Rakuten新春カンファレンス2020

「Walk Together」をテーマに、同じ悩みや目標を持つ楽天市場出店者同士の出会いを通じて、店舗運営に役立つ学びを得る「楽天新春カンファレンス2020」。独立研究者 / パブリックスピーカーの山口 周(やまぐち・しゅう)氏は、「サイエンス」を軸とした昭和的価値観を引きずっていることこそ、日本社会が停滞している原因だと喝破します。深い見識に裏付けられた柔らかい言葉で語られた、長い閉塞の時代を打破する「アート」の効用。すべてのビジネスパーソンにとって、自らの感覚をアップデートする最高の教材となるでしょう。

山口 周 氏
1970年東京生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事。現在、ライプニッツ代表。世界経済フォーラムGlobal Future Councilメンバー。著書は『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『ニュータイプの時代』『武器になる哲学』など。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修士課程修了。

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人は「意味的価値」に対して喜んでお金を払う。

2016年、人工知能によってレンブラント(Rembrandt Harmenszoon van Rijn)*1の新作を描くというプロジェクトが行われました。レンブラントの作品の特徴を、コンピュータに大量に読み込ませて、その特徴を再現した「新作」を生み出したわけです。あるいは、36歳で亡くなったモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)*2やシェイクスピア(William Shakespeare)*3の「新作」を生み出すといった様々なプロジェクトが走っています。つまり、人工知能によって見事な絵画や音楽や詩を生み出すことが可能になっており、単純に「アートや表現の領域は人間がやるべきだ!」とは言えなくなってきています。では、一体、人間は何をやったらいいのでしょうか?

ここに一つの方向性があります。それは「意味」ということです。実は、人工知能は「意味」を扱うのが非常に苦手です。そもそも人間ではないので「ストーリー」や「共感」を作り出すことができません。ここからは「役に立つ or 役に立たない」と「意味がある or 意味がない」の2軸で考えていきます。世の中にある商品やサービスは、全てこの2軸で評価されていて、少なくともどちらかは満たしています。「役に立たない & 意味がない」ものというのは、典型的な売れないアート作品のようなもので、言ってしまえばゴミです。多くの商品・サービスは、このどちらの軸で戦うかを考えるわけですね。

では、具体的にクルマを例に挙げて考えていきます。国産車のほとんどは「役に立つ & 意味がない」に入ります。移動手段としては安全で快適で燃費が良いので行くに立ちます。しかしながら、国産車を持つことで自分の人生が豊かになっているというように、必ずしも意味があるものではありません。一方で、BMW*4やポルシェ(Porsche)などは「役に立つ & 意味がある」に入ります。価格は国産車の3倍から5倍です。では、国産車に比べて3倍も5倍も役に立つのかと言われれば、そんなことはありません。3倍から5倍のプレミアムは「意味」が作っています。こうしたクルマを選ぶ人は「意味的価値」にお金を払っているわけです。

「マズローの欲求5段階説」で言えば、国産車が満たしているのは「安全で快適に移動したい」という欲求ですが、BMWなどが満たしているのは、こうした下位の欲求ではありません。こうしたクルマが満たしているのは「成功者として見られたい」「かっこいいクルマに乗って高速道路をドライブしている自分になりたい」という自己実現欲求です。その欲求を満たすために3倍から5倍のプレミアムを払っている。なぜなら、その領域が希少になっているからです。現代では「生理的欲求」や「安全の欲求」は過剰に満たされている一方で、どの人も「承認(尊重)の欲求」や「自己実現の欲求」が満たされていないわけです。なので、その欲求を満たしてくれる商品やサービスの価値がインフレしているんですね。

さらには、世の中には「役に立たない & 意味がある」というクルマもあります。例えばランボルギーニ(Lamborghini)*5です。爆音で突進するだけの2人乗りのクルマなので、全く役に立ちません。しかしながら、このカテゴリーのクルマは非常に売れており、市場も成長しています。役に立たない上に高いクルマが、です。これも「意味的価値」が付くことで高いプレミアムを取れるという事例です。

