★私の名前はばっちゃん。

 

ばっちゃんって おばあちゃんなの?変な名前ね.なんてよく言われるけれどしかたないのだ。
だっておばあちゃんになってからこの家にきたのだから。
今、私 浜名湖に住んでいる。けっこう気に入っている。
私はざっとかぞえて100匹以上の赤ちゃんを産んだの。赤ちゃん大好き。
でもどの子も産んですぐに、人間がどこかへ持って行ってしまうの。
「私の赤ちゃんをどこへ連れていってしまうの?」
って言いたいのだけれど人間には通じないし、私には何もなすすべがない。いつも とても悲しかった。

私の生まれ故郷は イギリス。やさしい パパとママ、広い芝生のお庭。いいにおいのハーブ。
かわいいりすさんや、うさぎさんともお友達だった。馬さんとも遊べた。
そしておいしい匂いがするとごはんの時間だった。
ごはんのあとは みんなでお昼寝。 ある時、日本人のお金持ちそうなおじさんがきて
一番美人の 私を欲しいって。
今よりもっと もっと大切に 幸せに おうちの中で暮らさせてくれるって言って
たくさんのお金と交換にまだ子供だった私は飛行機に乗って日本にやって来た。
始めのうちは いろんな人間たちが来て めずらしそうに私をながめたり抱いたりした。
みんな「イギリスゴールデンって真っ白なんだね」って めずらしがっていた。

何日かするとまた違う家に私は預けられる事になった。
そこはたくさんの犬達がいるところだった。毎日走る練習をしたりして、週末になると
皆で大きな車に乗って遠くの町にドックショーと
いうものに出かけた。パピーの部で私は いつも優勝したの。 大きくなっても優勝したわ。
その時は長くてややっこしい、 でも かっこいい名前があったの。
今でも背筋をピーンとはって 胸をそって耳を風になびかせ ひざを高く上げて走る方法は覚えているわ。
何回も優勝してチャンピオンというのをたくさん取ったら人間たちがなにやら あやしい相談をしはじめたの。
「赤ちゃんをたくさん生ませるとチャンピオンの子どもだから高く売れる。」って。

私はまた 住む家が 変わった。こんどはちがう種類の犬がたくさんいるところだった。
そこでは私の名前を呼んでくれる人間はいなかったの。
番号で呼ばれていたの。 犬は一年に二回赤ちゃんが生まれるの。多い時は12頭位産んだよ。

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