世界最大の被害国ラオス(2)


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<世界最大の被害国、ラオスで支援活動が進められています>

■ MAG活動紹介

●MAGとは?

MAGロゴ
MAGの活動写真
MAG(Mines Advisory Group)は世界各地のコミュニティーのために、地雷、不発弾、武器、弾薬など、紛争の残存物を除去する公正な人道支援団体です。

紛争中、または紛争の影響をうけた国々が、通常の生活、通常のコミュニティーに戻れるよう、そして将来への進路を再び追求して行けるよう支援します。

MAGは1989年以来、世界35カ国にその活動を展開し、現在もアンゴラ、ブルンジ、カンボジア、チャド、キプロス、コンゴ民主共和国、イラク、ラオス人民民主共和国、レバノン、コンゴ共和国、スリランカ、スーダンおよびベトナムで活動しています。

 

●MAGがラオスで作業している理由は?

1960年代の終わりと1970年代初頭、ラオスではベトナム戦争の影響から580,000回以上の空爆がありました。このとき使われた爆撃の一つがクラスター爆弾です。雨のように降らされた手のひらサイズのクラスター爆弾。投下されたうち約30%が不発弾として、今も地上や地中に眠り、人々の脅威となっています。

ラオスの空爆被害地図
空爆は、「北ベトナム軍・ラオス共産主義勢力の拠点があった北部」、「ホーチミンルートが通っていたラオス南東部」に集中して行われた。

このような爆撃は地上の戦闘とあわせ、この国の18州のうち15州に不発弾による重度の汚染をもたらしました。不発弾は、ラオスの長期開発を阻んでいるもっとも大きな障害のひとつです。
食料入手の道を絶ち、基本的なサービスへのアクセスを不可能にし、農村人口に蔓延する貧困の原因となっています。このような膨大な規模におよぶ不発弾汚染の除去には、長期的な戦略計画と優先順位の樹立が必須となっています。

 

●MAGラオス(ラオスで活動するMAGの名称)

MAGはラオスにおいて1994年から活動を開始しました。長年の活動経験に基づき、ラオスでは経験豊富な不発弾処理組織として運営しており、現在不発弾が集中しているシエンクワン県とカムアン県で活動を行っています。

その豊富な経験から、2000年から不発弾除去活動を行っているラオス国家除去機関である『UXO-ラオ』の活動支援も同時に行っています。

不発弾処理女性チームのポスター

MAGラオスは11の不発弾処理活動を行うチーム(うち女性のみのチームが2つ)と、9つの地雷回避教育等を行うコミュニティチームに分かれています。合計211名の現地人が雇用されており、そのうち35%は女性です。

2007年MAGラオスは3,257,638uの地域において6460個の不発弾を処理し、農業、排水路、送電線、井戸、学校、道路建設(都市間のアクセス)、歴史的遺跡が残るジャール平原の観光地化を奨励するプロジェクトを可能にしました。また、2008年の3ヶ月でMAGラオスは合計2590個の不発弾を処理しました。

不発弾を撤去することで、地元の発展に大きく貢献します。そのために、MAGラオスは農村部の開発のために従事している農業、水資源、公衆衛生関係団体と協力しています。



■ ラオスで使用されている金属探知機について

金属探知機
不発弾撤去のために、ラオスで使われる金属探知機は、カンボジアなどで使用されている対地雷の金属探知機とは性能(探知できる深度)が大きく異なります。


地雷は、人や戦車が踏めば爆発するよう地表付近に埋められていますが、上空からばら撒かれ不発となった爆弾・クラスター爆弾の子爆弾は、どこに埋まっているのかわかりません。地上や地表近くに潜んでいるものもあれば、地中深に眠っているものまで・・・あらゆる範囲にわたるのです。

主要産業が農業で、米が主な産物であるようにラオスには田んぼが多くありますが、こうした田んぼやぬかるんだ土地にクラスター爆弾の子爆弾が落とされた場合には、土中深くまで潜り込んでしまいます。落下時の衝撃も少ないわけですから、当然不発弾化する率も高くなります。
また、学校建設のように掘削をともなう土地においては、不発弾があれば作業中に爆発する危険があり、地中深くまでの探査が必要です。

ラオスで活動する各撤去団体では、土地の状態や使用目的に応じて機材の使い分けを行っていますが、ばらまかれ、どこにあるとも知れない不発弾が無数に存在するが故に、地中深くまで調べられる金属探知機がラオスでは不可欠なのです。
性能が高い分だけやはり値段もかかります。探知機を揃えるのだけでも大変。これもまた、ラオスの不発弾撤去が加速できない要因なのです。

 

●MAGラオスでは

カンパニオン村の中学校建設地の撤去作業にあたってくれたMAGラオスでも、イタリア製の性能の高い金属探知機を使用していますが、撤去作業スタッフ複数名で1台を使っており、数がとうてい足りません。

MAGラオスのチーム編成: おおよそ次のような編成。
(人数が十分でないチームもある)

