『家庭で洗えるふとん』をつくろうと思ったキッカケは何ですか?
え~と、話せば長くなるんですが…
今から10年前に我が家の洗濯機もガタがきて、買い替えようと妻といっしょに
家電量販店の洗濯機売り場に行ったときのことでした。
我が家の洗濯機は、一昔前の二層式洗濯機で、
洗える物は衣類を洗うのが主役でした。
ところがいま洗濯機売場に陳列されている洗濯機はほとんどが
全自動式大型洗濯機で衣類だけでなく、
毛布・カ-テンなどの大物も洗え、かつデリケ-トな物まで洗える高機能タイプが
勢ぞろいで女房の満足度はひとさらでしたよ。
そのとき女房から、
『こんなに色々な大物が洗えるのになぜ毎日使うふとんは洗えないの!』と
ドキッとする質問が私に投げかけられたんです。
私は妻の質問に、
『昔からふとんにはシ-ツ、カバ-をしていてそれを洗い、
時々おふとんを干すことで充分なので洗うことなど考えて作られていないよ!』
と答えました。
そうは言ったものの…
ほんとうに毎日使っているふとんは、
シーツ、カバーを洗うことと、ふとんを時々
干すことによりふとんの汚れは落ちているのか?
清潔志向の時代にふとんは本当に清潔なのか?と
ふとんの専門家として疑問がわいてきたんですよ。
それが、そもそものキッカケですね。
『家庭で洗えるふとん』は、どのように開発・研究されたのですか?
ふとんを家庭で洗うためには、家庭にある洗濯機の性能が一番重要な問題です。
ふとんの構造、ふとんに使う材質などは開発できますが、
洗濯機の構造・機能の開発及び洗濯度合評価は洗濯機メ-カ-に
頼るしかありません。 そこで洗濯機各メ-カ-様との情報交換を色々なル-トで実施して、
『家庭で洗えるふとん』の共同開発の道が開けたんです。
洗濯機は『汚れを落とすこと』を目的に、
今まで各洗濯機メーカーは、衣類など洗濯物に機械力を加えることに
より短時間で洗浄する方式が開発の主力テ-マであったが、
これからはデリケ-トな衣類、大型繊維商品でも洗える
『優しい洗い方』に開発のテ-マが変わり始めていました。
開発の考え方も、今までは洗濯機が主役であったが、
21世紀の洗濯機の主役は洗濯される商品が
主役の開発方針に変わり始めました。
『ガンガン洗う』から『優しく洗う』をコンセプトに
機械力で洗うからハイテク技術力で洗う、
アナログ洗濯からデジタル洗濯に開発の主眼が変わりました。
ふとんを家庭の洗濯機で洗うための課題と洗濯機メ-カ-の
「優しく洗う」という課題は、お互いの開発路線に一致し、
ふとんメ-カ-と洗濯機メ-カ-が一つの目的を持ってお互いの商品を見ながら、
どこにどんな問題があるか情報交換をしながら洗いの主役は『ふとん』!
それを使われるお客様だと考え家庭で
洗えるふとんの開発を進めていったんです。
タオルケットなど、薄手の掛けふとんは、洗ったことがありますが、
『敷きふとん』も簡単に洗えるんですか?
そうなんです!洗える敷きふとんの構造には、試行錯誤を重ねましたよ~。
ふとんを簡単に家庭の洗濯機で洗うためには、
ふとんの中の空気の出し入れがスム-ズな構造にすること、
快適な寝心地を保ちながら洗濯機の洗濯槽に簡単に挿入できるコンパクトな構造が
可能な仕様にすることが開発のポイントになりました。
まずは、最大の課題であるふとんの中に沢山含まれている空気の対策です。
寝るときにはふとんにたっぷり空気が含まれ、
洗うときには空気が簡単に抜けてふとんがコンパクトになるように、
ふとんに使われる生地と、ふとんに充填されている中綿の開発と、
ふとんの構造を開発し、何度も何度も商品サンプルを作りなおし、
洗濯実験を繰り返し、やっとのことで空気の問題を解決することが出来ました。
それはそれは、気の遠くなる作業でしたね…。
次に寝心地の満足度を保ちながら、
洗うときにコンパクトにできるふとんの構造開発を進めました。
特に敷きふとんにおいては、ふとんの構造についての発想を転換して
ふとんを洗うときには分解してコンパクトにする構造を
開発することにより洗うことが難しい敷きふとんを洗濯機で洗うことが可能になりました。
この成果により、
家庭の洗濯機で洗える「掛けふとん」「敷きふとん」の
ふとんの構造において特許を取得することが出来名実ともに
特許で保証された商品の開発に成功しました。
また、洗濯機メーカーにおいては、
機械力でガンガン洗う方式から優しく洗う方式の技術開発を進められた結果、
新方式の洗濯機を開発され、
あのやっかいなふとんが簡単に洗えることが出来るようになりました。
更にふとんを家庭で洗うことで重要な課題として、
洗ったふとんが天日干しで一日で乾燥させることです。
これについても洗濯機の脱水能力の改善とふとんに用いる素材の選定と
ふとんの構造で解決することが出来ました。