競争原理が全く異なる「役に立つ」と「意味がある」の2つの市場。

では、どちらに向かって企業努力をするべきなのでしょう? 「役に立つ」という目盛りを上げるのがいいのか、それとも、「意味がある」という目盛りを上げるのがいいのか。結論は明確です。「意味がある」という目盛りを上げるのが、企業努力としては正しい方向です。「役に立つ」という目盛りを少し上げたからと言って、世の中の人は役に立つ商品やサービスには慣れてしまっているので、そこに対して支払う対価は増えません。マーケティング用語では「ウィリング・トゥ・ペイ(Willing to Pay;「喜んで支払う」の意味)」といいますが、「役に立つ」という目盛りが上がっても、喜んで支払う金額は変わりません。一方で、「承認(尊重)の欲求」や「自己実現の欲求」は満たされていない人が多いので、「意味がある」という目盛りが上がっていくと、人々は喜んで支払う金額が高くなるわけです。

バブル崩壊以降、日本は長らく経済成長を果たせていませんが、原因はここにあるのです。すでに十分に満たされている利便性をさらに追求しているから、経済的に成長しないわけです。当たり前ですよね。すでに過剰に存在しているのですから。私は、「意味的価値」の方向に進んでいかないと、日本の成長は難しいと思っています。しかも、「役に立つ」と「意味がある」のマーケットでは、競争環境も全く異なります。コンビニエンスストアを思い浮かべてください。コンビニエンスストアというのは売り場面積が非常に小さいので、ひとつのカテゴリーあたり1つか2つの商品しか並べていません。そうしたコンビニエンスストアの中にあって、200種類以上が並べられている商品があります。何だかわかりますか? それはタバコです。普通のサイズのコンビニエンスストアの場合、230から240種類のタバコが用意されています。皆さん、不思議だと思いませんか? これも「役に立つ or 役に立たない」と「意味がある or 意味がない」の2軸で整理すると大変わかりやすいですね。

文房具類などは「役に立つ & 意味がない」ものです。従って、商品がひとつでもあれば、喜んでそれを買っていきます。一方でタバコはどうでしょうか。タバコは「役に立たない」ものです。「役に立たない」どころか、むしろマイナスです。しかしながら、タバコを吸う人にとっては「意味がある」ものです。マールボロ(Marlboro)を吸う人にとっては、そのタバコを吸うことに意味があるわけです。同じようにハイライト(Hi-Lite)を吸う人にとっては、ハイライトであることに意味がある。このことが何を示しているかというと、「意味がある」のマーケットは「ブルー・オーシャン(Blue Ocean)*6」になっていくということなんですね。その顧客と商品の関係性が重視されますから、ブランドが多様化していくわけです。マーケットが分散化するということです。

「役に立つ」のマーケットは全く違います。ここでは、「一番役に立って、一番安いものが、ひとつだけあればそれでいい」ということになります。その典型がサーチエンジンとソーシャルネットワークです。グーグル(Google)の世界シェアは90%を超えています。この10年間であらゆる検索エンジンが淘汰されてしまいました。それは、グーグルが最も役に立つサーチエンジンになったからです。人々がサーチエンジンに求めているのは、迅速で正確な検索結果だけです。「検索結果はおかしいけれど、味があって、イタリアのおじいさんが手作りでサーバーを立てている」というようなサーチエンジンは、はっきり言っていらないんです。靴やワインの場合、それは価値になりますが、サーチエンジンには必要ありません。「役に立つ」の領域で一番になれる自信があるのなら、そこで戦えばいいと思います。ですが、すでにこのカテゴリーは過剰であり、競争も激しいので、「意味的価値」の領域に進出していくことが、新しい付加価値の生み出し方になると考えています。

