ハフ看板

2023.12.28

HUFの歴史と未来
スケートカルチャーのアイコン

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

HUFを有名にしたブランドロゴ

アメリカのスケーター系ブランド・HUFは、2002年、プロスケーターのキース・ハフナゲルによって、サンフランシスコで設立されました。
ブランド名は、キースのファミリーネーム「HUFNAGEL」の頭の三文字から取られています。

HUFは、スケートボードカルチャーに根ざした革新的なデザインと、品質の高さで知られるブランド。
スケートボードコミュニティや音楽、アートの世界とのコラボレーションを積極的におこなうことも、ブランドの特徴のひとつになっています

HUFのアイテムには、トップスケーターであったキース自身の実体験が反映されていて、実用性とスタイルを兼ね備えています。
現在とても多くの支持者に支えられるブランドであり、その成功の鍵は、キース自身のカリスマ性、キースが持つ独特のデザインへのこだわり、そしてブランドの象徴とも言えるロゴデザインが秀逸だった点にあると言っていいでしょう。

スポーツ系ブランドの常ではありますが、HUFの服もTシャツやスウェット、パーカー、ジャケットなどごくベーシックなアイテムが中心で、ラインナップにそこまで幅があるわけではありません。
その分、それらシンプルな服のそれぞれに施されるグラフィックデザイン、そして目立つ位置に配されたキャッチーなブランドロゴが、重大な役割を果たします。

HUFのロゴで特に有名なのは、太線のシンプルなフォントを使ったHUFの三文字を、正方形で囲んだ「ボックスロゴ」です。
このシンプルながら印象深いロゴマークは、ブランドの創設当初から使用され、HUFのアイデンティティを象徴するものとなっています。
また、「H」「U」「F」それぞれの文字を囲う3つの正三角形が組み合わさった「トリプルトライアングルロゴ」も強烈なインパクトを放っていて、HUFといえばこの三角形ロゴを思い出す人も少なくないでしょう。

【ハフ SET TRIPLE TRIANGLE PULLOVER HOODIE】
【ハフ セットボックスプルオーバーフーディー】

キースは創業当時から、HUFのデザイン哲学として、“古き良きアメリカの職人技やヴィンテージスタイルを現代的な感覚で融合させる”ということを掲げました。
現在進行形のユースカルチャーであるスケートカルチャーに、そうした伝統性を持ち込む方針により、HUFは数多いる競合ブランドの中で一際存在感を発揮するようになったと言えます。

アイテムに施される、彼の鋭い洞察力を反映したグラフィックやスローガンは、カウンターカルチャーを愛する人々の強い共感を呼んだのです。

ハフ①
photo:Takashi Matsumoto/flickr

ベーシックなアイテム施された仕掛け

昨今のHUFで、特に人気を集めているアイテムに注目してみましょう。

まずはスウェット&パーカーです。
スウェット生地の服は、スケートをするときに動きやすいため、スケーターにとっては最重要アイテム。そのシンプルさの中にも多様なデザインが存在し、グラフィックプリント、ブランドロゴ、ユニークな色合いなどによって、着る人の個性や好みを表現する手段となっています。

HUFのスウェットおよびパーカーには、ホットロッドやヒッピー、パンク、ヒップホップなど、新旧のアメリカンサブカルチャーをアレンジしたグラフィックデザインや、ブランドロゴが大きくプリントされたものがラインナップされ、多くのスケーターやストリートファッション好きを唸らせています。

【ハフ テッセラクト トライアングルフーディ】
【ハフ MIS-FIT プルオーバー フーディ】
【ハフ FELINE EYE PULLOVER HOOD】
【ハフ MORNING GLORY CREWNECK SWEATSHIRT】
【ハフ INTERNATIONALLY KNOWN CREWNECK】

ここ数年のストリートファッション界でトレンドとなっているコーチジャケットにも、HUFらしい特徴を見出すことができます。
コーチジャケットとはもともと、アメリカのスポーツチーム、特に野球のコーチが着用していたジャケット。ナイロン製で軽量でありながら保温性に優れ、それほど厚くはないので運動や動きやすさを妨げません。
そのため、スポーツウェアからストリートウェアにまで広がり、現在では多くのファッションブランドが独自のバージョンを製作しているアイテムです。

HUFのコーチジャケットは、リアルスケーターたちのために、動きやすさやスタイルを重視したゆったり目のシルエットを採用しながら、アメリカ伝統のベースボール文化にもきっちりと目配りしたデザインが施されています。

【ハフ SET H COACHES JACKET】

キャップもまた、HUFの人気アイテムのひとつです。
キャップとスケートカルチャーの関係性は歴史が長く、現在に続くストリートスケートの原点である1970年代のドッグタウン時代から、スケーターたちにトラッカーキャップが愛用されてきました。
HUFのキャップは、その頃のヴィンテージ感を反映させたものになっています。

HUFの服やアクセサリーは、キース・ハフナゲルの独創的な世界観を反映しており、スケートカルチャーのみならず、ストリートファッション界全体に大きな影響を与えています。
彼のデザインしたアイテムは流行に左右されることなく、時代を超えて愛され続けています。それは、キースが持っていた独特のアートへの情熱と、ストリート文化への深い理解に基づいています。

【ハフ CLASSIC H 6 PANEL HAT】
【ハフ SET BOX SNAPBACK】
【ハフ SET TT SNAPBACK】
【ハフ SET OG CV 6 PANEL HAT】
【ハフ SIPPIN SUN CV 6 PANEL HAT】
ハフ②
photo:adifansnet/flickr

