アウトドアと日常使いの機能性を兼ね備えたシューズ
「メレル」の歴史

1998年に発売された「ジャングルモック」が特に有名なメレルですが、
ブランドの創業は1981年までさかのぼります。
フランスの有名なスキー用品ブランド、
ロシニョールの幹部だったクラーク・マティスと
ジョン・シュバイツァーが、アメリカで新たにアウトドア用ブーツのブランドを立ち上げることを計画。
腕利きのウエスタンブーツ職人であり、
自身のカスタムブーツメーカーを運営していた
ランディ・メレル（ランダル・アイヴァン・メレル）を招聘し立ち上げたブランド、
それがメレルです。

メレルは高性能ブーツを手頃な価格で販売することを目指し、
当時の世界随一の靴生産・輸出国であったイタリアに工場を構えます。
そして1983 年にメレルが初めて市場に投入したのはハイキングブーツで、
アメリカ東海岸にある２つのアウトドア用品専門店に出荷されました。

メレルのハイキングシューズは高品質だったため、
ブランド発足当初から商売は順調に推移。
ランディ・メレルが、カスタムブーツメーカーとしての以前の生活に戻るため、
自分の名前を冠したブランドを去った1986年には、
年間約25000足のブーツを販売する規模になっていました。

1987年、メレルは自社製品の小売価格を引き下げて売り上げの拡大を図るため、
生産拠点をアジアに移します。
その転換が功を奏し、メレルは1990年までに、
年間約30万足の靴とブーツを販売するブランドに急成長を遂げます。
その年の売り上げ高は1000万ドルに達し、
世界的なアウトドアシューズブランドとして名を馳せるようになりました。

そして年間売り上げ高が2000万ドルを超えた1992年、
「ジャングルランナー」と名付けた
軽量のトレイルランニングシューズを発売します。
メレル初のこの軽量フットウェアは商業的な成功には至りませんでしたが、
クラーク・マティス率いるチームは、
このシューズの開発をヒントに、
画期的なアイデアを思いつきます。
アグレッシブなトレイルランニング用アウトソールと、
カジュアルなピッグスキンスエード製スリッポンアッパーを組み合わせて
使用するというそのアイデアこそが、
後年、「ジャングルモック」という商品として身を結んだというわけです。

photo:Kzoo Cowboy/flickr

1998年に発売した「ジャングルモック」の成功は著しいもので、
2002年までにこのモデルだけで約350万足を出荷します。
「ジャングルモック」のおかげでメレルは世界各国のファンから知られる存在になり、
2009年には出荷数1000万足に到達。
2010 年までにメレル製品を販売する国は、
世界で151か国を数えるようになりました。

その後も「ジャングルモック」の勢いは衰えることなくロングセラー商品となり、
発売後20年余りでなんと、2000万足近い売り上げを記録したというから驚きです。

「ジャングルモック」はこれまでの一般的なスポーツシューズとは違い、
特定のスポーツをするときに履くという用途を持っていませんでした。
トレイルランニング用アウトソールが施された軽量シューズなので、
もちろん軽いスポーツをするときには適したシューズですが、
それよりも何かスポーツをした後、疲れた足をリラックスさせるという機能が注目されます。

この“アフタースポーツシューズ”という新しいカテゴリーを打ち出したことも、
メレル「ジャングルモック」が歴史にその名を刻む理由のひとつです。
ハイパフォーマンス性を日常使いに結びつけ、アウトドアシューズをタウンユースするという、
今日では日常的に見られる光景を創ったのが、実はメレルだったのです。

メレルはその後も、創業当時から取り組んでいる本格ハイキングブーツを世に送り出していきますが、
「ジャングルモック」を売り出しスマッシュヒットとなった1990年代後半からは特に重点を置くようになったのが、
簡易的な軽量アウトドアシューズです。

次の項からはそんなメレルの、機能性に優れながらファッション性も高い、
いくつかのおすすめシューズをピックアップし、掘り下げていくことにしましょう。

photo:kanonn/flickr

メレルの王道であるハイキングシューズ、
「カメレオン」の初代モデルは、2001年に誕生しました。
アッパーは透湿防水性に優れた高機能素材“ゴアテックス”、
アウトソールはヴィブラム社製品の中でも特に高いグリップ力を誇る
“Vibram XS TREK EVO”を使用するという万全の高機能性ながら、
独特のデザインで仕上げられていたため、発売当初から多くのファンを惹きつける人気モデルとなりました。