「尖り」で勝負してグローバルニッチを目指せ。

こうした話をすると、「マーケットが小さくなるじゃないか」という反論をする方がいらっしゃいます。確かに、ランボルギーニは価格は高いけれど生産台数は非常に少ないですね。ただ、こう考えてみてはいかがでしょうか? 日本国内は1.2億人のマーケットです。「役に立つ」という方向性でいけばメジャーとなり、その50%、つまり6,000万人を獲得できるとしましょう。それに対して「意味がある」という方向性でいくとニッチとなり、5%、つまり600万人を獲得できるとします。すると、日本だけで考えるとメジャー市場の方がスケールメリットがありますから、いわゆるナショナルブランドと言われるものは「役に立つ」という方向性を目指さざるを得ませんね。ところが、現代社会においては情報流通はどんどん進んでいます。日本国内の1.2億人のマーケットのすぐ隣に、先進国合計で12億人のマーケットが存在しているわけですね。その12億人の市場で5%の人が気にいるものを生み出せれば、トータルでは6,000万人のニッチ市場を形成することができます。これは日本国内のメジャー市場を追求するのと同じ規模になります。先ほど申し上げたとおり、「意味がある」の商品やサービスでは、「役に立つ」に比べて単価は数倍になります。顧客の数が同じで単価は数倍となると、ビジネスの規模としてはどちらが大きくなるでしょうか? 答えは明確ですね。

ニッチ市場がグローバルに通用する理由は「尖り」があるからです。メッセージや意味性が明確に存在する場合、グローバルで通用する可能性が高くなります。その好例が南部鉄瓶*7です。南部鉄瓶は海外では入手困難な人気商品となっています。日本にやって来た外国人が「日本のめちゃくちゃカッコいいケトル」としてソーシャルネットワークで拡散した結果、海外のセンスある人たちが挙(こぞ)って欲しがるようになったわけです。南部鉄瓶は、安くても数万円、高いものになると数十万円にもなります。欲しがるのは明らかに特殊な人たちで、人口全体の数パーセントしかいませんが、先進国全体に評価される商品やサービスであれば、巨大なマーケットになるということです。

メジャー市場で戦っているナショナルブランドの財務諸表を見てみると、この数年、海外売上比率は全くと言っていいほど増えていません。それは「尖り」がないからです。平均的な人が好むような最大公約数的な商品だけを作っていますが、そうした商品は他の先進国にも溢れているわけです。わざわざ海外から運んででも買いたいというものにはなっていない。結果的に「ローカルメジャー」に留まるしかできず、「グローバルニッチ」になることができないのです。

アートの軸で「意味的価値」を高めろ。

「グローバルニッチ」の典型例がマルニ木工*8です。アップル本社には、マルニ木工が手がけた家具が大量に採用されています。昔だったら考えられないことです。広島にある中小家具メーカーの作った家具が、商社も介さずに、世界的にヒットしているわけです。その要因はSNSですよね。世界的に著名なプロダクトデザイナーである深澤直人(ふかさわ・なおと)*9さんが、自分自身の新作チェア「HIROSHIMA」が完成したことをSNSにアップしたところ、世界中のデザイン関係者が反応し、アップルのチーフ・デザイン・オフィサーであるジョナサン・イヴ(Sir Jonathan Paul Ive)*10の目に止まったわけですね。

皆さんもよくご存知の「バルミューダ(BALMUDA)」も同様ですよね。このブランドのトースターの価格は、従来のトースターの約10倍もします。それが飛ぶように売れています。この10年でバルミューダの売り上げは1,000%増です。他の家電製品メーカーは全く成長していません。家電製品は成熟市場であると言われていましたが、それは間違っていたわけです。家電市場が成熟しているのではなく、「役に立つ家電市場」が成熟していただけでした。「役に立つ」という場所で家電を作っていたから成長しなかったわけで、「意味がある」という場所で家電をつくったから大きな成長を遂げられたのです。バルミューダのトースターは「世界で一番美味しいトーストが焼ける」というコンセプトで、そうしたトースターがある生活を売ったわけです。「承認(尊重)の欲求」や「自己実現の欲求」を満たす家電であったとも言えるかもしれません。

