作業効率のアップや仕事の創造性の向上のススメ

3月号 失敗しない! 自分でできるオフィスづくり − 第5回 パーティション −

パーティションの話からの続き)

吾郷 そうですね、オフィスビルなんかのテナントで出火しちゃって広がったりしたら大変なことになりますもんね。

杉本 最低限、迷惑をかけないっていうのと、自分が困らないように。自己防衛ができていればいいのかなと。

吾郷 そうですね。あと、自分困らないようにっていうのだと、転倒防止。

杉本 そう、家具の転倒防止も、依頼を受けて転倒防止をしにいくことというのは、すごくあるんですね。結局一番考えてほしいのは、死なないことなんですよ。防災という考えでは。

吾郷 死なないこと?

杉本 転倒させないわけじゃないんですよ。死なない。死なない工夫なんですよ。どうやったら死なないか。逆に言ったら、どうなったら死んじゃうのっていうことを考えられてるかどうかなんです。
 そんな書庫がガンッて倒れてきたら、下敷きになったら死にますよね。何も入っていない書庫だったら死なないです。大体書類が入っていると重たいんですよ。
それに挟まれたら逃げられなくなって死ぬだろうな。だから転倒させないっていうことなんですよね。
 じゃあ、どうやったら転倒しないかっていうことで、壁に打ちつけてあればいい、と。でも、耐震基準的な部分で、チェックしに来たときに通ればいいやみたいな耐震固定を目的とするんだったら、意味がないわけですね。

 ボードに打ったってビスはきかないわけで、せめてそのボード用のビスとか、アンカーを入れるとか、あとは壁面でいっても柱があるわけですよ。だから壁の中の柱なり、壁もボードの壁もあれば、コンクリートの壁もあって、なるべくコンクリートのところに打つ。ボードの壁だったら、その下地があるところに打つ。それもないんであれば、天井と突っ張る。よく古い住居とかだと、いや、これ危ないなと、家自体が斜めになりそうな構造とかだと危ないなと思うんですけれど。

吾郷 なるほど。

杉本 たとえば、非常口の前に大体あったりするじゃないですか、書庫が。それが倒れたら(非常口が)開かないよねっていう視点に立ってほしいですよね。
避難訓練とかもやればいいとか、何かやれって言われるからやるんじゃなくて、いざってときに自分たちどうする?っていうことさえ考えることができていればそれでいいと思うんですよね。
 今、地震起こったらどうする?とりあえず机の下にもぐれるよね。いやいや、段ボールいっぱい!もぐれない!とか。

吾郷 怖い怖い!

杉本 こういう危険予知の話をちょっとでも、1年に1回でも半年に1回でもいいので、やっとければいいですよね。あとは、そのためにどうするっていう対策って、別にプロに頼まなくても、全部、ホームセンターでできる範囲であるので、その範囲でやる。

吾郷 やれることからやればいいんですね。あと、4年前の3月11日の地震のとき、あれで大きく取り上げられたのは、帰宅難民。

杉本 多かったですよね。帰宅することも当然防災の一環として、入ってくるんですよ。
帰宅困難者っていうのはどういう状況で一番多いかっていうと、やっぱり職場と家が遠いっていうこと。そうすると、田舎よりも大都市圏が一番帰宅困難者が出る。
その時に必要なのは、職場でも生き延びる準備ってこと。今って、大体3日あれば物資が届くって言われているので、逆にいうと、3日生き延びたらもう余裕なんですよ。
まず、その発災した瞬間に、生き延びましたと。物資が届くまで3日あります。その3日間を耐えしのげるかだけなんですけど、そのために会社が準備しているもの、何を準備してあるか、が大事なんですよね。最低限は水ですね。

吾郷 水。

杉本 あとは、情報をどうとるか。じゃ、ラジオっているよね、とか。今僕らの防災コミュニティでは、そういうのを何か気軽に持ち歩けるといいよねっていうのをやってるんですよね。僕のこれも、ラジオと笛、ライトもついて、携帯の充電もできるやつ。手動でグルグル回せば充電できるし、入れている電池も充電式だから、例えばここで充電しておいてほかのやつに入れるって使い方もできる。

吾郷 それは便利ですね。

杉本 そう、便利でしょ。でも、何が大事かっていう極論を言うと、自分たちがそういう意識があるかないかだと思う。

吾郷 意識。

杉本 会社でそういう話ができているだけでいいんです。たまにでも1年に1回でもいいと思うし、3月11日を機に話すとか。
あとバーベキューセットが置いてあるっていうのも、立派な防災なんです。だってチャッカマンさえあれば、火を自分で起こして、暖をとることができるし。そういうものがあるだけでも全然違うんですよ。ぼくは餅つきだ何だって言っているけど、釜があるだけで、あれで炊飯だってできるし。お米ふかして餅がつけるんですよ。食えるんですよ。それをお米をふかすためにやっていた蒸気を入れてたその釜のお湯でみそ汁だってできるし。 炊き出しができるとか、何となくそういうアウトドアのを、楽しくやっていることで、いざっていうときに役に立つんです。

吾郷 バーベキューが避難訓練みたいですね。

杉本 そう。バーベキューは避難訓練!楽しんで避難訓練やればいいんですよ。
あとはですね、これはもう防災の格言じゃないけど,セミナーとかでも絶対言われる言葉で、「よき避難者たれ」っていう言葉があるんです。自分がいつか避難、要は被災者になる。そのときにリーダーシップ張ってまとめられる人になれ…