チームリーダー
1名
本部と現場との無線やり取りのため、
拠点テントに待機するスタッフ
1名
医療スタッフ
2名
撤去作業スタッフ
8名
合計1チーム
12名

不発弾処理チーム数:11チーム。
うち2チームは女性だけで編成されている。

(ラオスにおいては、男女の平等に対する意識がまだ弱く、その意識を変えるため。また、女性への仕事提供・自立支援という目的で女性だけのチームがつくられています)


MAGラオスの所有する金属探知機:23台


不発弾の撤去にあたるMAGスタッフ
地中に眠る不発弾は、探知機の幅にあわせて調べていきます。金属の反応がひとつもなく、スムーズに調査ができたとして、1台で1日に進めるのは最大500u(約22m×22m)。
実際に、そこまで進めることはそうないでしょう。

中にはただの鉄くずや金属も埋まっており、探知機はそれらにも反応するのです。ただの金属なのか、不発弾なのかは、ひとつひとつ丁寧に掘って調べなければわかりません。広大な土地の撤去作業には、気が遠くなるほどの時間がかかるのです。


「いずれ作業スタッフ1人につき、1台にしたい」とMAGラオスの方は話してくれましたが、1台が6000$(約50万〜60万円)と高額なため、そう簡単には設備できないのが現状ということです。


さらに、高性能なために壊れたときにラオスでは修理する技術がなく、わざわざイタリアまで送っているというのです。

これでは輸送費だけでも高くつき、時間もかかってしまいます。1台が非常に重要な役目を担っているのに、修理で出払ってしまっては作業に大きな支障が出ます。
いま、MAGラオスでは自分たちの手で修理ができるよう、イタリアの技術者から修理方法を学んでいるということです。


チーム編成については、撤去作業スタッフを12名まで増やす計画があります。
チームリーダー1名と医療スタッフ2名で、12名までの撤去作業スタッフをカバーすることができ、そうすることで効率がずいぶんとあがるそうです。機材設備と人材の育成が急がれます。

 

あなたは本物の「生きた」爆弾を間近に見たことがありますか?
模型でも爆発後の破片を組み合わせたものでもなく、火薬が詰まっていて衝撃を加えれば爆発する爆弾。

今回、私たちラオス中学校開校式ツアーに不発弾処理の現場を視察する予定はスケジュールに入っていませんでした。プレマシャンティスクールの開校式に向かう道中、クラスター爆弾の不発弾処理を行うMAGの1チームに出くわしました。開校式終了後の帰り道、MAGの方にお願いして現場に入れていただくことができました。


不発弾処理現場を見学するツアー参加者
土中から顔を出したクラスター爆弾
土にまぎれた爆弾は一見どこにあるのかわからないほど土と同じ色をしています。
私たちが足を踏み入れたのは、作業が済み、爆弾がどこにあるか知らされた“安全”な土地。
安全とはいっても爆弾はまだ撤去されておらず、爆弾のある箇所には真っ赤なポールが4本たてられ、爆弾の存在を知らせています。

足をふみいれた瞬間、自然と自分の身体が硬直するような感覚を覚えました。

ちょっとでも足をすべらせ手をついたりでもしたら・・・おっちょこちょいの私の頭をふとよぎる“最悪の状態”。みんなもどことなく緊張の面持ちで足を踏み入れ、MAGの方々の説明に耳を傾けていました。

広大な土地。足場の悪い山の斜面。そして何よりも常に危険と隣り合わせの作業・・・。
神経がすりきれてしまいそうな、気の遠くなるような作業をもくもくと続けるMAGラオスの作業員。
私がMAGの撤去作業員だったら、きっと足がすくんで、一歩も前に踏み出せないのではないかと思いました。



MAGの作業員の中には、クラスター爆弾の不発弾によって身近な人を奪われた人々もいます。
人々が安心して生活できるように。少しでも農耕地が増えて生活が豊かになるように。家族や大切な人の死を無駄にしないように・・・。もちろん作業員の中には仕事として賃金を得る手段の一環として働いている人もいると思います。それでも死と隣り合わせの仕事は容易ではありません。

ビエンチャンのCOPEセンター※1で見たドキュメンタリービデオの中で、不発弾によって家族を奪われた経験をもつ女性撤去作業員が、力強く語るシーンが印象深く私の脳裏に残っています。
「(撤去作業をするのは)怖い。本当に怖い。けれど誰一人とて私と同じ想いをしてほしくない。だから私は撤去しつづけるの。」
そのシーンと現場がリンクして胸が張り裂けそうでした。


戦争は多くの無関係な一般市民を巻き添えにし、犠牲にします。戦争が終わって何十年もたった今でも“戦争”は形を変えて続いており、関係のない一般市民の生活をむしばんでいます。
その事実の一場面に直面し、戦争のもたらす被害を身をもって実感した瞬間でした。
やるせない気持ちでいっぱいでした。

MAGスタッフとツアー参加者
しかし一方で、この状況に立ち向かうMAG職員の雄志に心打たれ、勇気と力強さを分けていただきました。彼らの姿を見て、形は違えど一緒に平和な世界にするため、貢献していきたいと強く思いました。

(2009年MAGラオスの活動を視察して プレマ株式会社スタッフ:岩本莉依)


