浅野屋丁稚塾 番頭への道 「その9 チョッと怖い黒紋付の話」
黒の紋付の着物ですが、近ごろは喪服としてお召しいただくケースが多い
ようです。(特に女性の場合)
男物は羽二重の生地に紋を染め抜き黒染めしますし、女物は東ではやはり
羽二重、西では一越の縮緬に染めをすることが多いようです。
基本的には柄のない着物になりますので、営業時の話のネタは専ら黒染め
の方に偏ってきます。
「黒紋付は一生ものですから、いい生地・言い染めの物を・・・」とオス
スメすることになります。「折角なら黒も真っ黒の物がいいですよネ!」
ッてな具合に・・・
今でもあるのですが、黒の染料の下に染める種類で[紅下][藍下][草木]等
の種類があります。「でも、真っ黒が やはり・・・」となります。
ココで問題なのは、下染めの上に施す黒染めなんです。真っ黒に仕上げる
ためには光を反射させずに吸収させることが必要となります。つまり染め
上がりの生地の表面に凄く細かな凸凹を作りテカラないように仕上げます。
しかしながら、そうすればそうするほど今度はスレに弱くなってしまうん
です。
腰紐や伊達締め・帯によって擦れた生地の箇所がが白くなってしまいます。
周りが真っ黒だから余計目立ってしまうことになります。
事実、黒染め屋さんは染めの過程でスレを出さない様に細心の注意を払い
ます。呉服屋も仕立ての際には仕立て屋さんにアイロンなどでスレを作ら
ぬよう指示をしますし、万が一スレ・テカリが出来てしまった場合は直し
に出します。
喪服は頻繁に着ることがないのですし、お買上げ頂いてからかなり年数が
経ってからお召しいただくケースが多いので、商いの時に説明しておいて
も、お客様はもう忘れてしまっておられ「これ、先日着たら、こんなんに
なってしまったわヨ!難物だったんじゃないの!」とクレームになってし
まうこともあります。
勿論、シミ抜き屋さんで直して貰えるのですが、クレームになってしまう
とその費用をお客様に請求することが出来なくなります。
ですから、すべて真っ黒が一番いいとは限らないことを知っておかねばな
りません。販売時もそうですが、クレームを未然に防ぐにはしっかりとし
た知識とケアーが大切になります。
と言うことで、「綺麗なバラには 刺があるように、真っ黒喪服はスレに
は 弱い!」
頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!
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