エスニック雑貨バイヤーってどんな仕事?アジアの国別仕入れの難易度

エスニック雑貨のバイヤーと言うとどの様なイメージを持たれるでしょうか?

「お仕事で海外に行けて良いなぁ」

お客さんに良く言われるセリフのひとつですがこの記事を読んだ後にもそう思えるかどうか(笑)

当たり前のことですが旅行で行く「遊び」と「仕事」は違うのです。

ではエスニック雑貨バイヤー25年選手のボクがその仕事内容を暴露します(笑)



エスニック雑貨バイヤーってなに?



JJマーケット


主にアジア各国に足を運び日本には無い商品を探し出したりオリジナルで作り買い付け日本に送る。

一言でいうとそんな仕事です。

特に資格が必要な訳でもなくパスポートがあれば誰でも出来るのがエスニック雑貨バイヤーと言う職業です。

日本で出回っている「エスニックファッション」と言うジャンルはそのほとんどがタイで作られいます。

今は昔と違いピカピカの一年生バイヤーでも難なく仕事が出来る環境が整っていて何の心配もいりません。

普通のエスニック雑貨店はタイでの仕入れが多いのですが回る市場はほぼ決まっている様な物なのでルート営業的な仕入れのイメージです。

たまにバンコクに来てタイ料理とビール。

マッサージを楽しんで市場でルート営業的な仕入れ(笑)

むっちゃ簡単です!何の心配も要りません。

英語もさほど重要ではありません。

売りたい側と買いたい側なので電卓一丁とカタコトのカタカナ英語で十分コトが足りるのです。



エスニック雑貨バイヤーに大事なのはバイタリティ



ニューデリー駅

さも簡単な仕事の様に書きましたが入り口は広いけど奥が深いのもエスニック雑貨バイヤーと言う仕事です。

ルート営業的な仕入れから始まりウキウキでタイに通ってるうちはまだまだヒヨッコ。

パスポートと電卓一丁で誰でも出来るのはここまで。

他所の店を見て売れてそうな商品を真似て仕入れているエスニック雑貨バイヤーはピヨピヨレベルここ止まり(笑)

「他所と同じじゃツマラナイ」「もっと面白いものを仕入れたい」そう思い立ったバイヤーだけが次のステージへ進むことになります。

タイで言うところのマイペンライ(問題ない)

インド人が言うところのノープロブレム(問題ない)

マイペンライもノープロブレムも仕入れの間中何度も耳にする言葉ですが現場は毎日問題だらけなんです(泣)

テメー!全然出来上がってねーじゃねーか!!

約束した納期に顔を出したところで出来上がってることはまずありません。

出来上がっていると逆にこっちが驚くレベルです(笑)

まぁ怒鳴り散らしたところで「来週には出来るからマイペンライ(問題ないよ)」みたいなことを言われて身体中の水分が沸騰します(笑)

納期ってなに?( ꒪⌓꒪)←こうなります。

どうしてもこちらの意図が伝わらずモヤモヤして来ます。

ここで初めて外国との文化の違いや言葉の壁にぶつかるんですね。


人としてのバイタリティが必要になってくるのはここから。

何があってもどうにかこうにか帳尻だけはキチッと合わせる。

その手腕が問われ始めるのです。

エスニック雑貨バイヤーのプロとしての一歩を踏み出す瞬間です。

以前の記事でバイヤーにより店の個性が決まること。

そしてそれには「いくつかの種類」があることを書きました。

ご興味のある方はどぞー!





エスニック雑貨バイヤー国別の仕入れの難易度



フライトボード

タイ

タイでバイヤーが回る市場

・チャトチャックマーケット
・プラトゥナームマーケット
・ボーべーマーケット
・中華街ヤワラー/サンペンレーン
・インド人街パフラット
・チェンマイ/モン族市場

以上です。


この6ヶ所を回れば皆さんがエスニックと聞いて連想する商品は大体揃います。

日本中に溢れているエスニックファッションやエスニック雑貨がタイで作られた物なのです。

タイはシルバーやレザー製品も豊富なので日本に限らず世界中のバイヤーが集まります。

バイヤーが集まればそれに付随するサービスもどんどん出てきます。

例えば仕入れのアテンダント。

言葉が出来なくても通訳が付きっきりで市場を案内します。

後でこっそり紹介したお店にマージンを請求して小遣いを稼いだりしていますがその分もしっかり商品代金に乗ってきたりするので注意しましょう(笑)

