気楽なふとん屋さんのポーランド・ハンガリー出張記

5月21日 (1日目)

家を出てから約24時間後、関空からイギリスヒースロー空港を経由して、やっとワルシャワに到着した。
共産支配の終焉から約10年あまり、一昨年からやっとビザがいらなくなったとのこと。
今回の旅の目的は、羽毛布団の中身に使用する原毛を仕入れるためにはるか東ヨーロッパくんだりまでやってきたのである。

では、なぜ東ヨーロッパがというと良い羽毛がとれる産地の条件として、

  1. 一年を通して気候が寒冷である、又は非常に寒暖の差が激しい場所にあること
     (ダウンは鳥にとって肌着と同じなのでこのような地域が良いダウンがとれる)
  2. 湖沼地が多く自然が豊かであること
     (ダウンは自然が産み出した最高の布団の中素材。未だ、人間は羽毛を超える布団の中素材は  開発できていない)

これらの条件を満たしているのが今回のポーランドハンガリーに代表される
東ヨーロッパとカナダ、中国である。
そして、一般的に東ヨーロッパのガチョウは中国のガチョウと品種が異なり、中国のガチョウが2〜2.5kgまでしか育たないのに比べ、東欧のガチョウは7kg程度まで育ち、体の大きさにともなって大きく嵩高の出る良質なダウンがとれるのである。

今回のワルシャワでの宿泊はマリオットホテル。なかなか良いホテルで中に高級カジノもあわせ持つ、五つ星ホテルであるが宿泊代は1泊200ドルと非常に高い。
初日は夜遅く到着したのでそのまま就寝。

5月22日 (2日目)

翌日は、クラクフに行くため5時30分にホテルを出発。
ロトポーランド航空に乗ってクラクフまで行くわけだが、ほんと冗談抜きでバスに羽根をつけた程度の飛行機で非常に心配。それでも約1時間でクラクフに到着。
クラクフでは現地商社スタッフのモニカさんと原毛商のT氏が迎えてくれる。
クラクフからまた車で30分走り、精毛工場を見学。


入荷した粗毛


ミキシングマシーンで攪拌


洗浄機


ソーティングマシーン(ダウン比率をわけている)


洗いあがり原毛

その後スロバキア国境近くまで約2時間車を走らせ農場にやっと到着。
ポーランドではハンガリーに比較すると非常に小規模農場が多く、平均一農場600羽程度のガチョウを飼育している。
しかし、この農場は7,000羽のマザーグースと8,000羽の食肉用グースを飼育するポーランドでも最大級の農場で、2000年のファーマーオブザイヤーを獲得している。マザーグースとしてはエリートグースと呼ばれる厳選された系統しか飼育することができず、国家もマザーグースの数を厳密に管理しているとのこと。広大な土地で、のびのびと飼育されるガチョウ達は主に食肉、卵、羽毛の3つが商品となる。(最近は足が中華料理の食材として輸出されているとのこと)
私の目的は、まさにその羽毛である。通常羽毛は大きくマザーグースとそれ以外の羽毛に分かれる。それ以外というのは食肉用で通常は12週間程度で肉として売られ、その副産物として羽毛が採られるのでマザーグースに比べ、羽軸も弱く、未熟なダウンも多い。
これに比べマザーグースは最高で4年間飼育され、1年に通常3〜5回羽毛を採取される。


広々とした場所で飼われています


ガチョウを1日3回水浴びさせる


ガチョウも水遊びが大好き


ライブドハンドブラッキング


生きたガチョウからダウンを
こわさないよう丁寧に手摘みします

農場から車で2時間半車を走らせてクラクフ市内に到着。18時45分の飛行機まで約1時間半ほど時間があったのでクラクフ市内を視察する。
クラクフはポーランド王国全盛時代の首都でワルシャワがドイツ軍に徹底的に破壊されたのに比べ、奇跡的に戦災を逃れ、ユネスコの世界遺産にも指定されている古都である。

5月23日 (3日目)

午前中は商社のオフィスに行き、ポーランドについての統計資料の説明を受けたり、情勢についての質問をする。
昼からは市内の大型家具店イケヤを視察。17時30分の飛行機まで2時間ほど時間があったのでワルシャワ旧市内を観光。
第2次世界大戦当時の1944年8月1日ドイツ軍に対し、ワルシャワ市民が一斉に蜂起したが20万人の犠牲を出し、市街の8割以上が灰燼に帰した。しかし、戦後ワルシャワ市民の首都復興にかける情熱は壁のひび一本に至るまで正確に街を復元したのである。


ワルシャワ旧市内


中央広場


バルバガン

19時45分ブダベスト到着

5月24日 (4日目)

ブダベストから南方へ車で2時間以上走り、スローターハウスに着く、スローターハウスとは屠殺場のことでガチョウや七面鳥を絞めて加工まで行う。
工場の中は近代化された一貫生産の流れ作業工場でガチョウや七面鳥が機械部品のように流れている。屠殺部分を行っているのは罪人である。
次にストックハウスへ、ストックハウスとは孵卵農場のこと、ハンガリーでは分業が行われており、各農場から卵を集め、それをコンピューター管理の孵卵機に入れて各一的にしかもロスを極力抑えて孵卵するのである。


農場に入る時、手を洗い
クツ底のケアをすることがルール


ストックルームの見学は
不織布のコートをきるのもきまり


ストックルーム


中身の卵


かわいいヒナ

その後、精毛工場を見学して南部の田舎に宿泊。

5月25日 (5日目)

農場にてライブドハンドプラッキングを見学。ここではマザーグースではなく生後12週目のレギュラーグース(マザーグースではないという意味)のファーストライブドハンドプラッキングを見学。この農場にも7,000羽のグースを飼育している。

この後、セゲド郊外のアントユリアズファームに向かう。セゲドはハンガリー第2の大河ティサ川のほとりにある南部最大の都市にあり、1000年の歴史を持つ交易拠点でもある。このセゲドから車で1時間弱の所にアントユリアズファームはある。農場のオーナーはユリアおばさん。気さくで明るい人柄はガチョウと同様ハンガリーの大平原プスタが育てた素晴らしい人格なのだろう。
ここでは2万羽以上のガチョウがプスタの大平原にあるティサ川が作り出した広大な湖沼地帯でのびのびと生活している。一方、ガチョウがにつけたマスクの色によりオスとメスを管理するのはハンガリーのガチョウに対する細やかな管理体制も伺わせる(ガチョウは一夫多妻、1羽のオスに3羽のメスがつき従う)

広大な土地と広大な湿地帯でのびのびと暮らすガチョウ達


筆者近影


青と赤のマスクをつけている

最後にもう一件精毛工場を見学後、ブダベストへ帰る。

5月26日 (6日目)

商社オフィスで最後の総括と商談及び要望を伝える。時間がすこしあったのでブダベスト市内を2時間程視察。


王宮


教会


国会議事堂

5月27日 (7日目)

ヒースロー空港を経由して日本へ
12時30分 ブダベスト発  14時 ロンドン着  18時55分 ロンドン発

5月28日 (8日目)

14時55分 関空着