キース・ハフナゲルとは

そんなキース・ハフナゲルの生い立ちを少し振り返ってみましょう。

キースはストリート仕込みのリアルスケーターですが、生い立ちはかなり恵まれていました。
何しろ彼の父親は、アメリカ有数の保険会社・メトロポリタン生命保険の副社長。
キースが生まれ育ったニューヨークのスタイヴサントという街は、マンハッタンの中にあるとは思えないほど緑豊かで静かな環境で、ピータークーパー・ヴィレッジ地区にある彼の生家は、赤煉瓦造りの高級アパートだったそうです。

ピータークーパー・ヴィレッジはイースト・ヴィレッジと隣接しています。
イースト・ヴィレッジは1960年代からヒッピーが集まり、その後もバスキアやキース・ヘリング、ナン・ゴールディンをはじめ、多くのアーティストやミュージシャンが住んだ地域として有名。
ヒッピーやパンク文化の中心地であり、昔も今もアートの香りが強く漂う街なのです。

そんな雰囲気の中で育ったわけですから、おぼっちゃまとはいえキースも自由闊達で先進的な精神を育むことができたのかもしれません。
キースは13歳の頃から、友人たちとブルックリン橋の下の路地でスケートボードをはじめ、あっという間にのめり込んでいきます。

高校を卒業する1992年までニューヨークで過ごしたキースは、大学を選ぶ段になると、スケートボードの聖地である西海岸・サンフランシスコに移り住むことを決意します。
エキサイティングなライディングを生むのに絶好の環境がある、坂の多い西海岸の街は、ストリートスケートボードの聖地なのです。

そして、名門のサンフランシスコ州立大学に進学しますが、プロスケートボーダーになるため半年で中退。
1990年代を代表するトップスケーターとして名を馳せ、その勢いのままブランド創設へと進んでいきます。

キース・ハフナゲルが2002年にLAのテンダーロイン地区で立ち上げた店は当初、彼が選んだスケートボードとスニーカー、洋服や小物を扱うセレクトショップでした。
プロスケーターとして名を馳せたキースが認める本物中の本物の商品や、入手困難なアイテムを購入できるその店は、“プレミアショップ”として有名になります。
そして、その店のプライベートブランドとして立ち上げたのが、今日に続くHUFなのです。

ハフ③
photo:Incase/flickr

キース亡き後のHUF

HUFのアイテムは多様性に富んでおり、異なる背景やスタイルを持つ人々にも魅力的に映るようです。
そのため現在では、スケートボード愛好家のみならず、ストリートファッションのトレンドセッターを含む幅広い層の人々に支持されています。
逆説的なようですが、これは、HUFが常に革新的でありながら、そのルーツであるスケートカルチャーの精神を忠実に守り続けているからなのかもしれません。
常に“スケートボード”という中心線がブレていないことが、HUFというブランドの魅力につながっているのです。

HUFが創業から20年の間に、スケート界だけではなくストリートファッション界で確固たる地位を築いた要因は、自身の思想や嗜好、そしてスケーターとしての経験を服づくりに落とし込んだ、キース・ハフナゲルのカリスマ性によるところが大きいです。
しかしそんなキースは、非常に残念なことに、2020年9月24日、46歳という若さでこの世を去りました。
死因は脳腫瘍。2年半にわたる闘病生活の末、LAの自宅で亡くなったといいます。

しかし彼の死後も、彼のスピリットとブランドへの情熱は、HUFの服やアクセサリーに息づいています。彼の遺したデザインは、彼が生きた証であり、彼の精神はこれからもHUFを通じて生き続けるのでしょう。
HUFは単なるブランドではなく、キース・ハフナゲルの精神が息づくストリートファッションの象徴。彼の服を着ることは、彼の遺志を感じ、彼が築いた文化を身にまとうことを意味します。彼の創造した世界は、スケーターやストリートファッション好きにとって、ただのトレンドを超えた特別な存在なのです。

HUFは、革新的なデザインと高品質な製品で知られていますが、それだけでなく、彼らが持つストリート文化への深い敬意と理解が、ブランドの魅力を一層高めています。彼らのアイテムは、着る人に自由と表現の力を与え、個々のスタイルを際立たせるようデザインされています。
スケートボードの動きをサポートする機能性と、都会的な洗練さを兼ね備えたアイテムは、日常の幅広いシーンで活躍します。

例えば、スケートパークでのセッションから、友達との街歩き、リラックスした週末まで、あらゆる状況にHUFの服はとてもよく似合います。それは、キース・ハフナゲルがスケートボードの世界から得た洞察が、デザインに生かされているからなのでしょう。
キース亡き後もブランドのスタッフたちは、彼の意志を尊重してブレない服作りに勤しんでいます。
今後もストリートシーンの中心的存在として、目が離せないブランドであることは間違いありません。

【ハフ ESSENTIALS USUAL BEANIE】
【ハフ HUF SET TRIPLE TRIANGLE BUCKET HAT】
【ハフ ポーラーフリースジャケット】
【ハフ CAMDEN PLAID TRACK PANT】
【ハフ キャロル パンツ】
【ハフ BENNINGTON TRUCKER JACKET】
【ハフ ストラトフォードツアージャケット】
ハフ④
photo:/HUF Taiwanflickr

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