ファッション2018/09/11

トレンチコートの豊かな歴史と万能性


こんにちは。イシハラです。

秋から春にかけて活躍するトレンチコート。 イギリスは9月、日本では10月くらいから着始める人も多いのでないでしょうか。 そんなトレンチコートの代表的ブランドとも言えるバーバリーはいったいどんなブランドなのか、トレンチコートの歴史と機能性を今回ご紹介したいと思います。

トレンチコートの起源は第一次世界大戦のイギリス軍で、寒冷な欧州での戦いに対応する防水型の軍用コートが求められたことから開発されたものであるとされています。 トレンチコート(Trench coat)とは冬季用のオーバーコートおよびレインコートの一種で、生地にはギャバジン(Gabardine=防水加工した綿生地)または、ウールを用いるのが一般的ですが、近年では合成繊維や皮革を使うこともあります。 トレンチ(Trench)とは日本語で塹壕(ざんごう)を意味し、戦争で歩兵が砲撃や銃撃から身を守るために使う穴または溝の事を指します。 1914年、第一次世界大戦が勃発し、イギリス軍部の要請により塹壕での戦闘に合わせてタイロッケンコート(バーバーリー社が開発したベルト締めのダブルのコートのこと、特徴はボタンをつけずに前2箇所、後ろ一箇所にバックルを設けて帯をくぐらせるように仕立ててある)に修正を加え、手榴弾や剣・水筒をぶら下げるD字型リングをコートに止め金として取り付けたトレンチコートを製造し英国陸海軍に正式採用されました。 大戦中に50万着以上着用され、泥濘地でその機能性と耐久性を発揮した事により、終戦後には市民に広まり、バーバリーのトレンチコートは市民にも一般化されていきました。

バーバリーは1856年、イギリス・ハンプシャー州ベイジングストークで生地屋の見習い職人であった当時21歳のトーマス・バーバリーによって創立されました。 野心にあふれていたトーマスは農民が汚れを防ぐために服の上に羽織っていた上着をヒントにギャバジンといわれる耐久性・防水性に優れた新素材を発明し、1888年には特許を取得。1917年までその製造権を独占していました。創設者自身が常に着心地や機能性を追求していく性格だった為、創設から数年後にはジャケット、マフラー、アクセサリーなど多くの商品を幅広く手掛けていました。 1891年、ロンドンのヘイマーケット30番地にThomas Burberry & Sonsの本社兼店舗を置き、1912年、ヘイマーケット店が現在地(18-22 Haymarket, London SW1Y 4DQ)に移転しました。1924年、コートの裏地として使用されていたデザインを「バーバリー・チェック」として宣伝し、一大ブームが起きました。



1970年代以降、ブランドが市民の間でカジュアル化しサブカルチャーとの結び付きが増加、「プロールドリフト(低所得階級が中上流階級の外見や行動を真似ること)」の一例として顧客層が大きく変化しました。 サッカーのフーリガンや不良学生、バーバリーマンと呼ばれるコート男性型露出狂など、低俗さと結び付けた連想をされる傾向が1990年代まで続き、このような結果、ブランドイメージは大きく低迷しました。 しかし、そんなマイナスイメージとは裏腹にバーバリーはルイ・ヴィトンと並んで日本人に人気の高いブランドであり、日本市場における外資系ブランド売上げ第2位を占め、元英首相ウィンストン・チャーチル、シャーロックホームズの作者である作家アーサー・コナン・ドイル、イギリスのトップモデルのケイト・モスなど数々の著名人がトレンチコートを愛用することになりました。

元々が軍事用に開発されたコートな為、今でもその名残が多く残っているのが特徴で、今では使うこともない飾りになってる部分など、その詳細についてご説明します。


■スロートラッチ

チン・ウォーマーとも呼ばれます。本格仕様のトレンチコートに見られる襟裏に収納されている小さなベルトのこと。 雨風が入るのを防ぐため、フック留めした襟の上をカバーするためのもの。


■エポーレット

語源は、コートやジャケットの肩にそって付けるバンド状の付属品で肩章、肩飾りの事を言います。 もともとは階級を示すバッジを付けたり、双眼鏡や水筒のストラップが滑り落ちるのを防ぐために取り付けられたものです。 現在では、ファッションとして、肩のラインを強調するので、マニッシュな印象を与えるようになっています。


■ガンフラップ

かつてはライフルを発砲したときの衝撃を吸収するためのものでしたが現在は、前ボタンを上まで留めた合わせ部分を覆う「風よけ」に使われます。 また襟を立てた際に雨が侵入するのを防止するためのものでもあります。男性の服は右あわせなので右側に、女性は左側に片側にしか存在しません。


■ストームシールド

肩から背中にかけて二重構造になった布部分のことで、アンブレラヨークとも呼ばれます。 雨が当たる背中上部のケープ状のヨークが、背中から雨が流れ落ちやすくし、水滴が滑り落ちるよう、デザインされています。


■Dリング

戦闘中に、手榴弾やフラスコ入りのカバンを持ち歩く際に固定するための物で、今では装飾として形をとどめていますが、ステッチをかけたベルトにしっかりと固定されて強度が保たれています。


■カフ・ストラップ

袖口から入ってくる雨水を遮断したり、寒風の侵入を防いでくれたり、腕を動かしても袖がまくれないようになっています。 現在はまくることで柄を見せたファッションスタイルでも有効です。


■ダブルブレステッド

ダブルブレストとも言い、前身頃が広くボタンが二列になっているもの。一列のものはシングルブレステッドと呼び、 バーバリーにおいては二列のものが伝統的なものになります。

さて、トレンチコートと言えばバーバリーと思う方も多いと思いますが、実は多くのブランドがトレンチコートを扱うようになっています。 その中でも元祖と呼ばれるブランドがもう1つあります。それはアクアスキュータムです。同じ国内なのに、なぜ元祖が2つあるのでしょうか。 いずれも独自開発の防水加工を施した布地を使用して作られた軍事用コートで、バーバリーは悪天候にも適応した高密度のコットンギャバジン、 アクアスキュータムは画期的な防水加工を施した天然素材のウール生地を開発しました。 ちなみにアクアスキュータムとはラテン語で「水の盾」を表す「アクア(水)」と「スキュータム(盾)」という言葉が由来になっています。 実はイギリス軍に先にコートを提供したのはアクアスキュータムの方で、バーバリーは特許を取得した後にイギリス軍にコートを提供し始めているようです。 それぞれの歴史を見ても年代こそ少し違うものの、独自に雨が内側に入ってこない特殊な布を発明し、その技術を請われてコート製作に着手しています。 つまり同じくらいの時代に同じようなことがイギリスの西(アクアスキュータム)と南(バーバリー)で起こっていたようです。 その後、アクアスキュータムは王室御用達ブランドとして、バーバリーはファッション界のビックネームとして君臨し、現在に至るというわけです。

男女問わず魅了され着こなすだけで大人の雰囲気を作り出せるトレンチコートは現代的なエレガンスさと機能性の両立、 ストリートウェアとハイファッションを融合させる次世代のクリエイションにより、これからも人々に愛され続けるのではないでしょうか。 歴史や機能性を知ってるとこれから着る時も楽しく着れそうですね。



記事を書いたひと
イシハラ
英国の街並みと自然に興味あり。絶景を求めて旅するカメラ好き。

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