うつわの向こう側 = 徳永遊心(とくながゆうしん)さん =

うつわの向こう側 = 徳永遊心(とくながゆうしん)さん =

徳永遊心(とくながゆうしん)さんの、季節の花々がモチーフになったうつわが届いています。

徳永さんは北国・北海道ご出身。北海道での生活は家の中にいることが多かったせいか、興味は常に外にあったとおっしゃいます。そんな徳永さんにとって金木犀や曼珠沙華などの植物は小説の中のもの。まるで季節への憧れを閉じ込めるかのように、自ずと絵付けのモチーフは四季を感じるものが多くなったようです。

今日はうつわの向こう側にある、徳永さんのお話。徳永さんのうつわに滲む人間らしさの理由がひとつ分かったような気がする、そんなエピソードです。



■  「つくること」と「日本の伝統文化への憧れ」 


北海道で育ち、札幌のデザイン学校に通っていた徳永さん。「つくること」と「日本の伝統文化への憧れ」に駆り立てられて、大胆にも当時百貨店などで行っていた伝統工芸の催事をまわっては、出店している職人さんに片っ端から弟子入りを志願したこともあるんだと朗らかに笑います。


うつわの向こう側 = 徳永遊心(とくながゆうしん)さん =


その後は京都へ移り住み、焼き物の学校へ。変わらず「どうしてもこの人の元で学びたい」と思える師を探す毎日の中、たまたま絵具を買いに訪れた金沢で出会ったのが、アンジェでも人気の窯元・九谷青窯を主宰されている秦(はた)さんでした。

九谷青窯を主宰されている秦さんは、ご自身ももともと東京でサラリーマンをされていたせいか自由な発想をお持ちの方。徳永さんはあった瞬間「この人だ!」と思ったものの秦さんにはお断わりされ、その後4-5回粘り強く通って、ようやく九谷青窯に入れたのだそうです。

徳永さん

「一般的な窯元では親方のデザインしたものをつくるだけ。若手は段階を踏んで力をつけられるけど、窯や親方の作風の色がついてしまうこともあるんです。その点、九谷青窯では技術が未熟ながらも自分の商品を作らせてもらえる。器を使う側の反応やクレームから学ぶこともできる。しばらくは寝る間も惜しんで夢中で仕事をし、最近はやっと少しは秦さんに一人前として認められるようになったかな。」



うつわの向こう側 = 徳永遊心(とくながゆうしん)さん =


様々な「つくること」に携わって、ようやく信頼できる師のもとでたどり着いた徳永さんのうつわ作り。

徳永さん

「実は舞台女優を目指していたこともあるんですよ。学校の卒業制作は木工職人に憧れて家具を作りましたが、おっちょこちょいで生傷絶えず諦めました。吹きガラスにも興味はあったんだけれど、タラコ唇だから向いていないって職人さんに言われちゃったんです〜」


そうケタケタと笑う徳永さん。
たくさんの経験とそのざっくばらんなお人柄が映りこむ、徳永さんの四季のうつわです。



■  徳永さんの新しいうつわが届いています 


うつわの向こう側 = 徳永遊心(とくながゆうしん)さん =


食べることを大切にしている方と同じ気持ちを共有したいという、徳永遊心さんの新しいうつわが届いています。

「身の丈の、手におえる範囲のものを、手におえる範囲の人と共有したい。」

移り変わりの激しい世の中で大量の商品が流行り廃り棄てられていくということに、恐怖のようなものを時々感じるという徳永さん。そんな徳永さんが目指すものは、奇抜なことでも作家性を出すことでもなく、得意料理を盛り付けるのに「あのお皿を使いたい」と思ってもらえるものを作ること。そんな「ごくごく普通のこと」が徳永さんがうつわの先に目指すものです。


ちょっぴりお茶目な徳永さんが夢見た四季の彩りをたたえる片口とお茶碗。これからの季節に良く似合う、明るく人間らしい温もりのあるうつわです。

手で作るものだから、数は少なめ。気になる方はお早めにどうぞ。




= 文:宮城 写真:中島・平山・宮城 =




【ご紹介した徳永遊心さんのうつわはこちら】

色絵椿と色絵菊の使いやすい片口です。
九谷青窯 徳永遊心 片口3.5寸 深鉢











色絵みかんと色絵野原がありますよ。
九谷青窯 徳永遊心 飯椀









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