味は通じるのだ。思った通り申し訳ない間違っていたと言い訳して100元を返してくる。
伝票をわざと渡さなかったので間違ったはずはないのだがこちらも被害がなくわざとだという物証もないのでそのまま100元を受け取る。
いつもは両替時に必ず金額は確認するのだが同行者が世話をしてくれるという油断が自分にありいつもより隙ができていることを自覚し身を引き締める。

9時になりみんなが出てきたので杭州の繊維メーカーに向けて主発する。
このメーカーはだれも行ったことのない新規のメーカーということである。
このホテルからは45分くらいで着くだろうということで出発するのだが1時間たっても全然、到着する気配がない。結局、2時間ほどかかり11:00頃に繊維メーカーに到着する。

このメーカーでは特殊な繊維を生産しており、これが今回出張の最大の目的でもある。
企業秘密が多くあるようで工場も一部しか見学させてもらえない上にその工場内でも撮影は禁止である。
見学もさせてもらえないなら長居してもしょうがないので質問をいくつかし、綿のサンプルをもらって11:40頃工場を出る。

更に2時間車で走って桐郷という町に入る。
この桐郷は昔からシルクで有名な町である。
昼食は地元の中華料理店に行く。
昼食後に布団メーカーAに行く。

Aでは先ほどもらった綿のサンプルを渡して布団を試作するよう依頼する。

■羊毛布団の製造過程

サンプルの綿から日本でもこの綿を試験に出すため一部を取り分けて袋に入れてもらう。
工場内も見学させてもらいチェックする。建物は古いもののレベル的には当社の基準をクリアーしているようだ。
工場を5時頃出て上海に向かう。

この日の宿泊は初日に泊まった古北湾飯店である。
ホテルには6時半くらいに到着し7時くらいから食事に行く。
この日は白木屋という日本にもある居酒屋に行く。一人170元で飲み放題食べ放題である。

この日は最後の日なのでカラオケに行こうと誘われてカラオケに行く。中国のカラオケは日本のカラオケボックスとクラブが一緒になったような店である。
この日は5人でカラオケに行ったのだが、5人で行くと女性が5人出てきて相手をしてくれるのである。
みんなでカラオケを歌うのだが、台湾人のB氏は日本の歌が非常に上手い。
それぞれが順番に歌い10時半頃に帰る。帰り際に世話をしてくれた女性にチップをそれぞれがあげる。彼女たちは店からの給料はなくこのチップで生計を立てているとのこと。相場は200元から300元くらいというので300元渡す。いつも思うのだが中国の物価からして単に隣で座っているだけの人間に4,000円をあげるのはどう考えても高いような気がする。しかし、隣のY本氏は400元渡している。きっと彼は渡しているのが元なので貨幣価値がよく判らず渡しているのだろう。後で、「5,000円以上渡してましたねえ」と言うと非常にびっくりしていたようである。

ホテルに帰ってウィルスの駆除に励むが途中で挫折し1時くらいには寝る。

7月10日 (4日目)

6時45分にホテルを出発し浦東空港へは7時半ごろ到着。9:25発の関空行き中国東方航空で帰国する。