←前へ  次へ→

浅野屋丁稚塾 番頭への道
「その77 いわれに関する一考察」

丁度これからが七五三 年が明けると成人式


呉服屋は人生の節目節目に立ち合わせていただくことが出来る職業でもあります。

七五三って、何故するの?厄年って?
昔からの慣わしだから・・・と、簡単に済ましては居ませんか?

黒の紋付は19歳の厄年に作ると良いですよ!
七五三は成長祈願だから、また、思い出になりますから・・・
やっぱり成人式は振袖でしょ!
呉服屋は言葉巧みにお客様にオススメします。

でも、ここで少し考えて下さい。
お客様にこう質問されたらどう答えますか?

七五三でお宮参りに行くのは何故?写真だけ撮っておけば良いでしょ!
何故、黒紋付は19の厄に?
成人式も1回だけだから、振袖もレンタルで充分じゃないの?

これ実際に営業していると、よく尋ねられます。
細かな約束事、決まりは諸説有るでしょうし、その地方の特性によっても 異なってくるとは思うのですが・・・

私は、こういった風習には何かいわれと言うか、すべての人が共感する 或る想いがあると考えています。

私的な見解は以下の通りです。


第1章 七五三の巻

昔は子供が生まれても病気や飢饉で無事成長して大人になれる確率が 低かったんでしょうね。「シャボン玉飛んだ・・・♪」の歌も幼子を 亡くした親の想いが詠われているとの話を聞いたことがあります。

無事に育ってくれることが稀な状況では、3歳・5歳・7歳と健やかに 育ってくれることが本当に嬉しいことだったんだと思います。

その喜びを家族で分かち合い、感謝をする意味合いで神社にお参り するようになったのが、そのいわれではないかと考えます。
そこに、晴れ着としての着物が介在し、今の原型になったんじゃないか!

ですから、お参りしたり、祝いの宴を開いたりするのが本筋で、 着物着て、写真だけ撮ってお終いってのは本末転倒になっちゃいますよね。


第2章 黒紋付の巻

黒紋付きの着物は現代では喪服として着用されることが多くなりましたが、 本来は式服としてお祝いにも着られる着物になります。

ですが、呉服屋の営業上は喪服セットとして着物・帯・長襦袢を夏物冬物 で、拵えてもらうようオススメする戦略商品なんですネ。

ここから、営業トークです。

キチンとした喪服はやはり着物です。お身内でご不幸が有った時には、 黒紋付の着物をお召しいただくのが良いです。

でも、紋を入れ仕立をしますから、1週間や10日では作れません。
いざという時の為に、必要となる前に予めご用意しておかれるのが肝心です。
「おばあちゃんが入院したから、急いで喪服を作らなきゃ!」なんて とても出来ないでしょ!
お嬢ちゃんの黒紋付は親の責任として作って置いてあげてくださいね。

・・・でいつ作るのが良いのか?って
それが、19歳の厄の年なんですよ。

〔ここで、黒紋付の薀蓄がやっとスタートします。〕

黒紋付はその家の家紋が入った着物で、家紋を付ける つまり紋付を 身に纏うと言うのは一人前の家族として認めると言うことになります。
その年齢になったと言うことでも有るし、自覚と責任を要求されることになります。

昔からかぞえの19歳は身体つき・精神面でも子供から大人になる過渡期に なり、厄を迎える頃が丁度よい頃合となる訳です。


第3章 振袖の巻

振袖は成人式の為だけのコスチュームじゃありません。
女性の第一礼装と言われる着物はミセスの場合は留袖、そして未婚女性の 場合は振袖となります。

大人になったら、キチンとした身なりで臨まなくてはならない場面が 出来てきます。
その時の為に、ご用意しておかれては如何ですか?
ご用意しておかれれば、勿論、成人式の時には最もふさわしい礼装として お召しいただくことが出来ます。

値段の高い安いではなく、お子さんの為に大人としての拵えをしておいて あげるのが、親としての勤めでもあり、悦びになるでしょ!

そして、娘さんもいづれ親になった時に、初めて親の有り難味を痛感し、 一層感謝する気持ちが大きくなるものですよね。


第3章は殆どセールストークになってしまいましたが、要はそこなんです!
呉服屋もお客様にパッピーな心をお伝えする商売でもあるんです。
そこをしっかり押さえていれば、素敵な職業ですよ。


頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!


-戻る-