日本に送る国際宅急便の営業所もバイヤーが回るような市場には必ずと行っていいほど支店を出しています。

後は現金を持って市場を回りブツを仕入れるだけ。

誰でも簡単にエスニック雑貨バイヤーになれるのがタイです。

大体はここがスタートラインです。

逆に言うとタイでバイヤーとして仕事が出来なければそれ以外の国でも無理です。

下記の記事は実際にボクが仕入れで回っているバンコクの市場です。

エスニック雑貨バイヤーとして最低限押さえて置かなければならない5つの市場について書いています。



ネパール

ネパールの職人たち

タイで何度か仕入れをしていると秋冬物が揃わないことに気づきます。

そこで向かうのはネパール。

標高が高く気温も下がるためウール物や厚手のジャケットなどが揃います。

タイから飛行機で3時間半と言う距離感とタイ航空を始めネパール航空なども飛んでいて比較的チケットもお安め。

ただし気をつけなければならないのはネパール観光の目玉でもあるヒマラヤのトレッキングが始まる9月からのハイシーズン。

突然飛行機の座席が埋まり出します。チケットが取れなくなるのです。

仕事で向かうエスニック雑貨バイヤーとしては納期も加味し8月中にはネパールに入り飛行機が混む前に仕入れを済ませるのがベターです。

そうすると秋が始まる9月には日本に商品も届いていると。こうなります。

ネパールの仕入れは首都カトマンドゥのタメル地区と言う小さなエリアに限定されています。

徒歩でも回れる規模感なのでネパール仕入れはタイに次いで簡単です。

このためタイでは中々見つからない秋冬物のエスニックファッションを求め多くのエスニック雑貨バイヤーが入っています。

またエスニック雑貨バイヤー以外でも農業の技術支援やボランティアなど多くの日本人が入ることから日本食屋も豊富。

美味しい納豆まで食べられます(笑)

荷物を送るにしてもエアカーゴも国際宅急便も選べるので荷物の量に応じて使い分けられます。

なによりもネパール人は優しくてまじめな人が多いので仕事をする相手としては申し分ありません。



ベトナム


ずい分前に入ったきり行ってないので今はどうか分かりませんがベトナムも回る市場が決まっているので比較的仕入れは簡単です。

ホーチミンのベンタイン市場やハノイのドンスアン市場などが有名です。

しかし「ベトナムドン」と言う分かり辛い通貨の単位が少々厄介。

1ベトナムドンは0.005円と非常に細かいのです。

なので1万円を両替すると今日のレートで1,991,051ベトナムドンになって返ってきます。

ダメですよねこれ?もう訳が分かりません(笑)

ボクがベトナムに入っていた頃は日本に送る方法としてエアカーゴを使っていましたが今の時代だとタイと同様に国際宅急便があると思うのでこの点は大分楽になっているかもしれません。



バリ島


バリ雑貨も日本ではお馴染みかと思います。

小さな島なのでこちらも仕入れは比較的楽。

しかしバリも通貨単位がややこしいことで有名です。

1ルピアは0.0079円

ほら。嫌な感じしませんか?(笑)

1万円を両替すると1,261,358ルピアになります。

商品代金は合計468,000ルピアです!と言われましても・・・

ぇ。ぇーと?( ꒪⌓꒪)←こうなるヤツですよね(笑)

エスニック雑貨バイヤーにとってベトナムドン同様インドネシアルピアも分かりにくくて慣れるまでは原価計算が大変面倒な通貨となります。

それとバリ島は日本へ荷物を送る送料が高いことでも有名です。

ある程度の量を仕入れ海上コンテナを使うぐらいじゃないと仕入先としては小口の雑貨屋には不向きです。



インド


インドのバス車内

はい。インドです。

インドと言う国の名前が出た時点で遊びは終わりです。

インドはエスニック雑貨バイヤーにとって最大の難関なのです。


まず。だだっ広い国土。

街から街へと移動するだけで丸1日潰れるなんて普通です。

それもバックパックに水とクラッカーそしてリンゴなどの非常食を常に持ち歩くのはインドを移動する際の旅の鉄則です。

移動だけでもう苦行なのです(笑)

タイの仕入れのようにトゥクトゥクやタクシーを掴まてお手軽なルート営業的仕入れを終えて夜はマッサージからの冷えたビールで一杯!とは世界がガラッと変わります。

インドは酒も自由に飲めませんからね!

誤解を恐れずに書くとハパーを吸う方が遥かに簡単だったりします。


そしてインド独特の「R」を全て発音する早口の巻き舌英語。

初めてインドに降り立った時は英語に聞こえず大変戸惑いました。

エスニック雑貨バイヤーとして仕事をする時はもちろん移動する際もインド人が操る早口の巻き舌英語を理解できないと手も足も出ません。

そしてインド商人独特の押しの強さと粘り強さ。

そう言う商売人を来る日も来る日も相手にして移動はエアコンも効かない灼熱地獄のローカルバスだったりします。

一気にハードルが上がるのがインドの仕入れ。

エスニック雑貨バイヤーとしてインドに入れるのは選ばれし人のみと言っても過言では無いほどの難易度なんです。

ここまで読んでも「インドに入ってみたいなぁ」と言ったバイヤーさんがいらっしゃいましたらボクは全力で止めます。

インド商人にコテンパにやっつけられて腹を壊し薄暗いゲストハウスで寝て暮らし泣きながら帰国する羽目になりますゆえ(笑)

