基礎知識編
香りの種類
香水は、いくつかの香料を混ぜあわせ、蒸留水やアルコールで溶かして出来ています。
香料を溶かした割合=賦香率の違いによって持続時間が違ってきます。
そして、この賦香率(ふこうりつ)によって、4種類に分けられます。
最も賦香率が高く、香りの奥行きが深いものがパルファムで一般的に香水といわれているもの。
オードパルファムは、パルファムよりも濃度を下げパルファムに近い深みを持ちます。
オードトワレは普段使いとして気軽に使えます。
最もカジュアルでリフレッシュ効果のあるものがオーデコロンです。
初めて香水を使う場合は、軽めに香るオーデトワレまたはオーデコロンから始め、
慣れてきたら濃度の高いものにチャレンジしてゆきましょう。
香りの種類 | 記号 | 賦香率 | 持続時間 | 香りの特徴、使い方 |
---|---|---|---|---|
パルファム(香水) | P | 15~25% | 5~7時間 | 完成度の高い香りは、深みと個性を楽しめる贅沢なイメージ。 フォーマルな席などに相応しい香り。 しかし、つけすぎには注意しましょう。 |
オードパルファム | EDP | 10~15% | 5時間前後 | パルファムとオードトワレの中間に位置し、パルファムに近い深みがあります。 香りの変化も楽しめます。 |
オードトワレ | EDT | 5~10% | 3~4時間 | 気軽に楽しめる香り立ちです。 香水(パルファム)の下地に使うと、香りがゴージャスに広がります。 |
オーデコロン | EDC | 3~5% | 1~2時間 | リフレッシュ効果が高い、カジュアルな香りは全身にたっぷりつけられます。 スポーツの後、タオルに含ませて体を拭く使い方もあります。 |
香りの表情
時間の経過と共に変化する香りの表情を、三段階に分けたものを「香りのピラミッド」と言います。
香水には何種類もの香料がブレンドされていますが、香料の種類によって、早く香り立ち消えてしまうものや、
ゆっくり長時間に渡って香り立つものがあります。
この香料の組み合わせで、時間の経過により香りの表情が変わるのです。
香水の本当の香りはミドルノート。香水を選ぶときはトップノートだけで決めず、
必ず15分程たったミドルノートに変化した段階で判断しましょう。
トップノート | つけてから5~10分くらいの香り。「先立ち」と言います。 アルコールと一緒に揮発性の高い香料が香ります。 ●揮発性の高い香料の香り レモン・ベルガモット・ラベンダー・タイム・アルデハイド など |
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ミドルノート | トップノートのあと、1~2時間くらい感じる香りで「中立ち」といいます。 ブレンドされている香料がバランスよく香るので、香水のメインの香りであり、ハートノートとも呼ばれます。 ●核となる香り 配合されている全ての香料がバランスよく香る。 |
ラストノート | ミドルノートの後、2時間以降から感じる香りで「後立ち」といいます。 樹木や動物系の香料が主で、つけている人の体臭とミックスされ、個性的な香りに変化してゆっくりと消えてゆきます。 ●残香性の強い香料の香り オークモス、バニラ、動物性香料など |
香りの原料
香水の原料となる香料は数千もの種類があり、その組み合わせで香水が作り出されています。
この香料は大きくわけて「天然香料」と「単品香料」の2種類があります。
「天然香料」は植物や動物から抽出した天然成分で「植物系香料」と「動物性香料」にわかれます。
「単品香料」は一種類の科学物質でできている「合成香料」と「単離香料」にわかれます。
天然香料
≪植物性香料≫
花、葉、果実、果皮、樹皮、苔などの植物から抽出したもの
≪動物性香料≫
麝香鹿(ムスク)、麝香猫(シベット)、マッコウ鯨(アンバー)など。
単品香料
≪単離香料≫
油脂、石油などを用いて、天然材料と同じものを科学的に合成したもの。
≪合成香料≫
ハッカやメンソールなど、天然香料の精油から単一の主成分だけを抽出したもの。
女性用?男性用?