昭和から平成の時代は、メディアについては「4マスメディア中心」かつ「高コスト」であり、顧客ニーズについては「目新しさ」「利便性」「価格」が重視され、流通は「大手流通主体」かつ「リアル主体」であり、市場環境は「国内にクローズ」という状況でした。こうしたマーケットの中で価値を出すことを中心に考えていました。それに対して、令和の時代は、メディアは「SNSやクチコミ」が中心、かつ、「限界費用ゼロ」で世界中に情報を届けることができます。顧客ニーズは「意味」や「ストーリー」へと移行し、流通は「ネット中心」「バーチャル中心」であり、「尖り」を作りさえすれば市場は「グローバルにオープン」になっています。スケールメリットがどんどんなくなって、スモールプレイヤーでもインパクトのあるビジネスを展開できるようになってきています。

こうした世界になってきた今、「サイエンス」を軸に戦うことは厳しくなっていると言わざるを得ず、「アート」という軸も活用しながら「意味的価値」「情緒的価値」をつくりながら、顧客との共感を生むことが、非常に大きな付加価値の構成になる。そうした世の中になってきたと言えると私は考えています。

ちょうどお時間になりました。本日はご静聴ありがとうございました。

*1 レンブラント(Rembrandt Harmenszoon van Rijn) | 1606年、オランダ・ライデンに生まれた画家。ルーベンス(Peter Paul Rubens)、ヴェラスケス(Diego Rodríguez de Silva y Valázquez)と並ぶ17世紀を代表するの画家の一人。活動初期は主に宗教画を描いたが、1630年頃から写実的手法により肖像画を描いて名声を博す。この頃が社会的にも経済的にも最も成功した時期となった。1642年に発表した大作「夜警(正式名称は『フランス・バニング・コック隊長の射撃隊』)」が不評となるなど、徐々に貧窮に陥る。一方で、強い明暗対比、柔らかい色彩を特徴とする作風は円熟味を増し、自己の内面が表出したような宗教画、肖像画、風景画、神話画などに多数の傑作を残した。1656年、破産宣告を受け、身内の相次ぐ不幸に見舞われるなど、不遇のうちにその生涯を閉じた。代表作に「テュルプ博士の解剖学講義(1632年)」、「ユダヤの花嫁(1665年頃)」、「エマオの晩餐(1648年)」、「バテシバ(1654年)」、「放蕩息子の帰還(1668年頃)」など。

*2 モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart) | オーストリアの作曲家。1756年、オーストリアのザルツブルグに生まれる。ザルツブルグ大司教付きの音楽家であった父の指導を受け、幼くしてその楽才が開花。5才の時に作曲した作品が今に残る。1763年から1766年までの間、父と共にロンドンやパリを訪ね、クラビーア(ピアノ、オルガン、ハープシコードなどの鍵盤楽器を指す総称)を演奏しながら見聞を広める。1769年以降はザルツブルグ大司教に仕えるが、1762年に就任した新大司教ヒエロニムスとの折り合いが悪く、1791年にウィーンで独立を果たすが、以降、生活は困窮の一途を辿る。1784年頃から創作活動は生涯最高の高まりを見せ、「フィガロの結婚(1786年)」、「ドン・ジョバンニ(1787年)」、「交響曲第39番・40番・41番(いずれも1788年)」、「クラリネット五重奏曲(1789年)」、「コシ・ファン・トゥッテ(1790年)」、「魔笛(1791年)」などの代表作を次々と生み出す。1787年、「レクイエム」が未完のまま逝去。享年35歳。その生涯で、24の舞台音楽、およそ50の交響曲、21のピアノ協奏曲、24の弦楽四重奏曲をはじめとして、各種協奏曲、ディベルティメント、室内楽曲、歌曲、宗教音楽などを残した。ハイドン(Franz Joseph Haydn)とともに古典主義の確立者とされる。

