まろやか

  結ぶより早歯にひびく泉哉  芭蕉


 清水を掌(てのひら)で一滴も洩らすまいとすくい汲む形-それを「むすぶ」(結ぶ・掬ぶ)の一語で表現します。円満具足の「むすび」の形は、本能的に人のこころを魅きつける力があり、美しい-と心にひびく形でもあります。
 原始時代は食を得ることが、生活の殆どすべてで、その合間に自分の生活に必要なものを楽しみながら、文字通り手造りしていたようですが、弥生のマリは、はっきりとそのことを教えてくれます。てらいもいやみも感じさせぬ素直な立ち上がりのまろやかな曲線に、赤ちゃんのふくよかな笑顔が思い出されてきます。食器のもとのかたちは、やはり、掌が手本だったのではないでしょうか。




くるみ入り納豆せんべい
 弥生土器

あわび細切りきも酢あえ・花丸胡瓜
 欧州ガラス皿

川海老旨煮・枝豆塩茹で・ごり南蛮漬
 シュロ団扇

辻留・辻嘉一

『八寸・口取 懐石傳書』婦人画報社

□まり椀・奥田志郎 [colse]