南ローヌの玄関口とも言える、アヴィニョンから車で1時間程。燦々と照りつける太陽と共に、爽やかに吹き抜けるミストラルを感じる場所に、マ デ ブレサドのセラーがあります。
マ デ ブレサドがこの地にワイナリーを設立したのが1964年でした。現当主のシリル氏の父がボルドーから移り住んだ事がきっかけとなりこの地でワインの生産をスタートしました。1996年にシリル氏がドメーヌを引き継ぎました。彼は、モンペリエで栽培、醸造、エノログを学び、カリフォルニア、チリ、ボルドーのワイナリーで修行しました。父から受け継いだやり方を更に発展させ、品質を向上させました。地元での人気も高く、また世界的にも高く評価されていますが、現状に満足せず、更に成長することを目指している非常にバイタリティ溢れる方です。
コスティール ド ニームの中心地である、ニーム市にはローマ時代・紀元前20年ごろに造られた有名な「ガールの水道橋」”Pont du gard”や、非常に歴史が古い街であり、同エリアはぶどう栽培の歴史がフランスで一番古いとも言われ、一説では紀元前より栽培されていたと言われている由緒あるエリアです。そこから車で約30分東に走った場所に、彼らの拠点があります。上の写真が、彼のセラーの真横に広がる畑です。土を見て頂くと分かるように、少し赤土が混ざった土壌で、大きな石がごろごろしているのが分かるでしょうか?このエリアは、地質調査の結果、あのシャトーヌフ デュ パプと同じ土壌環境と判明している地域であります。
現在所有する畑は60haです。そのうち40haで葡萄栽培を行なっており、全てオーガニック栽培です。新たな情報として、現在フランスの有機認証であるAB認証を申請中と報告を受けました。ただ、これは意図して取得したかった訳ではなく、昔ながらの醸造、葡萄栽培、畑作業を続けてきた結果ということが重要なポイントです。
栽培品種は、赤用品種ではシラー、グルナッシュ、サンソー、カベルネ ソーヴィニヨン。白用品種は、ルーサンヌ、グルナッシュ ブラン、ヴィオニエ、マルサンヌです。
セラー内をご紹介します。マ デ ブレサドでは品種別、区画別に、醸造を行なっております。左の写真は、品種ごとに発酵を行うステンレスタンクとコンクリートタンクです。非常に小さなスペースのため、より効率よく作業を進められるように設計されているセラーです。
それぞれの発酵が終わった後に樽熟成を行いますが、この作業段階でも発酵する時と同様に品種、区画ごとに樽に詰めていきます。そして熟成が進んだのちに、最終的にそれぞれタンクや樽のワインをブレンドし瓶詰めをします。この最終ブレンドには、シリル氏を含めた3名が意見を出し合い決めているのもポイントです。常に品種ごとの個性を失わず、むしろ活かすために、様々な研究も行なっています。
例えば、樽メーカーもひとつの会社でなく異なるものを使用して複雑さを求めたり、トスカーナ製のアンフォラを使ってみたり、酸化に敏感な品種用にバリック型ステンレスタンクで発酵させてみるなど、常に品種ごとのベストな醸造方法を考えているところが、彼らしい一面でもあります。
そんな彼が造るワインの代表とも言えるワインが、キュヴェ トラディション シリーズです。スタンダードクラスは、ある程度生産量があり、いつでも手に入るでしょ?…と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、実はこのシリーズが最も手に入れる事が難しいのです。世界的にも同エリアを代表する造り手に成長していることからも、毎年数量を提示しなければ入荷できないシリーズです。