*3 シェイクスピア(William Shakespeare) | 1564年生まれ。イングランド中部の街 ストラトフォード=アポン=エイヴォンがその出生地と考えられている。英国を代表する詩人であり劇作家。ロンドンに出て役者や振付作家として活躍したのち、悲劇・喜劇・史劇とあらゆる分野で健筆を振るった。当時としては驚異的な語彙量と、人間の心理を洞察することで得られる性格描写により、近代人の複雑な内面世界を描き出した作品により絶大な人気を博した。シェイクスピアの家族は、その多くが文盲であったのに対し、本人の語彙は約2万5,000語を超えており、平均的英国人の約6倍に及ぶ。シェイクスピア本人が生み出した言葉も1,700語以上あるとされ、英語そのものを豊かにしたと言える。シェイクスピアの生涯には未だ謎の部分が数多く残されており、宮廷社会、法律、医学、博物学、外国事情といった多岐にわたる知識を総動員して書かれた作品を見ても、大学教育も受けていない地方の若者ひとりの手によるものとは考えられないという指摘もなされている。シェイクスピアという人物は影武者であり、実際に作品を手がけていたのは他の人物であるという説も根強い。その正体として、エリザベスI世、妻 アン・ハサウェイ(Anne Hathaway)、劇作家 クリストファー・マーロウ(Christopher Marlow)、哲学者 フランシス・ベーコン(Francis Bacon)、第17代オックスフォード伯爵 エドワード・ド・ヴィア(Edward de Vere)らの名が挙げられてきたが、真相は闇の中。四大悲劇(「ハムレット」「オセロ」「リア王」「マクベス」)のほか、「ロミオとジュリエット」「ヴェニスの商人」「真夏の夜の夢」「ジュリアス=シーザー」「ソネット集」など多数の作品が今に伝わる。

*4 BMW | ドイツ南部のバイエルン州ミュンヘンに本拠を置く自動車メーカー。正式名称は「バイエリッシェ・モトーレン・ベルケ(Bayerische Motoren Werke AG)」で「バイエルンのエンジン工場」を意味する。1922年、現社名と同名のエンジン会社を買収し改称。翌 1923年、オートバイ生産を開始した。1928年にイギリスのオースティン・モーターより四輪乗用車の生産ライセンスを取得し、1932年から自社生産を行う。 1934年に航空機エンジン生産を BMWフルークモトーレンバウ(Flugmotorenbau)に移管。 1976年、オートバイ部門を BMWモートルファート(Motor Fart)に移管。 1994年、イギリスのブリティシュ・エアロスペース(British Aerospace)からローバー・グループ(Rover Group)を買収し業務拡大を企図。 2018年の世界新車販売台数は約249万台。ちなみに、水色と白からなる有名なエムブレムは、航空機エンジンを生産していた時代の名残として空とプロペラを図案化したものとして広く知られているが、実際にはこのエムブレムが商標登録された時点でBMWは航空機エンジンの生産を始めていなかった。このストーリーは同社のPR戦略の一環として、後日創作されたものと考えるのが正しい。

*5 ランボルギーニ(Lamborghini) | 1963年、イタリア・ボローニャ州に設立された高級スポーツカーメーカー。正式名称は「ヌオーヴァ・アウトモービリ・フェルッチオ・ランボルギーニ SpA(Nuova Automobili Ferruccio Lamborghini SpA)。創業者であるフェルッチオ・ランボルギーニ(Ferruccio Lamborghini)は、第二次大戦後のトラック不足に目を付け、軍が放出する車両を民生向けに改造販売することで莫大な富を築いた。その後、トラクターの製造・販売からスポーツカーの世界へと足を踏み入れた。これまでに「ミウラ(Miura)」、「カウンタック(Countach)」、「ディアブロ(Diablo)」、「ムルシエラゴ(Murciélago)」、「ガヤルド(Gallardo)」、「ウラカン(Huracán)」、「アヴェンタドール(Aventador)」などの車種を展開してきた。

