タイヤを交換するタイミングでよく使われる指標は「経年劣化」「タイヤの残溝」の2種類です。あまり知られていませんが年月が経ったタイヤも「経年劣化」が発生し性能が低下するので交換しなくてはいけません。しかし「タイヤは溝が無くなくなったら交換する」ということは皆様ご存知ですよね。
でも、実際には私たちタイヤの専門家から見ると、ぞっとするような危ない状態のまま走っているおクルマがなんと多い事か・・・。今回は、なぜ溝が無いと危ないのかをご覧いただきます。


タイヤの摩耗が進行すると、運動性能が低下するだけでなく、雨の日の走行では排水性が低下し、排水効果に大きな変化が見られるようになります。新品のタイヤは排水性が高く、きちんと路面をとらえることが出来ます。(写真(1))
しかし摩耗したタイヤでは、タイヤが道路から浮き上がり、ブレーキやハンドル操作が効かなくなる、現象が起こりやすくなり、とても危険です。(写真(2))
また、テストデータに見ると、新品時に比べ、摩耗したタイヤは約20%も制動距離が伸びてしまいます。(*1)
(*1) (社)日本自動車タイヤ協会調べ [テスト条件]タイヤサイズ:165/SR13 パターン:リブ
空気圧:170kPa 荷重:425kg 車種:乗用車1800cc アスファルト湿潤路


写真(1)
新品タイヤ 110km/h
写真(2)
残溝1.6mm 110km/h
(スリップサインの出たタイヤ)
水をしっかりかき分けて、路面に接地している様子がわかります。 水をかき分ける事が出来ておらず、水の上に浮いている状態になってしまっています。

摩耗限度の目安であるスリップサインが現れたら大変危険です!直ちに交換しましょう。


タイヤの溝の底にある盛り上がった部分のことで、トレッド(タイヤのパターン面)全周の4〜9ヶ所にあります。トレッドが摩耗して溝の深さが1.6mmになると、そこがトレッドと同じ高さになりスリップサインが現れます。このサインが現れた時を、摩耗によるタイヤの使用限度としています。

上記の状態を見ていただき、スリップサインが出たら大変危険で直ちに交換しなければならない!と、お分かりをいただけたかと思いますが、スリップサインの出たタイヤは実際はどの位減っているのでしょうか?新品同様の溝が残っているタイヤと実物をカットした カットサンプルを使用して比較してみました。(写真1-a、1-b、1-c)

写真1-a(タイヤを表から見た写真) 写真1-b(タイヤを表から見た写真)
ほぼ新品同様の溝が残っているタイヤです。 まだサイド部は少し溝が有りますが、中央はスリップサインの出た状態のタイヤです
写真1-c(並べた写真)
タイヤの外観はお客様の目でも確認が出来ますが溝があるタイヤと並べてみますとやはり随分違いますね。

次にあまり見る機会が無いと思われます、
タイヤ断面の状態を比較してみたいと思います。


写真2-a(断面写真表から見た写真) 写真1-b(表から見た写真)
【新品時のタイヤ】
山あり谷ありで雨の日も安心です。この溝の中を通路のように水が通って排出される為、雨の日でもタイヤが 路面に接地してくれるます。そう考えますと溝が無いと水が通るところが無いということになりますよね
【スリップサインの出たタイヤ】

ほぼ平らな状態です。タイヤの厚さはこんなにも薄いんです。これでは、水の通る通路が無く、水をかき分ける事が出来ません
溝のあるタイヤと並べてみました。
擦り減ったタイヤはこんなにも薄いんです。
更に拡大してみました。
黒いゴム部の中に細かく点状に見えているのはワイヤーやナイロンなどのコードです。 よくこのワイヤーコードが見えていても平気で走っている方が おられますが、一般的な乗用車用タイヤはコード層は2〜3層しか ありません。しかもこのコード層の下の層は空気を保持する為の 約2mm程度の厚みの柔らかいゴム層しか残っておりません。

「擦り減ったタイヤがいかに危険か」という事がお分かりいただけましたでしょうか。
擦り減ったタイヤですと、ゴムの部分も残り少ししかありません。
しかもワイヤーコードが露出していたら・・・・

実際には摩耗が進みますとスリップサインが出る前からタイヤは満足な性能を発揮しておりません。スリップサインが出ている状態はタイヤにとってはまさに摩耗限度の末期症状なのです。スリップサインが出ていなくても、「なんだか最初の頃よりブレーキで止まる距離が伸びたな?」「雨の日の運転がなんだか不安定だな」
といった症状が現れ始めたら、


ご本人やご家族の安全の為、また快適な乗り心地の為にも、
擦り減ったタイヤは早めに交換しましょう。

タイヤ交換時期の例

■タイヤの内減り


■ダメージタイヤと正常なタイヤの比較