香水の名前は書いてあるけれど、女性用・男性用などと書かれていなかったりする場合があります。
それはそのブランドがレディスブランドから発売されたのかメンズブランドから発売されたのかによって変わります。
レディスの表示例
For women | (英) | フォーウィメン |
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For her | (英) | フォーハー |
Pour Femme | (仏) | プール フェム |
Pour Elle | (仏) | プール エル |
Per Donna | (伊) | ペル ドンナ |
Per Lei | (伊) | ペル レイ |
メンズの表示例
For Men | (英) | フォー メン |
---|---|---|
For Him | (英) | フォー ヒム |
Pour Homme | (仏) | プール オム |
Homme | (仏) | オム |
Per Uomo | (伊) | ペル ウォモ |
Per Lui | (伊) | ペル ルイ |
購入編
失敗しない香水選び
日本で販売されている香水は女性用のものだけでも500種類以上。
あまりにも多すぎて、どう選んだら良いのか迷いますね。
店頭で5~6本試すと、何がなんだか分からなくなってしまうなんて事もしばしばあります。
そこで、香りを香調別にわけて、香り選びの目安にしてみましょう。
香調とは、香りの調子のことで香りの特徴を表現します。
ブレンドされている香料の香り立ちによって分類され、
おおまかにフローラル系、オリエンタル系、シプレ系の3大香調(3大家系)に分けられます。
・フローラル系 | 花々の香りは、とても優雅で華やかな印象。 また、エレガントな香りからゴージャスな香りまで幅広いバリエーションがあります。 |
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・オリエンタル系 | 「東洋風、東洋的な」という意味をもつオリエンタル系。 花の香りに東洋で産するスパイスや動物系の香料をブレンドしたエキゾチックな印象。 |
・シプレ系 | 地中海に浮かぶ島「キプロス島」を意味するフランス語に由来します。 地中海周辺で産する花、果実、樹木などに苔の香りをブレンドした上品な香り。 |
この家系(3大香調)は、更に細かくファミリーに分類されます。
ファミリーの区別は、フローラル(花の香り)、フルーティ(果実)、ウッディ(樹木)、スパイシー(スパイス)、
グリーン(青草)、シトラス(柑橘)などがあります。
香調を表現するときは、家系とファミリーを重ねて説明します。
フローラル フルーティ ノートという香りは、フローラル系のフルーティのファミリー、
オリエンタル スパイシー ノートはオリエンタル系のスパイシーのファミリーを意味します。
◇フローラル系
香水の世界で6割を占めているといわれています。
フローラル(花の香り)を基調にブレンドする香料によっていくつかに分類されます。
フローラル グリーン | 若草を思わせるさわやかな香り |
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フローラル オゾック | 水をイメージした透明で瑞々しい香り |
フローラル フルーティ | フルーツの甘さがキュートなイメージ |
フローラル フレッシュ | 春を連想させる花々の清楚な香り |
フローラル フローラル | 優雅で華やかなイメージ |
フローラル アルデハイデック | モダンで洗練された印象 |
フローラル フロリエンタル | 大輪の花々の華麗なイメージ |
など
◇オリエンタル系
インドや東南アジア、中近東で産する樹脂、ムスクやアンバーなど動物系香料をブレンドした香り。
昔、ヨーロッパ人にとってオリエントは夢とロマンにあふれた楽園でした。
その憧れの地を再現した香りは、強烈な甘さと妖艶さ、エキゾチックな奥行きのある香りです。
オリエンタル アンバリー | アンバーをメインにした香り |