*6 ブルー・オーシャン(Blue Ocean) | 経済学用語で、競争相手のいない未開拓市場のこと。2005年に刊行されたW・チャン・キム(W. Chang Kim)とレネ・モボルニュ(Renée Mauborgne)の共著『ブルー・オーシャン戦略(Blue Ocean Strategy)』の中で提唱した。同書はブルーオーシャン市場を自ら構築することが企業の新たな事業成功戦略であると説いている。対義語は、競合企業がひしめく中で激しい価格競争が行われている既存市場を指す「レッド・オーシャン(Red Ocean)」。

*7 南部鉄瓶 | 旧南部家所領であった岩手県盛岡地方でつくられる南部鉄器の代表的製品。室町時代以来、盛岡近辺は北上川流域を中心に製鉄製造が盛んに行われており、江戸中期から茶の湯釜や芸術性のある鉄瓶などの鋳造が行われた。南部釜や南部鉄瓶の起源は、延宝年間(1673年~1681年)の頃、京都の釜師である小泉仁左衛門が南部藩御用釜師として盛岡に移り住み、黒木山の鉄、北上川の砂鉄を用いて鋳造を始めたことに端を発するとされる。その後、釜や鉄瓶は盛岡の特産品となった。

*8 マルニ木工 | 山中武夫が創業した日本の家具メーカー。技術難度の高い「木材の曲げ技術」を確立し、それまで手工業の域を出なかった日本の家具工業に対して、「工芸の工業化」をモットーに「職人の手によらない分業による家具の工業生産」を目指した。一品生産の高級品だった彫刻入り家具の工業化に成功し、1968 年に開発したクラシック家具は「日本の洋家具史上最大のヒット」として今も知られ日本におけるクラシック家具の代表的ブランドになると同時に、伝統的な美しさを生み出す良質な家具メーカーとして成長した。 1990 年代以降、自社でしか生み得ない「日本から世界に発信する家具」を標榜し、国際的なデザイン感覚と日本独自の木に対する美意識、精緻なモノ造りの技を融合した世界へ発信する家具造りをスタート。使い手の生活に溶け込み、100年後も定番として愛される家具を目指し今日も木と向き合い、モノづくりに励んでいる。

*9 深澤直人(ふかさわ・なおと) | 1956年、山梨県生まれ。1980年、多摩美術大学プロダクトデザイン科を卒業。1989年に渡米し、デザインコンサルティング会社 IDEOで8年勤務する。後帰国、IDEO東京支社を設立。2003年に独立し、Naoto Fukasawa Designを設立。「MUJI」CDプレーヤー、「±0」加湿器、「au/KDDI」INFOBAR、neonはMOMA(ニューヨーク近代美術館)の永久収蔵品となる。B&B ITALIA、Driade、Magis、Artemide、Danese、Boffi、Vitraをはじめ、ドイツや北欧など国内外の大手メーカーとのプロダクトデザインを手がける。2005年、ジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)とともに「Super Normal」を設立。無印良品のデザインアドバイザリーボードや「21_21 DESIGN SIGHT」のディレクター、武蔵野美術大学教授、多摩美術大学客員教授などを務める。主な著書に『デザインの輪郭(TOTO出版)』、共著書に『デザインの生態学(東京書籍)』などがある。

*10 ジョナサン・アイヴ(Sir Jonathan Paul Ive) | 1967年生まれの英国人デザイナー。ロンドンのデザインエージェンシーである「Tangerine」で働いた後、1992年、アップルでのキャリアを積むために渡米する。1996年、インダストリアルデザイン担当責任者に就任すると、主要製品のデザインを軒並み担当。スティブ・ジョブズ(Steven Paul "Steve" Jobs)が同社に復帰するとインダストリアルデザイン担当上級副社長に就任。2013年6月、ソフトウェアも含めたデザイン担当上級副社長を経て、2017年7月にチーフ・デザイン・オフィサー(CDO)となった。2017年、「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」の学長に就任。2019年6月27日、年内にアップルを離れ、友人であり自身の右腕的存在であるマーク・ニューソン(Marc Andrew Newson)と共にクリエイティブエージェンシー「LoveFrom」を立ち上げることを発表した。