インドの環境は何をするにも非常に過酷です。

その中でバイヤーとして仕事をするというのは相当な覚悟と絶対にへこたれない強いメンタルを持ち合わせていないと無理です。

インドの仕入れで起こるトラブルについても書いています。

これからバイヤーとしてインドを目指す方は必読です(笑)



エスニック雑貨バイヤーになりたいあなたへ



インドのメインバザール

ウェルカムです!ボクは常に仲間を歓迎します。

特別な資格は必要なくパスポートひとつで誰でも出来るのがエスニック雑貨バイヤーという仕事だというのは前述した通り。

ただし10年後の生存率はかなり低いです。

仕入れても売れなければ続けたくても続けられません。

実店舗にしてもネットで売るにしてもバイヤーとしてとても大事なことがあります。

それは好きな物と売れる物は違うと言うこと。

自分の好きな物が売れるようになるのはある程度の年月が必要です。

エスニック雑貨屋として修羅場をくぐり抜けお店の看板に重みが増してからなのです。

お店としてもバイヤーとして自他共に認められる存在となり「あの人が仕入れた物なら間違いない!」と買い手のお客さんに信頼してもらい初めてプロのエスニック雑貨バイヤーとして一人前になります。

横ばかり気になって他所の店舗で売れてるものと同じ商品を仕入れる。

「物と金」しか見てないから誰よりも安く早く売る。

他のジャンルでも言えることだと思いますが昨今のエスニックファッションやエスニック雑貨をツマらなくしている最大の原因がここにあります。

つまり我々エスニック雑貨バイヤーが自分で自分の首を絞めていることに全く気付いていません。

ボクがまだバイヤーとして海を超える前。

エスニック雑貨屋は何が出てくるか分からないオモチャ箱でした。

どこのお店も個性的な品揃えでバイヤーでもある店主が話してくれる現地の様子に想像を膨らませながら買い物を楽しんだものです。

バイヤー仲間

先程10年後の生存率は極めて低いと書きましたが10年生き残ったとしても「安売りしか出来ない店」であれば「物とお金の交換しかしてこなかった証拠」なのでバイヤーとしては未熟と言わざるを得ません。

ただのルート営業的な仕入れ。子供の使いと大差ないのです。

これからエスニック雑貨バイヤーを目指すと言う物好きな方がいらっしゃいましたら是非タイでネパールでインドの路地裏で一杯やりながら情報交換しましょう!

他のバイヤーは知りませんがボクは聞かれたことは仕入先であろうと濁したりせず全て答えて来たばかりか手ほどきをして紹介さえして来ました。

そのお蔭でガネーシャ・サボサンダルのコピーが生まれたり恩を仇で返すような人間が居たことも事実です。

しかし裏を返せば「教えたところで真似は出来ない」と言うエスニック雑貨バイヤーとしてのプライドと自信があるからなのです。

最後にもう一度言わせて下さい。

エスニック雑貨バイヤーを目指すあなたへ。

ボクはいつでもウェルカムです!常に仲間を歓迎します!!



エスニック雑貨バイヤー必読の2冊



エスニック雑貨バイヤーの仕事について書かれた本はほとんどありません。

ご紹介する2冊は古い本ですがエスニック雑貨バイヤーとはどういう仕事なのかを知ることが出来る貴重な本です。

いつかは私もエスニック雑貨バイヤーになって海外で活躍したい!

そんな夢を持っている方は是非お読み下さい。

ボクも何度も何度も読み返した2冊をご紹介します。




アジア雑貨仕入旅/仲屋むげん堂


エスニック雑貨屋の偉大な先人。

ご存知「仲屋むげん堂」のバイヤーである「シマさん」と「ドカさん」そして「ムラサさん」の仕入れ旅にスポットを当てた良書です。

タイ・インド・香港・インドネシアなどの仕入れ旅について書かれています。

特に「インドの仕入れ旅」について触れている本はこの一冊以外ボクは知りません。

1990年に発行された本ですがインドの仕入れ旅は今でもこの本に書かれている様子とさほど変わっていません。

エスニック雑貨バイヤーとしての過酷な仕入れ旅の様子が分かる一冊です。




アジア雑貨屋さんの仕入れ術/やまだひろなが


こちらの本はタイの仕入れ旅にスポットを当てた一冊です。

タイはバイヤー初心者の登竜門的な国です。

バンコク以外にもチェンマイやタイ北部のゴールデントライアングルなどの仕入れの様子が分かります。

仕入先の住所なども書かれておりますが発行が1998年と古いのでその点については当てになりません。

タイの情報はインターネットでも沢山得ることは出来ますがエスニック雑貨バイヤーの視点で書かれた本はこの一冊だけでしょう。

タイはエスニック雑貨バイヤーとして一番最初に訪れる国。

読んでおくべき一冊だと思います。



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