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ティンバーランド看板

2021.1.22

歴史を語るイエローブーツ
TIMBERLAND(ティンバーランド)

メンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

1918年から始めた靴づくり

アメリカのニューハンプシャー州ストラザムに拠点を置くアウトドア用品メーカー、ティンバーランド。公式の会社設立年は1973年とされているものの、創業者による靴づくりはもっともっと昔から始まっています。
創業者は1902年にロシアのオデッサという街で生まれた、ユダヤ系ロシア人のネイサン・シュワルツ。
シュワルツ家は代々、靴づくりを生業としていたそうですが生活は苦しく、第一次世界大戦の少し前に一家でアメリカへと移住します。

1918年、ネイサンは弱冠16歳でボストンの靴屋に弟子入りし、靴づくりをスタートします。裁断から縫製、ソールの貼り付けまで一人でこなす職人的製法で、精巧なレザーブーツをつくる技を習得していきました。

と、ここまでがティンバーランド・ブランド物語の前書き。
今日につながるブランド物語の本編は1952年からはじまります。

この年、ネイサンはサウスボストンにあったアビントン・シュー・カンパニーという製靴会社の全株式のうち、半分を入手します。
1955年には残り半分も取得し、経営権を獲得。ネイサンの二人の息子、シドニーとハーマンも会社の経営に加わります。
そして1965年にシドニーは、射出成型技術を採用することで、縫い合わせるのが普通だったブーツのソールとレザーアッパーを一体化させることに成功します。

1968年にネイサンが引退すると、ハーマンが跡をついで社長に就任。1986年まで会社を率いますが、彼の元でティンバーランドは大きく成長していきます。
1973年、シドニーが確立した独自技術を使い、つなぎ目から水が染み込む心配のない、世界初の完全防水ブーツを発売。
厚いラバーラグソールが特徴の森林伐採作業者用ブーツは、優れた防水性のプレミアムフルグレインヌバックレザーとレベルの高い職人技がマッチした逸品で、瞬く間に評判が広がります。
麦の色を表しているという明るい色のレザーが特徴のそのブーツには、“森の男”を意味する「ティンバーランド」という商品名がつけられ、その見た目からいつしか“イエローブーツ”という愛称でも呼ばれるようになります。

bild:Avijeet Sachdev, flickr.com, CC BY-ND 2.0

ティンバーランド=イエローブーツ

ここまで読んだ皆さんの中には、あれ? と思った方もいたでしょう。
そう、現在はブランド名として知られる「ティンバーランド」とは当初、今日も“イエローブーツ”と呼び慣らされるあの6インチ編み上げワークブーツ、すなわち今回ご紹介するプレミアムブーツに付けられた商品名だったのです。
イエローブーツはその性能の高さとデザインの良さから、早くからワークブーツの定番としての地位を固め、ハーマンが経営するアビントン・シュー・カンパニーは1978年、社名自体をティンバーランドと改めます。

雨や雪の多い厳しい気候の荒涼とした大地で生きるアメリカ・ニューイングランド地方の人々のために作られたイエローブーツは、当初、ファッションアイテムというよりも純粋な“道具”という趣でした。
しかしやがて本来の用途から離れ、いわゆるストリートファッションの一環として、世界の街角でじわじわと認知を広げていきます。

ストリートファッションとして最初にイエローブーツに目をつけたのは、1980年代初頭のイタリア・ミラノに登場した“パニナリ(複数形はパニナロ)”でした。
ミラノのサン・バビラ広場近くに1981年、当時のイタリアでは珍しかったハンバーガー店がオープンしたことから、やっと入ってきたアメリカ文化に狂喜した若者によって形成されたサブカルチャー、パニナリ。
彼らのキーアイテムになったのがこのブーツです。
パニナリのファッションはプレッピー風味の強いアメカジをベースとし、ヨーロッパの要素をミックスさせているのが特徴。
モンクレールのダウンジャケットにストーンアイランドのセーター、リーバイス501などとともに、ティンバーランドのイエローブーツが重用されます。

パニナリは1980?1985年のミラノに見られた局所的なカルチャーでしたが、彼らを発信源としてロンドンやパリなど他のヨーロッパの街、また東京や香港などのアジアでも、イエローブーツの魅力が知られるようになっていきます。

