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2008/12


 いよいよ一年の締めくくり。街はイルミネーションで飾られ、何かとお楽しみが多くなるこの頃は、心浮き立つ時分でもあります。そんな気分に似合う色は?と思いを馳せると、ビビッドなカラーがいいように思います。カナリヤ色はカナリヤイエローとも呼ばれるくっきりと綺麗な黄色で、サッカーブラジル代表の躍動感あふれるチームカラーとしても有名です。
 さて、カナリヤ色は外来語が色名になった最初の色、という説もあるほど、古くから日本人の感性に馴染んでいて、当て字としては金糸雀色とも書かれます。その名が表す通り、雀のように小さなカナリヤが由来ですが、イエローの羽毛を持つのは、実は飼養種と呼ばれるもので、野生種はうす茶色に覆われた地味な姿とか。人間の愛玩鳥として改良されて、カナリヤイエローが誕生したようです。
 ちなみにカナリヤといえば、さえずりの美しさも人気です。人は昔からカナリヤを上手に歌わせようと、いろいろな工夫をしてきました。でもカナリヤはせっかく覚えても、忘れてしまうのも得意とか。そういえば西条八十が作詞した童謡のなかに “歌を忘れたカナリヤは…”というのがありますが、きっとその特長をとらえていたのでしょう。そもそも彼らが歌をさえずるのは、恋人を獲得するため。恋が実ったら忘れるというのもあっけらかんとした明るい生き方だと思いませんか。私たちも心をリセットして、清々しく新年を迎えましょう!


  


浅野屋呉服店では色についてより正確にイメージをお伝えし、また、お客様の思いにより近い色の感覚を共有させていただくために、小学館刊「色の手帖」第1版第22刷を拠り所としています。
今回のカナリヤ色の色味としては、同書のP105をご参照ください。


(エッセイ・羽渕千恵/イラストレーション・谷口土史子)



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