染付網文皿・正木春蔵|和食器の愉しみ・工芸店ようび

ヨーロッパのものたちと

 1950年中頃から入ってきたフィンランドやデンマーク、スウェーデン、ドイツ等のデザイナーたちの名前を聞く度に、どんなものかと憧れ、何とか探し当てよろこんで使っていました。食器の店をするようになってお客様におすすめする立場になっても、そのよろこびは若い時のまま変わりませんでした。バブル期から加速度的に需要が高まり、少しずつ品質も変わって来ました頃に販売をやめさせていただきましたが、今も新しい風が吹いてくるようで大好きです。

 このところ北欧ブームとかで、特に若い方の間で北欧のものが取り入れられる機会が多いようです。ようびを開店いたしました頃は、洋のものと和のものはとにかく別々のものとして扱われていて、そんなことはお構いなしで私なりにイタラ、オレフォス、ジョージ・ジェンセン、ロイヤルコペンハーゲン等のものを、和食器と共に扱いコーディネートもさせていただいていましたところ、バカラ社の1973年頃の社長さまが大変に漆に興味を持たれ、漆とバカラの合性のよさに注目して下さいました。バカラ社がバカラ社であった間中、よいお付き合いをさせていただきました。和洋問わず品位の揃ったものは美しいものなのだとずっと思ってきました。

 この頃はかなり当たり前になってきて、和洋(特に北欧のものは和室にもしっくり合います)のものを上手にコーディネートされています。このスモークグリーンの花生(イタラ社)はアルヴァ・アアルトのデザインで、60年ほど前、あまりのデザインの美しさに胸が高鳴ったものでした。グリーンのグラスのものを買い使っていましたらある時割ってしまって、この度買うことになるまで手許にありませんでした。以前にはなかったスモークグリーンのものを買ってみました。以前のものはもっと薄くてガラスにムラがあり、デコボコもあったように覚えていますが、美しいデザインであることに変わりはなく、和の空間(床の間)にもお花を入れてみたいと思っています。

 この度、正木春蔵さんに作っていただいた天啓網目の鉢を黒の盆とヨーロッパのものたちに合わせてみました。中々いい感じになっていると思います。 料理は才巻海老とアボカド、玉ねぎ入りジュレ掛けです。 もう一つはロイヤルコペンハーゲンのレモン皿にオリーブの塩漬けを入れ、ジョージ・ジェンセンのフォークを添えてみました。デカンタは古いバカラ、ブルーのカップ(イタラ社)はカイ・フランクのデザインのグラスです。

工芸店ようび 店主 真木
漆器:黒8寸正方雪才・奥田志郎