しかしイエローブーツがストリートで本格的にブレイクするのは、その後でした。

bild:Giorgio Minguzzi, flickr.com, CC BY-SA 2.0

B-BOYのステイタスシンボルに

シドニーがハーマンから経営を引き継いだ1986年以降、イエローブーツに大ブレイク期が訪れます。
いかにもアメリカ的とも言えるタフな風情漂うこのブーツは、1980年代後半以降にロサンゼルスを中心とする西海岸から発信された、ギャングスタ系ヒップホップの人気の高まりとともに、需要がぐんぐんと上昇していったのです。

ギャングスタ系B-BOYのファッションは、オーバーサイズの服やパンツを腰穿きにする点など、ヒップホップ生誕地である東海岸のそれと共通項を持ちつつ、黒を基調とするクールな強面スタイルを強調したのが特徴。
それまでのB-BOYが多用していたスポーツアイテムとは違い、ディッキーズやベンデイビス、カーハートなど老舗ワークブランドのアイテムやネルシャツを中心にコーディネートします。
そして足元にティンバーランドのイエローブーツを履くことが、ギャングスタ系B-BOYのステイタスと見なされるようになっていったのです。

この時期、モブ・ディープのプロディジーやDAS EFX、ウータン・クラン、レッドマン、Qティップといった錚々たる黒人ラッパーがイエローブーツを着用。
ブート・キャンプ・クリックやウータン・クランは、ラップの歌詞でもイエローブーツを称賛します。
すると、彼らに憧れる世界中の若者がイエローブーツを買い求めるようになり、一気に大ブレイクの様相を呈したのです。
日本でも1990年代前半にヒップホップの一大ムーブメントが巻き起こりましたが、アーティストもオーディエンスも、まるでユニフォームのようにイエローブーツを履きこなしていました。

ティンバーランド社は1992年から1993年にかけて売り上げが50%上昇したといいます。
1990年代半ばにかけては売れすぎて店の在庫が切れることも多かったので、イエローブーツは争奪戦状態になり、中古市場ではプレミアム価格で取り引きされるようになりました。
1998年にシドニーの息子のジェフリーが経営を引き継ぐと、従来のスペシャリスト・アウトドア志向からよりカジュアル路線へとシフトチェンジし、ティンバーランドはライフスタイルブランドとしてさらに歩を進めていきます。

ゆるぎなき銘品を今こそ

イエローブーツを分解すると、39個のパーツに分かれます。
それらがティンバーランドの独自製法を含む約80の工程を経て、美しい一足のブーツに仕立て上げられます。

タウンユース用としてブレイクしたものの、イエローブーツはもともと、山中でのハードな使用に耐えられるように設計されたワークブーツ。
ゆえに機能性が非常に優れています。
中敷きには長時間履いていても疲れにくいアンチファティーグ機能が搭載されているので、履き心地は抜群。
アッパーには耐久性の高い防水加工レザーが、ヒモを通すアイレットには防錆加工が施され、アッパーはソールと一体化、縫い目も裏側からラテックスでシールされているので雨の日でも安心して履くことができます。
アッパーからバンプに使用されているマイクロファイバーの中綿「プリマロフト インシュレーション」は非常にソフトで軽いだけではなく、保温性が高い素ので足先は常に温かさがキープされます。

その他にも、足首に優しくフィットするパッド入りの履き口や、100%リサイクルのPET素材を使用したシューレース、トラクションに優れたラバーアウトソールなどなど、考え抜かれた仕様が満載されています。

ブランド物語の続きですが、その後、ティンバーランドのイエローブーツはコアなB-BOY系だけではなく、そうしたエッセンスを巧みにミックスした着こなしを志向する人にまで幅広く浸透。
“ゆるぎなき銘品”あるいは“永遠の定番”として憧れの対象であり続けてきました。
1973年の発売以来まったく変わらぬデザインは、ある世代には懐かしく、またある世代には新鮮に感じられるようですが、老若男女のそれぞれの思い入れを反映した輝きを見せてくれるのも、イエローブーツが永遠の定番と呼ばれるゆえんではないでしょうか。

そして1990年代の大ブレイク以降、何度かのリバイバルヒットを経て、ここのところ再び一段と注目度が高まっています。
欲しくてもなかなか買えなかったあの頃とは違い、現在は安定した供給体制が確立されているので、この機会に是非、ゆるぎなき銘品をワードローブに加えることをおすすめいたします。

bild:Mr Seb, flickr.com, CC BY-ND 2.0

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