(2021年6月29日のWind Band Pressの記事から一部転載・追記)


こんにちは!

WBP Plus!店長の梅本です。

先日はウェブメディアのWind Band Pressで「バーンアウト(燃え尽き症候群)」についてのコラムを書いて、さらに数名の方にインタビューにもご協力いただきました。

こちらからの質問の中に「従来はあったコンクールなどのイベントの目標が失われてしまい、演奏活動が出来たとしても達成感を得られにくくなっている人もいるかもしれません。目標を作る、達成感を得る、ということに関して、アドバイスがあれば教えて下さい」という項目がありました。

皆さん色々それぞれなりにご回答いただいています。

他のイベントを探す、自分のレベル向上に務める、他のことにトライしてみる、などなどです。

とはいえコンクールやサマーコンサートなどを目標にしていたけど様々な理由でそれらがなくなってしまった場合に、自分で(またはバンドで)新たな目標設定を行うことはなかなか難しいのではないかと考えています。

もちろんまだ演奏活動が出来ない状況の方の場合はなおさらです。

そういうときは、自分の中の「そもそもなんで音楽やってるんだろう、自分はどうなりたいんだろう、どうありたいんだろう」というところを自問自答しながら探っていくのが良いのではないかと思います。

探っていく中で、自分の中のダークサイドに触れることにもなるのですが(いわゆるドロドロとした感情のような)、それと向き合うことで目標設定が容易になる可能性はあります。


そこで今回、例えば僕が高校生の時、どんなことに悩んで、どんな不安を抱えていたのかな、という自分の記憶の中にダイブしてみました。

記憶は克明ではないし書き換えも起こるので正確ではないのですが、おそらくこうだったのではないか、という話です。

ちなみに僕は高校から吹奏楽を始めて、高校・大学ともに東京の学校に通っていました。

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僕が高校生の時(吹奏楽部でチューバを吹いていました)は、コンクールも万年地区予選銅賞だったので夏もサッサと終わり、野球部の応援などもなかったです(こちらもめちゃ弱かった)。

そもそもコンクールを目標にしていたかというと、部活の方針がどうだったかは知りませんが、僕自身はコンクールに興味がなかったので特に何も目標にしていなかった気がします。

もともとはロックスター目指してドラムをやるべー、という理由で入部しているような人なので、根っこの部分では「モテたい!」みたいな気持ちのほうが強かった気がします。ちやほやされたいというか、居場所が欲しいというか。

なので、居場所があればそれで良かったという面もあるし、「一緒に練習しようぜ」とか「アンコン出たいからメンバー入って」とか、求められたり役に立てたりすることのほうが、コンクールや演奏会よりも重要だったかな。

なのでそこから思い起こしていくと、当時の僕の目標の作り方としては、「友達増やしたり、メンバーと仲良く遊んだり、必要とされたり、モテたりするためにどうすればいいか」というのが出発点で、「そのためにはまず楽器演奏を上達させること」というのが目標になっていたのかなと思います。

じゃあどこまで上達させればいいかというと、僕の場合は別にプロを目指してもいないし音大進学も考えていない上記のような感じなので、「周りの部員から求められるレベルの程度」が目標になります。「一緒に合わせて練習したいからちょっと付き合って」とか「木管セクション練習するけど木底が弱いからサポートで入って」とかそのくらいのレベルですよね。

それはそれで立派な目標ではないかなと思うのです。プロにはなれないけど。でも高校の部活はコンクールなどのイベントよりも日々の活動のほうが楽しかったので、そういうことなんだろうなと思います。

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大学でも吹奏楽をやっていたのですが(今度はジャズスターになろうと思っていたけど)、ここは当時はアマチュアではちょっと名のしれたところで全国大会常連バンド。イベントも多くて、練習も厳しくて、上下関係があって、僕自身もクラリネットに転向して初心者になったこともあって、自分で目標を作るというのが凄く難しい状況でしたね。上からどんどん目標が与えられる環境というか。

先輩からは鬼のようにしごかれ(嫌なヤツとかいるんだよ)、全国大会を目指して地方から上京してきた吹奏楽大好きっ子の同期たちからはマウントを取られ、そして何よりクラリネットが難しいので「こんなにつまんないのか吹奏楽」と思うような環境でした。

コンクール大好きっ子にとっては理想の環境だったのかもしれないですけどね。バンドとしての目標は全国大会金賞です。わかりやすい。

もっと高尚な目標もあったのですがただのお飾りの言葉になっていたので実質的には目標になってなかったですね。

1年生の時はコンクールメンバーではなかったのでコンクールメンバーのお手伝いとかやってたのかな(そのヒエラルキーもどうかと思うけどね)。

大学はとにかく面白い人が多いので彼らと話したり遊んだりするのは嫌ではなかったのですが、部活としてはつまらないので、いつ辞めようかな、ということばかり考えていたような気がします。居場所がなかったですよね。

