第118回
鹿が薬として浸透していない理由〈2〉

皆様、こんにちは。Dr.Tei Kenです。

中国では「全身が宝」と言われる鹿、日本では鹿由来の薬が知られていない理由を前回に続いて解説します。

医薬品と健康食品から見る鹿とは

日本では鹿に由来する生薬として「鹿茸(ろくじょう)」のみが「日本薬局方外生薬規格」に収載され、「キュウシュウジカ、アカシカ、アメリカアカシカ又はその他同属動物の雄鹿の角化していない幼角である」と規定されます。

厚生労働省が食薬区分において公表した「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に「鹿茸」および「鹿鞭(ろくべん)」が掲げられています。掲載の鹿茸にはシベリアジカ、マンシュウアカジカ、マンシュウジカ、ワピチの雄の幼角が含まれます。鹿鞭はシカの陰茎・睾丸であり、別名を「鹿腎(ろくじん)」といいます。医薬品リスト掲載の原材料は、法律により医薬品として使用すると定められているため、残念ながら健康食品に使用することはできません。ただし、鹿茸と鹿鞭以外は使うことができます。

鹿茸(ろくじょう)
鹿茸(ろくじょう)

薬食同源の考え方

漢方医学は「医食同源」または「薬食同源」といって、医薬品と食品にきっちり線を引きません。漢方という薬は、薬効と安全性別に上品(じょうほん)、中品(ちゅうほん)、下品(げほん)に分類されます(上薬、中薬、下薬ともいう)。上品は無毒で長期服用が可能、食品に近く良質な生薬です。漢方の本場中国では、医薬品国家標準の「中国薬典」に、単味生薬として鹿茸、鹿角、鹿角膠、鹿角霜が収録され、漢方製剤として全鹿丸や亀鹿二仙膏、亀鹿補腎丸が収録されています。また、厚生労働省に相当する中国衛生部が公表した「衛生部薬品標準中薬成方製剤」には、39種の鹿製品漢方製剤が収載。日本では、前述の鹿茸と鹿鞭を除いた鹿製品は食品扱いですが、漢方医学において鹿製品は食品として美味しくいただける一方、専門的な技術を用いて加工すれば明確な薬効を持つ上品の「くすり」です。法規定及び専門的な技術がなかった日本では、鹿が医薬品として浸透していなかったのです。

北海道では害獣として駆除された鹿は、一部の食肉などを除き、医薬資源として利用されていません。特に皮や骨はほぼ産廃物として焼却処分されています。せっかくいただいた命を廃棄するのは悲しいことです。私たちはプロとして、専門的な技術を生かし、鹿を貴重な漢方薬材として活用することが使命だと痛感しています。

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