代表的なアレルギー皮膚炎(犬や猫に多く認められるアレルギー性皮膚炎)は、皮膚疾患��・��でお話しさせて頂いた、食物およびノミによるアレルギー性皮膚炎があげられると思います。
今回は、稀ではあるものの注意しなくてはならないアレルギー性皮膚炎とされている、
A:アレルギー性接触性皮膚炎
B:薬物アレルギー
上記の疾患を簡単にお話しさせていただきたいと思っています。




アレルギー性接触性皮膚炎は、�厳寝疉卮娠�により発症すると言われています。
さまざまな程度の痒みで斑状や丘疹性の痒みを伴う皮膚炎を起こすものとされます。
またこの疾患は接触する物質をアレルゲンと認識し、感作成立することにより発症するもので、感作期間はさまざまで犬や猫の感受性を基に、
・接触頻度やその期間
・原因物質の抗原性
・原因物質の濃度
などにより数週間から数年をかけて発症のこともあるとされています。　


アレルゲンと認識された場合、それらの物質を触れる(接触する)ことにより症状が発現することになります。
症状としては、
一般的に毛の少ないところに発現することが多く、腹部や肢あるいは睾丸・陰部や口唇とされています。
また以前にお話しさせて頂いた、外耳炎や耳介炎も二次的に発現する場合が多く存在し全身に波及することも知られています。


アレルゲンをあげるとすれば教科書的には
・シャンプー
・プラスチック
・ステンレス
・ナイロン
・洗剤
・ゴム
・ガラス
・接着剤
・ペンキ
・ワックス
・染料
・モルタル
・草木
・花粉
・その他
上記のようにさまざまな物質が示唆されています。


おわかりだとは思いますが、この接触性皮膚炎という疾患における唯一の治療法はそれらのアレルゲンとなった物質を回避する事にあります。
ただし、このアレルゲンを特定することは非常に難しく、パッチテストや血液によるアレルギー検査などの方法があるにせよ、親御さんの多大なるご協力と努力が必要になる事と思っています。
アレルギー疾患全般に言えることですが、愛犬愛猫にとって獣医師より親御さんの存在、注意深い観察の方が大事だと思っています。
獣医師はアレルゲンを回避することが不可能な場合を除き、必要がないのではないかと感じる場面も少なくはないように思っています。

最初にお話しさせて頂いたように、
アレルギー性接触性皮膚炎は、教科書的には稀な疾患と言われていますが、私の中ではそのようには思っていません。
一例をあげれば
常に顔を床やじゅうたんなどにこすりつけ、最初は遊んでいるのかと思っていたが、口角(唇の辺縁)が腫れてきた。あるいはただれてきた、などで病院へお越しになられる患者さんにしばしば遭遇します。
お話を詳しくお聞きすると、食事後やお水を飲んだ後に多く見られ、食べたものや水が口唇周囲に着いたため気持ち悪いのだと思っておられた所、徐々に腫れやただれが出てきたというのです。

また、当初かわいい仕草だと思っていたとおっしゃる親御さんも少なくありません。
私はこのような場合、症状が強くない場合では最初から薬を使うことは控えるようにしています。
まず行っていただくのは食器の交換です。
ご使用されている食器に対し、アレルギー反応を起こしている可能性を排除するため他なりません。
プラスチック製やステンレス製であれば陶器製への交換をし、様子を見ていただく事にしています。
なぜならそのことだけで症状が改善される場合も少なくないからです。
薬を使っても症状の改善はあるでしょうが、薬を止めれば同じことの繰り返しになり、徐々にひどくなっていく場合も考えなければならないと思っています。


この様に何かを行った後、何らかの症状がある場合、
その行為に使った[物]の観察を注意深く行い、
それらを使わなくする事により、
症状の改善が見られる事もあると、
頭の片隅においておくのも大切なことだと思っています。

散歩中や散歩後もそうでしょう。
草木や花粉などが原因と考えられる事もありうる。
と言う事になります。
遊んでいるゴムなどのおもちゃもそうかもしれません。


「痒み・ただれ・腫れ、アレルギーでしょう。お薬を出しておきます」「痒みがあったらアレルギー」では、私自身少し軽率なような気がしています。




この疾患は獣医師が念頭に置き、アレルギーだけではなく、薬を注射・投与・塗布・吸入、全てにおいて使用した場合、それらの行為に対し異常な反応が起きる場合があることを周知しておかなければならない、獣医師においてはある意味最も重要といっても良いのかもしれません。
自分の使った薬は間違いない！そう思うのが[間違い]なこともあるのではないかと思っています。
薬物アレルギーは、薬の投与をしてから数日ないし数週間で発現するため、診断が極めて困難な場合が多く、痒みがあったり少なかったり、皮膚に異常な症状がでたり、食欲がなくなったり発熱、関節痛、身体全体のむくみがあったり、さまざまな症状が出てきます。
薬物アレルギーにおいてはその薬の使用を中止する事で改善されたり、あるいはそれらの症状に対しての療法を行わなければならない場合も少なくはありません。
診断が正しいにもかかわらず、治療効果が十分発揮されない。
あるいは別な症状が発現したなどの場合、その理由として
・疾患自体の悪化
・疾患の変化
を考え、薬物アレルギーを忘れがちな場合があるように思いますが、薬物自体が重要な要因となることを強く受け止めるべきではないかと思っています。

薬物はアレルギーの事だけではなく、ある意味においてはすべての疾患の治療で自身の治療や診断の是非、或いは愛犬、愛猫の体質や薬の感受性などを測り知る上で大切な事だと思っています。

[私の治療は間違っていない]
獣医師は間違っていなくても違う意味で間違っている場合があることを強く心に留め置く必要があるように思います。

最後に、アレルギー性皮膚炎において人の生活環境の変化と共に、愛犬・愛猫の生活環境もめまぐるしく変化しています。
複雑になった生活環境や公害物質の増加は人のみではなく犬や猫においてもアレルギー物質の増加を意味しているのではないでしょうか。


・ペットフードの成分
・接触するであろう食器などの器具
・衣類
・おもちゃ
・飼育用具
・近隣の工事やリフォームにより排出される物質
・工場の廃棄物(産業産物)


などがアレルゲンとなり接触や吸引あるいは食品となり口に入りまた医療用品などとして使用されています。
それらがさまざまな経路で身体に侵入・接触する世の中になっているように思います。
これらからも更に様々なアレルギー性皮膚炎などの増加も考えられるのではないかと思っています。




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