吾郷 リーダーシップ

杉本 という話じゃなくて

吾郷 じゃないんですね(笑)

杉本 それって難しいんですよ。そんな人なんてごくわずか。要はクレーマーにならない。みんな自分のことでいっぱいいっぱいだから、目も当てられないことがいっぱい起こるわけですよ、被災すると。人を殴ってでも物はほしい。盗んででも生き延びなきゃいけないって、やっぱり生死がかかると、人って、考えつかないようなことが起こるわけですよ。
そのときにやっぱり絶対に大事なのは、その「よき避難者たれ」っていうことで、やっぱり今回もマスコミとかでもすごく取り上げられたけど、日本人は列に並んでみそ汁を待った、焚き出しを待っていた、すばらしい。でたたえられたけど、それって、3日より後の話ですね。ある程度余裕が出てきてからの話です。
そこのやっぱりサバイバルな3日間は、当たり前のように、ヤマザキパンの車がとまっていたら、みんなで強奪して、あけて中のものを出して、毛布はすっぽらかして、とにかく食い物だと言ってやったりとか、要は、救助に来たような物資を届けに来た車からも、とにかく食べ物だといって、みんなで争い合ったっていうことがあるわけです。
やっぱりそういうふうになったときに、自分がよき避難者であるためには、やっぱりある程度余裕が必要なんですね。

吾郷 それもあるから、やっぱり3日間の食料なり何なりは。

杉本 そう。ある程度そこに自分に余裕があれば、やっぱり受け入れられる人は受け入れてあげれるし。
ただね、そのときに食料が例えば10人分しかないよ、助けてって来た人が20人いるよ、30人いるよ。誰を助けますかっていう話になります。
そうすると、防災としてはもう一個先の話になって、普段から「コミュニティを大事にする」ということですね。知っている人を助けるんですよ。知らない人は助けないんですよ。 だから、リアルな話でいうと、流されていく人がいっぱいいたわけですよ、3.11のときはね。目の前で溺れている人がいるんですよ。あっちこっちから、助けてっていう声が聞こえるわけですよ。その人助けてたら自分も死ぬわけです。だから、ごめんごめん、無理無理って言って逃げるわけです。
その状況でパッて見た人が自分の彼女だったらどうしますか。自分の子供だったらどうしますか。助けてって言っているのが。間違いなく助けますよね。
自分の彼女だから。もしくは友達だったら助けますよね。ここが究極の防災で、知り合いだったら助けて、知り合いじゃなかったら助けないですよね。
だからこそコミュニティをつくって、自分っていうものを知ってもらうことが大事なんです。101には杉本いう人間が住んでて、杉本さんのところにはお子さんが二人いる。

吾郷 あの餅つきの人でしょう、みたいに。

杉本 と知っているだけで、助けてくれるんですよ、周りの人が。ここが僕の中での究極の防災学。自分が誰かを助けられる人になるっていうことよりも、自分の大事な人を守ってくれる人をふやすっていう姿勢に立って、多くの人に知ってもらう。そうすると逆に自分も知るから、多くの人を助けたいって思う
これこそ究極の防災。都市にやっぱり欠けているのはそこ。田舎でもだんだん廃れてはきているけどね。

吾郷 そういう点でも、やっぱり地域での商売も大事ですよね。

杉本 うん。僕は自分の従業員を守りたいし、子どもを家族を守りたいって思ったときに、ここで何かあったら助けてよっていう、だから、ここでこんなことやっているよ、っていうのを知らせていかんといかんのですよね。

吾郷 ありがとうございます。あと最後、おいしいカンパンの食べ方教えてください。

杉本 カンパンはね、一度でやってみるといいです。カンパンって非常時はいいんですけど、賞味期限があるから食べないといけないんですよね。一回防災のイベントで、カンパンのほかの食べ方っていうのをやったときに、僕がやったのは、カンパンを粉々にして、えーと、何混ぜたんだっけ?あ、卵と牛乳と混ぜて焼いたんですよ。ハンバーグのパン粉にするっていう発想。ハンバーグのようにしてみて、パンで挟んだんです。

吾郷 カンパンでハンバーガーですか!何かそのまま食べるといかにもカンパンで、味気はないですもんね。

杉本 クラッカーみたいにチーズ載っけたりとかね。
あと、カンパン以外にも備蓄しておけばいいのは、カンパンだけだと味気ないので、例えば普通の缶詰ね。
サバ缶とか、焼きとりとか。缶詰を普通に備蓄しておくと、定期的に食べなきゃいけないので、そういうのを何か非常食を定期的に食べようって、全然あり。

吾郷 いいな、もう会社の飲み会とかでたまにやりゃあいいんだ、そうやって。

杉本 そうそう、カップラーメンもそう。カップラーメン、定期的に、何か簡単に食べたいからカップラーメンかもしれないけど、めっちゃ非常食じゃないですか、カップラーメンって。会社にドーンと置いておきゃいいんですよ。
防災っていうのも、なんかそういう感覚で何か楽しめればいいな、っていう感じですね。そのままきっかけでちょっと避難経路について話をする、とかね。
そういうのが、いざという時に役立つんで。なんとなく、意識を持っていて欲しいですね。

吾郷 ありがとうございました!

次回予告「情報機器、配線」

次回は家具と並んで重要なポイント、情報機器や配線についてのコツをご説明します!