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オリエンタル スパイシー | スパイスを多用した香り |
◇シプレ系
深い森林にいるような錯覚を覚える香り。
静かでしっとりした格調をたたえながらも、どこか懐かしさを覚える心地よさです。
バリエーションは多く、フルーティ、アニマリック、レザー、ウッディ、グリーン、シトラスの6ファミリー。
シプレ フルーティ | 気品のある香りは和服にとても似合います |
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シプレ アニマリック | ムスクやアンバーを隠し味にした格調高い香り |
シプレ レザー | なめし革をアクセントにした神秘的な香り。グレのカボシャールが有名。 |
シプレ ウッディ | すがすがしく、すっきりとした樹木の香気を特徴とする香り |
シプレ グリーン | 針葉樹の深い緑を連想させる香り |
シプレ シトラス | フレッシュな柑橘系にさわやかなフローラルやグリーンティを加えたほのかでナチュラルな香り |
◇グルマン系
グルマン(=おいしそう)はお菓子などの甘くラブリーな香り
◇シトラス系
レモン、ベルガモット、オレンジなどの柑橘系の爽やかな香り
店頭で選ぶとき
香りを確認するときは、ムエット(試香紙)か自分の手首に少しつけてアルコールを飛ばしてから確認します。
ボトルに直接鼻をつけて嗅ぐ人をよく見掛けますが、微妙な香りが嗅ぎわけられないのでNG。
また、鼻は疲労しやすいので1度に多くの香りを嗅ぐと感覚が鈍くなります。
そのため1度に試す香りは多くても3~4種類にとどめておきましょう。
同じにおいを長く嗅いでいても嗅覚は麻痺します。香水を選ぶときは販売員に好みの香りを伝え、
イメージに近いものを2~3本出してもらい、その中から1本に絞りましょう。
香りは時間と共に
香りの変化を確認する事が最も重要です。
「トップノート」「ミドルノート」「ペースノート」と変化する中の「ミドルノート」で試しましょう。
匂いが分からなくなったら一度、売り場から離れて嗅覚が回復するのを待ち、再度トライしましょう。
あせらず、時間をかけることが香り選びのコツです。
迷ったら・・・。
香水選びの時に、最後の段階でとても悩むことがあります。
そんな時は販売員に頼んでムエットにスプレーしてもらい、ランダムに渡してもらうことです。
受け取ったムエットの香りを目を閉じて嗅いでください。そして、気に入った物を選ぶのが良いでしょう。
嗅覚より視覚が発達している人間は、無意識にボトルやパッケージでイメージを持ってしまいます。
先入観を持たずに香りを感じるためにも一瞬でよいので目を閉じて、自分の世界に入り、香りと向き合ってみてください。
きっと後悔しない香り選びができます。
使用編
香水のつけ方
基本的に、体温の高い脈うつところにつけると良いでしょう。また、上半身と下半身では、香りのたち方が違ってきます。
「温められるとよく香り、下から上に立ち昇る」という香りの特性を考えれば、下記のようなつけ方が最適です。
下半身:アキレス腱、ひざの内側、太ももの内側、ウエスト(わき腹)
上半身:手首の内側、ひじの内側、両肩 など
ポイント | ・ | 香水をスプレーしたあと、こすり合わせないようにしましょう。 |
・ | 耳の後ろにつける方が多いと思いますが、他人との距離が近くなるときは避けましょう。 自分にとっては良い香りでも、他人は不快に思うことがあります。 |
|
・ | 体の前面につけると、常に香りが昇ってきて嗅覚が麻痺するので避けましょう。 | |
・ | スプレーするときは体から10~20センチくらい離して、まんべんなく広がるようにしましょう。 | |
・ | パルファム(香水)は点でつけましょう。 | |
・ | 脇や足の裏、靴などにはつけるのは避けましょう。 | |
・ | アレルギー体質の人や肌が弱い方は、肌に直接つけるとかぶれる場合もあります。 腕の内側などで少し試して様子をみた方がよいでしょう。 |
香りかたは人それぞれ
同じ香水をつけているのに、香り方が全く違うと感じたことはありませんか?
