【蒔絵(まきえ)】
漆器に漆を用いて絵や文様を描き、金銀粉を蒔いた後、
さらに磨き上げる漆芸を代表する伝統技法。

19世紀、パリで行われたパリ万博において西欧の人々に日本芸術、日本の文化力を知らしめたと言われるのが、この蒔絵という技法。

漆器を「JAPAN」と呼ぶのは、かつての西欧の人々が感じた日本というアジアの見知らぬ国の芸術文化への感嘆の気持ちがあらわれていた…そんなふうに考えられている。

平安の雅を愛した貴族、時代を謳歌した豪族、武家たち…そして、言葉も文化も精通していなかったかつての西欧の人々の心をも魅了した、精巧で華やかな美…蒔絵。

漆器 山田平安堂を代表する継承工房の“塗部(ぬりべ)たち”は、今年、壮大な蒔絵の世界に挑戦した。




左は、蒔絵師が蒔絵をする際に使用する筆。

蒔絵筆には兎や鼠や猫の毛を用いる。それぞれに特徴が異なるので、筆に合った毛を選び、その毛の中からさらに毛の長短、毛先の良否などで毛を選り分ける。

修行を始めて数年間経たないとまともに線も描けないという。熟練の塗部の筆遣いには、その塗部独特の筆使いを感じる。
右は、「仁清梅蒔絵 吸物椀」の
製作過程。

漆で描いた雲に細かな銀粉を
蒔きつけていく。

“蒔絵”という技法の名称は、
この蒔きつける様子から来ている。

丁寧に描かれた漆絵が乾くか
乾かない…その瞬間。

塗部が銀粉を手にするとお椀に
魔法がかかったようにあっという間に
蒔絵が完成していく。

“よいものを良いものと理解して頂いて
               手にして頂きたい ”

今回の取材中、塗部の一人が口にしていた
言葉である。

平和な江戸の世に盛大に花開いた蒔絵文化。その技を伝承するには、膨大な時間を要する。

古典の代表格、仁清梅蒔絵をフリーハンドで華麗に仕上げていく手つきには、平安堂・継承工房の塗部たちに受け継がれてきたプライドを感じる。
⇒右は、仁清梅の花粉部分をフリーハンドで仕上げている様子。

↓下は“磨き”の工程。
蒔いた金粉、銀粉を磨き上げる。