健康タイム・対談38-2

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 このコーナーでは、エヌ・ピュア社長・鳴海周平が各界を代表する人生の達人との対談を通して、「こころとからだの健幸」に役立つ様々な情報をご紹介しています。毎日の健幸にお役立ていただけましたら幸いです。

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Vol.38 ゲスト:坂東 元(げん) さん ~前編~ 2

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こころとからだの健康タイム

鳴海 獣医に任せておけなくて、自らが獣医になってしまったわけですね。
インコを診てもらった獣医さんのように、他人事として事にあたっているとなかなか本当の解決方法を見いだせないのかもしれません。坂東園長は小さい頃から虫の立場になったり、鳥の立場になったりして、まるで自分のことのように生き物に接してきたからこそ、豊かな感性が磨かれていったのでしょうね。

坂東 それぞれの生き物の立場になって考えると、いろいろなことが見えてきます。
例えば「安楽死」についてですが「安楽死はしない」という獣医は案外多いんですね。「いのちは大切だから」という理由で、死をオブラートにくるんでしまうわけです。でも自然界ではどうでしょうか?ケガをしたり病気をしている生き物は、すぐに他の動物に食べられてしまいます。ハンディを負ったらすぐに間引かれるという摂理の中で、それ以上苦しむことなく自然界の一部として還っていく。もちろん治る見込みのある場合は別ですが、手の施しようがない場合はライオンなどに代わって厳粛な自然界のルールに従うことも必要だと思うんですね。これは勉強してそう思ったのではなく、小さい頃からたくさんの生き物を飼ってきた経験から確信したことです。

鳴海 確かに野生の動物たちは「弱肉強食」という自然界の摂理の中で、皆それぞれギリギリのところで生きているんですよね。「死=可愛そうなこと」ではなくて「全体の一部として自然界に還る」という観かたの方が自然なことなのかもしれません。

坂東 僕たちヒトも生態系の一部だと考えると、野生動物という異種の存在が本当に愛おしく思えてきます。
 僕はどうして獣医になったんだろう、ってあらためて考えると「自分とは違う生き方、感じ方をする生き物の存在を知って、自分自身もまた生態系の一部であることを知るため」じゃないかと思うんですね。
 動物園には、自分とは違う生き方、感じ方をする生き物がたくさんいて、いつも彼らの凄さに感動を覚えます。

鳴海 「旭山動物園の動物たちはどうしてこんなにいきいきと動くんだろう?」ということがよく話題になりますが、これはきっと坂東園長の「異種の存在を尊いと思う気持ち」が施設の作り方に表れているからなのでしょうね。

旭山動物園へ勤務

鳴海 坂東園長が旭山動物園に勤務されたのは1986年とお伺いしました。当時は閉園の噂も出ていたほど、お客さんの少ない状況だったとか。

坂東 ちょうど獣医に1名空席がでた、ということでお誘いを受けました。おっしゃるように閉園の噂も出ていたほどの動物園でしたが、僕にとっては動物と向き合って生きていけるならどんな仕事でもよかったんです(笑)。
 勤務初日、飼育係の人たちがいる部屋に行ったら皆無言でブスっとしているんですよ。僕は10年ぶりの新人だったらしく、動物たちより珍しく見えたのかもしれません(笑)。
 飼育係になろうという人は、僕と同じで人間嫌いの人が多い。職人気質の堅物なんです。でも根はとても純粋でいい人ばかり(笑)。
 いちばん驚いたのは野生動物たちの凄さでしたね。ライオンやオオカミが手の届く距離にいる!その気配だけで圧倒されてしまうんです。それぞれが醸し出す独自の迫力、魅力にはすっかりやられてしまいました。