トップページ

 > 知れば知るほど奥深い 磧本ソムリエのワイン講座 > LESSON#001 ぶどう畑の1年

001 ぶどう畑の1年
ぶどう畑がどのような1年を過ごすかは、ワイン造りが始まった時代から基本的にはそれほど大きくは変わっていません。樹が育ち、実がなり、収穫して、一般的なワインに仕上げるまでにどんな仕事があり、どんな四季を送るのか、今回はお話しましょう。
1時間目
 冬が終わって気温がだんだん上がってくると、ぶどうの根が休眠から覚めて、土の中の水分を吸い上げ始めます。そこで肥料を撒いたり、耕したり、土の手入れをして、土の中の養分が他に行き渡らないように、除草も行います。4月(南半球10月)になるとぶどうの芽が出始め、カビや病気に気をつけながら、芽かき(不要な新芽を間引いて、ぶどうの成長を促すこと)をし、除草も続けます。5月(南半球11月)になると葉が伸びて、つぼみもふくらんでくるんですよ。
2時間目
 枝が伸びてくるので、針金で結びます(詳しくは5時間目に)。6月(南半球12月)になると花が咲き(発芽から約70日後)、受粉も始まります。本格的な夏がくると、剪定の時期。枝が伸びすぎると実に養分が不足するので、枝の先端を切り落とします。また、葉も多すぎると日照を妨げるので、余分な葉も切ります。8月(南半球2月)になると実が色付いてきて、成熟を迎えます。夏から収穫が終わるまではあまり雨が降らない方が、ぶどうにはありがたいんですよ。
3時間目
 開花から約100日経って、9月(南半球3月)になると、いよいよ収穫期。白ぶどうをはじめ早生種から始まり、晩生種の収穫が終わるのが10月上旬(南半球4月上旬)までです。実が完全に成熟するまで待たないといけませんが、秋雨のシーズンに入る前に収穫を済ませないといけないので、頃合いを見極めるのが重要になってきます。ボルドーでは、早熟のメルローは雨を免れても、数日後に収穫するカベルネ・ソーヴィニヨンは雨の打撃を受けるなんてこともあります。
4時間目
 収穫が終わりワインの仕込みも済むと、やってくるのは静かな冬。寒さや霜を防ぐため、樹の根本に土寄せをして、ぶどうは休眠期に入ります。1月(南半球7月)になると、また剪定。樹と畑全体のバランスを考えて枝を切り込み、養分が充分に行き渡るようにします。寒冷地では厳しい寒さで土壌が固くならないように、夜間にストーブを置くこともあるんですよ。また、水をまいて樹を凍らせることにより、氷点下にさらされないように工夫をする産地もあります。
5時間目
 湿度の多い日本では、土から実までの高さがある「ぶどう棚」がよく見られますが、世界のワイン産地ではいろいろな仕立て方があります。ボルドーやブルゴーニュで主流なのは、「垣根仕立て」。ゆるやかな傾斜地や平地に向いています。スペインなどの暑く乾燥した地域では「株仕立て」が行われ、成長を抑える必要のない品種に合っています。雨の多い地域で一般的なのは、「棒仕立て」。日照をより受けやすいように、樹を離して植えられています。