錫器・中村百合恵・ゆり工房さん
錫器は、銀食器ぐらい好きだけど、デザインが使えない・・・。と感じたことはありませんか。日本の伝統工芸品として親しまれてきた錫器も、ご贈答用として使われるにつれ、高価なイメージに豪華な装飾、そして印象が付いてしまい、日常使いのうつわとはかけ離れたものとなってしまったようです。
ようやく最近になって、デザイナー達が錫そのものの温かみ、柔らかな表情に注目するなどで、他の器とも調和しやすいすっきりとした錫器が見かけられるようになってきています。
ゆり工房の中村百合恵さんとの出会いは、そんな伝統工芸品の錫器業界にかげりが見え、大阪の老舗「錫半」が廃業した後、十年ほど前になります。
実は、中村百合恵さんは、錫半の奥様です。といっても、家業の錫器の仕事とは全く無縁で、錫器と真正面から向き合ったのは、廃業してからだそうです。器そのものについてもいわゆる素人だった中村百合恵さんは、基本から器のデザインの勉強をしてみたいと、店主を訪ねてこられたのがきっかけです。
持ってこられた錫器(「錫まゆ皿・雫」)は、錫器としてのセンスの良さが十二分に感じられるものでした。一言一言しっかり深く受けとめられる中村百合恵さん。ついつい長い時間話し込んでしまった結果、店主からは「自分で一番使いやすい器、これがいいなと思うものを作っていけばいいんじゃないの」という簡単なアドバイスに終わったのですが、これを機に、一点一点じっくりゆっくり語り合いながら、食器として完成度の高い使いやすいうつわを作っていただいています。
工芸店ようび 店主 真木