今回から数回に分け、犬の外耳炎についてお話しさせて頂きます。 犬の外耳炎の発生率は全体として20%を超えるという高率であると推定されると聞きおよんでいます。 また、猫においては低く2〜6.6%と報告されているようです。 |
ただ報告者によっては発生率のばらつきが大きく、 これらは、今までお話しさせて頂いたように ・調査した季節 ・犬種 ・診断基準 ・その他 の相違によるものだと思います。 |
外耳炎においては 獣医師もさることながら、親御さんの多大な努力を裏切る結果がしばしば見受けられます。 この要因になっているのは ・外耳炎の要因(素因)となる因子が多数存在する。 ・外耳炎の要因(素因)となる疾患が多数存在する。 ・外耳炎を慢性化に導く二次病原体が存在する。 ・個体ごとに発生機序(発生する仕組み)や組織に対する炎症の出方が かなり違ってくる。(まちまちの炎症の出方をする。同じ原因でも全く違ってくる) ・その他 では、これらの要因を大別し、 後にそれらについて個々にお話しさせて頂くこととします。 |
その前に今までのおさらいとして a.外耳はいったいどんな作り構造をしているのか(外耳の解剖学) b.外耳炎という炎症はどのような状態になるのか(外耳炎の病態生理) にふれておきます。 (※耳の構造などのイラスト付きの簡単な説明はコチラNo.28をご参照下さい※) a:外耳について 以前にお話しさせて頂いておりますが補足的なこととして、外耳道の表面は皮膚であることはお話しさせて頂いたとおりであり、 奥に行く(鼓膜に近づく)ほど皮膚が薄くなっています。 外耳道においても毛包(毛を産生する哺乳類の皮膚付属器官)があり、これは犬種によって異なるとされています。 |
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短毛犬種では鼓膜の近くにはほとんど毛包がなく 長毛犬種には非常に細いにせよ毛が存在することがしばしばあります。 また、皮膚であるが故、皮脂線やアポクリン腺(汗腺の一種)、 いわゆる分泌腺が存在します。 この分泌腺は耳介に近い部分に顕著に存在し、 犬種により数が異なるとされています。 長毛で細い毛の犬種は短毛の犬種に比べて 良く発達した腺(分泌腺)が多数存在しているとの報告もあります。 これらの存在は外部から異物の侵入を阻止するなど 外耳におけるバリアシステム(防御機能)をつかさどっています。 しかし半面、炎症における一要因とも成りうるものではないでしょうか。 |
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b:外耳炎について 外耳炎においては、誘発要因が如何なるものであるにせよ、 外耳道において炎症を引き起こし、表皮(皮膚)と皮脂腺(皮脂線の下層にアポクリン腺がある)が 増殖することにより外耳道を狭くし炎症を増悪させる。 慢性化するとその肥厚はより激しさを増し、正常な厚さの5〜6倍に達するともいわれ、 アポクリン腺へも炎症は達し、さらに外耳道は狭くなり深刻な状態へと変化する。 より深刻な状態になれば アポクリン腺が破裂し、組織球・巨細胞・肥満細胞・白血球・繊維芽細胞が強く浸潤(※)することとなる。 また組織球・リンパ球・形質細胞などの巣状集積が存在することがあるといわれています。 これらのことは、すべて外耳道腔を狭くさせひどい場合には塞がってしまうという 外耳道閉塞に陥る場合もあり、検査をより困難にすることはいうまでもありません。 長期にわたった激しい慢性の外耳炎においては外耳道の骨化と付随する軟骨化がおこりえるとされています。 ※浸潤…本来その組織固有のものでない細胞が,組織の中に出現すること。 |
難しい言葉や、ややこしい内容をお話しさせて頂きましたが、 初期における診療において獣医師もこの様な事や内容を事細かく考えてはいないと思います。 (もちろんこれらの事項をふまえ、局所療法・外科的処置・内服その他を考慮しなければ良い結果は得られないように思いますが) 言いかえれば、 如何なるものであっても、時間が経過すれば初期においては簡単に落ち着くものであったとしても 治りえない重篤な状態になっている可能性を含んでいるということではないでしょうか。 |
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親御さんが ご様子を見ておられ「ひどくなってきたから」 と思われた場合、見えないところで治療困難な状態に 進行している可能性があるということではないでしょうか。 どんな事でも、早いうちに、初期のうちに。 「鉄は熱いうちに打て」 のたとえがあるように 「病は初期のうちに対処せよ」 ということではないでしょうか! |
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次回は 外耳炎(2)、 外耳炎の要因(素因)になる条件について簡単にお話しさせて頂きます。 |
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