ここでのごはんは毎日ではなかったの。何日かに一回 にわとりの頭の冷凍をもらえる。
気持ち悪いし 腐っている時もあったけれど食べないと生きてゆけないから我慢して食べるの。
みんな競争になる。
人間のおじいさん一人が私たちの面倒をみてくれていた。
ごはんが欲しくってみんなそのおじいさんにこびを売った。
でも水は飲みたかったなー。暑い夏の日など喉がからからだったの。
せめて病気の子達にはお水あげてほしかったなー。

元気のある子は他の子のおしっこを飲んでいたよ。私もここで、うんこをたべるわざを身につけたの。
ここで生まれた赤ちゃんもみんなこの鶏のごはんだった。
ここの人間もわたしを番号で呼んでいた人と同じで すぐ赤ちゃんをどこかへ連れて行ってしまったの。
隣町に小犬の競り市場があるので そこで私の赤ちゃんをお金に替えていたの。

若いゴールデンの子が言っていた通り 私の身体は日に日に猛烈なかゆさに襲われる様になった。
耳のなかも腐ってきた。 爪は5〜6センチ伸びてしまい立っている事すらつらくなっていたの。
そのうちおしりの皮膚がただれてしまい しっぽの毛が始めに抜け落ち身体の毛もなくなって来たの。
立てなくなっていたシェパードが言っていた。「ここで1年生きることができれば どこでも生きて行けるさ。」
その時はすでに 私の耳の穴ははれてふさがり 声があまり聞こえなくなっていたの。
オールドイングリッシュ シープドッグやベアデッドコリー達は毛がからまってしまい とても辛そうだった。
そして糞でまみれた新聞紙を食べていた。ビーグルや犬種の分からない毛のぬけた小型犬は
すみに固まって震えていたわ。
たまに新しい子が連れて来られたけれど、病気にかっかってしまうのは時間の問題だったわ。

始めは元気でもすぐに夢も希望もなくなり 気力がうせてしまうの。 ここは地獄? 人間って悪魔?鬼?
私たち大型犬は 体力があるからなかなか死ねないの。死にたかったけれど。
自殺が出来ればどんなにか楽になるのに・・・と思った。
小さい犬達は どんどん死んでいったわ。でもおじいさんは死体をそのままそこに置いておくの。
腐った死体はいつのまにか風化して前の飼い主のところでつけてもらった首輪と毛だけが地面に残るの。
とても悲しかった。

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