このシューズがハイキングやトレッキングなどの
純アウトドアシーンで注目されたのは当然ですが、
そのファッショナブルな外見から、
当時にわかに盛り上がってきた屋外ロックフェスで履くのに
うってつけのモデルとしても有名になります。
そしてシリーズ化し、現在に至るまでいくつものモデルが発売されていきます。
シティユースから本格アウトドアシーンまで
汎用性の高いハイパフォーマンス商品として、
その人気は衰えることがないようです。

「モアブ」は、2007年に初代モデルが発売されたハイキングシューズ。
以来、今日までで世界累計2800万足以上の販売数を誇り、
長年に渡りハイキングシーンを牽引し続けてきたシリーズです。

「モアブ」シリーズ最大の特徴は、
初代から継承されるアッパーのオリジナリティあふれる
アグレッシブなデザイン性でしょう。
そんな際立ったデザインをキープしながら、
機能性や履き心地を常に進化させてきた「モアブ」は、
弾発性に優れたミッドソールのEVAフォームと、
グリップ力に優れたヴィブラム社製のアウトソールのコンビネーションによって、
抜群の履き心地を実現しています

アウトドアシーンでもストリートでも、
オシャレさと快適性、
そしてハイパフォーマンスな履き心地を
すべて満たすアイテムとして、
メレルの中でも現在トップクラスの人気を誇るモデルとなっているようです。

photo:cursedthing/flickr

メレルの数ある商品群のなかで、「ノバ」「モアブ」「ローグ」など、
いくつかのシリーズにまたがる“タクティカル”と銘打たれたシューズがあります。
タクティカル＝戦術的という意味を持つその言葉のとおり、
特にタフな環境や厳しい条件下での使用を想定して設計されたフットウェアです。

メレルの“タクティカル”シューズは、
その卓越したクオリティと機能性で評価されています。
メレルのブランドとしてのアイデンティティである、
ハイキングやトレッキングシーンにおける一般ユーザーの使用はもちろんですが、
さらに厳しい屋外の条件下で任務を遂行するプロのためのシューズとして重宝され、
世界中の軍や警察、フィールドガイド、山岳救助隊など
様々なプロがオフィシャルな装備として採用しています。

メレルの“タクティカル”シューズの一足一足は、
ブランドが長年にわたって培ってきた技術力を発揮し、
高い水準の耐久性と快適性を追求して作られています。
アッパーには高品質の素材が使われ、通気性と耐水性を両立させています。
また、ソールには優れたグリップ力を提供するデザインが施されており、
滑りやすい地形や不安定な地面でも安定した歩行をサポートします。
さらに、衝撃吸収機能を備えたミッドソールは、
長時間の移動でも足への負担を軽減することに一役買っています。

ここまでご紹介してきた他のシリーズの話からもわかるように、
メレルというブランドは機能性だけでなく、
デザイン性も優れた靴を提供することで知られています。
“タクティカル”シューズも実用的な機能性を最優先としながら、
どれも洗練された見た目であるところが魅力です。
タフに作られているので質実剛健な雰囲気を漂わせていますが、
タウンユースでも特に違和感なく着用することができます。
足元にボリューム感を持たせたいコーディネートには、
うってつけなのではないでしょうか。

メレルの“タクティカル”シューズはいずれも、
ユーザーの厳しい要求に応えるため、
アウトドア関係のプロフェッショナルからのフィードバックをもとに設計されています。
そのため、実際の使用シーンを想定した細かな工夫が随所に見られます。
その品質とデザインはアウトドア活動がもたらす自由と冒険の精神を体現しており、
どんな人にとっても信頼のおける相棒のような一足になるはずです。

メレルのシューズはどのシリーズでも、
その機能性、堅牢性、快適性、そしてファッション性の高さで、
アウトドア系コーディネートの要の役割を果たしてくれるはずです。
ラインナップは幅広く、自分好みの一足がきっと見つかるはずなので、
ぜひ探してみてください。

photo:Kzoo Cowboy/flickr