「寝る」ことについて |
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人の一日の約1/3は寝る時間に当てられます。つまり人生の約1/3は寝て過ごしていることになります。こう考えると、人の生活の中での「寝る」ということの意味について少し考え直してみる必要がありそうです。 快適に寝ることは、一日の疲れをとり、明日への力を約束する何よりの条件です。また、眠りの良い・悪いが起きている時の人の体や心の状態にまで深く関わっていることは言うまでもありません。 この意味で、人にとって寝ることは生活の基本といえます。特に、ストレスに悩まされる現代人にとって気持ち良く眠ることは何よりも大切な条件といえます。 ここでは、人間工学の立場から、快適な眠りを得るための条件について整理します。 |
眠りを科学する | |
眠りの深さと変化 | |
図1 人間の一晩のうちの睡眠のリズムは、以下のように2つの『眠り』が交互に組み合わされて成り立ちます。 |
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就寝のための条件 | |
図2 安眠は環境条件(寝具、室内)を整えることから始まる。 |
人が安眠するためのインテリアの環境条件は、 |
・明るさ…10〜30lx(ルクス)以下の薄暗い状態に保つ。 |
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人間工学からみた「寝具」 | |
寝具は衣服と同じで、人間の身体に一番身近な環境を創り出す道具です。この部分がおろそかにされては気持ち良く寝ることはできません。前のパネルにあるように、衣服や寝具の環境は、人間によって第一次的な環境といってよいでしょう。これは、室内・インテリア空間のような第二次的環境にくらべ、快適さを生み出す基本環境といえます。 |
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寝具の人間工学 | |
寝具の基本は人間の体を支えるマットレス(敷ぶとん)と、頭を支えるまくら、そして体を包む上掛け(掛ぶとん)です。気持ち良く眠るためには、まずは体を支える敷ぶとんやまくらの性能を第一に考えます。次に上掛けの条件を整えます。 (出典:小原二郎・建築・空間,人間工学,鹿島出版会) 図3、a 重い部分(胸、おしり)は(b)のように、固さを増やしてやる(kは固さを示す)。 気持ち良く眠るための敷きぶとんの機能条件は、 図3、b 標準的固さ(左)では、体圧がちょうどよく寝心地がよいが、柔らかすぎる(右)では、体圧が加わっては悪い部分まで広がってしまうため寝心地が悪い。 (出典:小原二郎,人間工学からの発想,講談社) ※2つの図中の(a)(b)はそれぞれ対応する。 ・適正な体圧分布…身体には圧力の加わってよい部分と悪い部分とがあり、この調整が大切。(図3、b) |
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まくら | |
図4 立っている時の姿勢を保つ。自分に合った形、大きさの物を選ぶ。 |
睡眠におけるまくらの役割は重要で、「ふとんが変わると眠れない」ということを良く聞きます。これはふとんよりもまくらが原因の場合が多いのです。 |
寝具の中身 |
図5 ふとん詰め物の比較
素 材 | 木綿わた | 真わた | 合繊わた | 羽 毛 | 羊 毛 |
用 途 | 掛ぶとん敷ぶとん | 掛ぶとん | 掛ぶとん | 掛ぶとん | 掛ぶとん敷ぶとん |
使用重量(kg) | 4.0〜4.5(掛) 6.0(敷) |
0.5〜1.0 | 1.8〜2.0 | 1.0〜1.4 | 2.0〜2.5(掛) 2.5〜2.8(敷) |
保温性 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
吸・放湿性 | ○ | ◎ | △ | ◎ | ◎ |
軽量性 | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
フィット性 | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
回復性 (天日干し) |
◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ |
長 所 | 打ち直しができる | 軽く肌添いが良い | 軽く扱い易い | 軽く肌添いが良い | 湿気を感じない |
短 所 | 天日干しが必要 | へたると回復しにくい | 吸湿性に劣る | 品質の見分けが難しい | へたると回復しない |
注 ◎は良い ○はまあ良い △はやや悪い (出典:SINGU・寝具・SINGU〜すこやかな眠りのために〜/(社)全国消費生活相談員協会)
快適な睡眠を得るための寝具の性能は、その詰め物(じゅうてん物)によってほとんど決定されます。その性能は先に述べた人間工学的機能の他に、 |
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