なのでその頃は、部活とは別に高校の友だちとロックバンドを組んでライブに出たり、バイトに精を出してたりしてましたかね。そこには居場所があったので。

クラリネットに関しては特に目標らしいものはなかったのですが、なにかの曲の練習で4年生の先輩にマンツーマンで教えてもらっているときに、タンギングのコツを教えてもらって、それをきっかけに「きれいなタンギング」を目標にはしましたね。経験者の同期も先輩たちの多くもタンギングが下手な人が多かったので、タンギングで居場所を確保しようとしたのかもしれません。

どちらかというと、特に目標はないけど授業にもついていけないし部内で一番下手だし、「毎日部活には顔を出してとにかく練習をする、経験者の同期に追いつく」というのが1-2年生くらいの頃のおおまかな目標になったかと思います。

あとはまあ彼女の家でまったりしてましたね。かなり不真面目な部員ではありました。吹奏楽をやることそのものが特に人生の目標になってないですからね。

僕が大学3年生のときには三出制度というやつでコンクールがお休みで、大型イベントがひとつなくなり、それはそれで「毎年上から与えられていた目標」みたいなものがなくなった年でした。

僕は相変わらずピリッとしない部員でしたが、演奏ではなく運営面で色々と関わるようになっていって、そっちのほうでいろいろなやりたいことを見つけていった感じがあります。

「次の定期演奏会では1,500人集めよう」とか、そういうのが目標になっていった感じですよね。自分の演奏はまあさておいて。

4年生のときはまあ語るにも悲惨だったので割愛します。目標はなかったです。一日でも早く終わりにしたい、その一心。とりあえず車の免許を取りました。あと留年が確定していました。

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大学を卒業したあと、社会人になってからは、2-3年経った頃に大学の後輩が立ち上げた一般団体に入りました。

団員ではなくて「クラリネット足りないから先輩入って」的な感じで賛助なんですけど。

このときは、後輩のみなさんが同じ大学で僕と同じく4年間を過ごした人たちなので、まあみなさん上手なんですよ。賛助なのに僕が一番下手っていう。

それはアカンやろ、ということで、人生で一番真面目にクラリネットを練習しました。誰よりもうまくなってやろう、小便ちびらせてやろうくらいの勢いで、練習がない日は自分で場所を予約して個人練習をして、という。

たくさんのプロの演奏会に行ってCDも聴きました。ヴェンツェル・フックスのタンギングが欲しい、ザビーネ・マイヤーの音色が欲しい、ポール・メイエの美しい弱奏が欲しい、という感じで、理想の音や技術をどうやったら自分の中に取り入れられるか研究していました。

これも結局深く潜っていくと「モテたい」「必要とされたい」「居場所が欲しい」という感じで、高校生の時と変わってないんですよね。

今でも仕事を通じて、人の役に立ちたい、「あなたが必要だ」と言われたい、と思っています。つまることろ居場所が欲しいんです。

だから僕のダークサイド(ドロドロとした部分)は、学生時代から今でずっと、「孤独感」と「愛の渇望」なんじゃないかなと思います。存在を肯定してほしいのかもしれません。

若いときはそういう自分のダークサイドを直視したくないものですが、今回意図的にダイブすることで見えてきましたね。

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そのような感じで、自分の中にダイブしていくと、その時々で「自分はどうありたいんだろう、どんな不安から解放されたいんだろう」というのが見えてくると思います。それが見えてくると、自ずと目標も定まってくるのかな、という気がします。

今のような状況で演奏活動が出来ない場合に、必ずしも「家や河川敷で個人練習をしなければいけないんだ!」ということもないと思うんですよね。

好きな奏者のCDを買い集めるためにバイトに精を出すのもいいだろうし、中高生だったら勉強に集中するのも良いだろうし、便利なアプリを開発したっていいと思うし。

演奏活動が出来るようになったら、またそれはそれであらためて自分に問い直して、目標を作ると良いだけで。

人によって現状も違うし、ダークサイドに何があるかも違うので、目標もそれぞれ違っていいと僕は思います。

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このような形で自分の内面を見つめてみたのですが、WBP Plus!のお客様の中にも同じようなダークサイドを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

特に居場所を作るためには、「必要とされる」程度の音楽レベル(技術も表現も)がないと、求めてもらう、認めてもらうのが難しいのかなと思います。

そこでトップページにもバナーを設置しましたが、「居場所を作るための方法の1つ」として楽器の上達を提案したいと思います。

もちろん下手になりたいと思っている人はいないと思うのですが、バンドやグループ内の周りのレベルとの差は人によって違うので、どのくらい高みを目指さないといけないかも変わってくると思います。

これは僕が社会人の頃(もっとも真面目に練習していた頃)にやっていた方法なのですが、まずプロの演奏(ライブでもCDでも)をたくさん聴いて、理想の音を見つける。次に、買ったCDに収録されている楽譜を買って、真似てみる。

そうすると、自分がどの技術が苦手でどの技術を伸ばしやすいか、というのが見えてきます。

良いCDに出会い、好きな楽譜で練習して課題を克服し、効率よく上達していただければなあと思っています。

バナーはトップページにありますので、ぜひトップページのバナーをタップ(クリック)して、いろいろな商品をチェックしていただきたいと思います。

上達することで居場所が作れることがあります。自分と向き合うことで性格が悪いとかそういう部分もいつの間にか改善されているかもしれません。

大丈夫。居場所はきっと見つけられます。