何故かというと、個人が持つ肌表面のph濃度(酸性~アルカリ性)や皮脂分泌量、体温や気候などが微妙に左右されるからです。
香りを選ぶときは、ムエット(試香紙)で試すだけではなく、自分の肌につけてティスティングすることが重要なのです。
沢山の香りと出会う
香水は自分の体につけて確認することが大切です。香りは体臭や体温などによって微妙に変化します。
また、香りの感じ方は湿度、季節など、日によって変化するものです。
その日のファッションによっても感じ方は違ってきます。その感覚を、香水に反映させてみましょう。
試しているうちに香水がもっと身近なものになっていきます。
一目惚れ
何気ない時、そこに漂う香りに「これだ!」と思う瞬間があります。
そんなラッキーにめぐり合えたら迷わず買うことをおすすめします。
自分の直感を信じることはとても大切です。
恋愛と同じ、ひとめ惚れは幸運を呼んでくれるフレグランスかもしれませんよ。
つけすぎは嗅覚をマヒさせる
一つの香りを気に入り、ずっと使い続けると思わぬ落とし穴が。
人間の嗅覚は、同じ香りをずっと嗅ぎ続けると、3日もすれば感じなくなることもあるとか。
そうすると、ついつい自分が香りを感じるまでつけすぎてしまうことになります。
強すぎる香りは、折角の良い香りも不快になってしまいます。
そうならないためにも、違う香りを纏ったり、香水をつけない日を作ったりしてみてはいかがでしょうか。
香りのワードローブ
香水ワードローブをそろえて、TPOに合わせて香りをコーディネートしてみましょう。
考え方は洋服と同じです。「通勤用に」「デートにはこれ」「スポーツをするから」など、しっかりした目的をもつこと。
自分の好みだけで選んだ場合は、どれも似たり寄ったりになりがちです。
まずは4つの香り、ONの香り(オフィスやキャンパス)、特別な香り(華やかなシーン用)、
カジュアルシーンの香り(自分自身で愉しむ香り)、リラクゼーション(癒しの香リ)を心の声、
なりたい自分、見せたい自分をイメージしながら揃えましょう。
香水のタブー
香水には、つけてもいい場所と不適切な場所があります。
また、香りの種類によっては場所や時間帯を選んだ方が良い場合があります。
ファッションやメイクと同じように、香水使いにもマナーとしてTPOを考えることはとても大切です。
◇お食事
イタリアンやフレンチなど、ハーブやスパイスが香る料理の場合は、香りとの相性も良いので神経質にならなくてもOK.。
注意したいのが和食の席。鮨や割烹など、お料理の繊細な味や香りを楽しむ席ではつけないほうが無難。
また、「香席」や「茶席」は、その香を楽しむ場なので、香水は遠慮しましょう。
◇通勤ラッシュ時や人混み
香りは上半身や顔のまわりで漂うと、とても気になるもの。
耳の後ろにつける方が多いのですが、これは間違い。
他人の鼻も近くなるので、不快感を与えてしまうかもしれません。
また、つけた直後はトップノートの刺激が鼻についてしまうので、外出の30分前にはつけておきましょう。
そうすると、香水の個性が出始めて馴染んだ頃なので優しく香りたちます。
◇TPO
病院も、病人のことを考えて香りは控えましょう。お葬式も同様です。
マナー違反にはなりませんが、華やかな香りや甘い香りは避けたほうがベター。
どうしてもつけたい場合は落ち着いた香調のものを少量つけましょう。
香水のお色直し
水は一定の時間を過ぎると消えてゆくもの。香りを長く楽しみたい場合は香りのタッチアップをしましょう。
目安の時間は、パルファムで5~7時間後、オードパルファムが5~6時間後、オードトワレは3~4時間後。
正しい保存方法
直射日光を避けて、なるべく涼しい場所で保管しましょう。
香水のビンを立たせたまま保管することもポイント。
冷蔵庫に入れる方法もありますが、食品に香りが移らないように、密閉容器に入れるなどの工夫が必要です。
フレグランス厳禁
香水をつけてはいけない物があります。一滴でも香水がついてしまうと、
取り返しのつかないダメージを受けてしまう場合があるので注意が必要です。
(例) シルク、毛皮、なめし革のバックや小物類、白や薄い色の服
掲載協力:Le Vert Beaute 様