※1 不発弾被害や日常生活で事故に遭った人々などに、義手・義足を無償提供している国際NGO



<不発弾をめぐる日本の支援状況>

■ ラオス不発弾に対する日本政府の援助

まだまだ大量に残るラオスの不発弾除去ならびにその被害に対する支援として、日本政府は様々な資金援助を行っています。以下はその一例です。

【草の根・人間の安全保障無償資金協力】の一環として

・不発弾(UXO)処理活動支援計画

このプロジェクトは、不発弾処理活動や不発弾の発見現場等のデータベース作成、不発弾の除去に不可欠な高性能金属探知機購入等に支援を行うもので、支援先は、UXO-Lao(ラオス政府が設立した不発弾の調査・除去を行う団体)です。

不発弾処理によって、事故による死傷者の減少や、有効活用できる土地の増加を実現し、支援対象地域の安全確保や生活環境の改善、経済・社会発展を期待し、数年に渡って無償資金支援を行っています。


・義肢義足製作用機材導入計画

国際NGOネットワークである「COPE」に対する、義肢義足製作用機材導入のための資金支援(平成19年)。約10年間使われていた旧型の機器は老朽化が進み、故障が頻発していたため、年間2,500人の不発弾被害者への支援提供を見込んでいたのに対し、実際には、1,500人程度への支援に留まっていました。

身体障害を負った患者の状態に適した義肢義足の製作及び適切な治療やケアを提供するプロジェクトに対する資金協力を通じて、ラオスにおける障害者の経済的・社会的な自立促進を図るものです。


【日本NGO連携無償資金協力】の一環として

・ラオス・シエンクワン県における不発弾処理事業

日本のNGO団体である日本地雷処理を支援する会(JMAS)に対し、2006年に資金協力を行いました。

日本NGO連携無償資金協力は、開発途上国・地域で実施する、経済・社会開発プロジェクト及び緊急人道支援プロジェクトを行う各NGO団体の支援を強化する目的で、従来のスキームを統合して平成14年度に創設されたもので、各団体の申請にもとづいて資金援助が行われています。



■ 特定非営利活動法人日本地雷処理を支援する会(JMAS)の活動

地雷や不発弾地帯の処理安全化活動は、その行動の危険性と専門性から、一般市民構成のNGOには限界があります。そのため、現在効果的に活動している地雷処理関係の外国NGOは、軍歴経験者が中核となったNGOのみといえます。

ここ日本においては自衛官経験者が中核のNGOが期待されながらも、様々な配慮により関係者はこの種の活動を控えてきました。
しかしながら、国際協力に関する日本国民の意識は著しく変化し、自衛官経験者が中心となったNGOが設立されても国内外から誤解を招くこともなく、その真意が正しく理解される時期が到来したものと判断した複数の退役自衛官らは、2001年9月に「日本地雷処理を支援する会(以下、JMAS)」を設立しました。

お金や物のみでなく国際協力の現場で働く人間の姿として日本人の誠意と真心を表現すべく、カンボジアでの地雷除去活動を皮切りに処理活動を開始し、その後はアフガニスタンやパキスタン、ルアンダなど、地雷・不発弾撤去処理を必要とする各地に拠点を置き、地雷問題に取り組む他団体とも連携をとりながら精力的に活動しています。

ラオスにおける不発弾処理活動は、2006年2月28日からシエンクワン県にて開始されました。活動開始以降2009年7月までの累計で、不発弾の爆破処理回数は20,232回、処理済みの不発弾数は、49,453個です。ラオスを含む各活動地域での処理実績は、JMASのホームページで随時更新されています。



<教育・開発分野における日本の支援状況>

■ 日本政府の国際社会に対する取り組み

日本国は、政府開発援助(Official Development Assistance。以下、ODA)と称し、開発途上国の経済・社会の発展や福祉の向上に対する自助努力を支援する取り組みを計画的に行っています。
1954年、開発途上国援助のための国際機関のひとつであるコロンボ・プランへの加盟を閣議決定した日本国は、これを機に開発途上国への経済協力に取り組むこととなり、今日では、その対象は150以上の国や地域に広がり、NGO(非政府団体)との連携による援助を含めて様々な形態で行われています。

ODAの目的は、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて日本の安全と繁栄の確保に資することです。環境、感染症対策、アフリカの開発といった国際社会の共通の課題におけるリーダーシップの発揮、イラクやアフガニスタンの復興支援や国造り支援など、相手国が一番必要なときに手をさしのべ、約束を確実に守る国として、国際社会の高い評価と信頼の基盤を築いてきた日本の援助。昨今では、新たな国際経済環境の下で、資源やエネルギーの確保、貿易・投資環境の整備といった課題にも的確に対応していくとの使命も帯びています。また、日本の援助哲学に根ざした日本ブランドの援助の展開も目指しています。(出典:外務省ホームページ)

この国際協力活動は、他のアジア諸国に先駆けて経済成長を遂げた大国の責務として、日本国が培ってきた経験、技術、ノウハウを途上国の人材育成や様々な制度作り支援に投下することで、地球規模課題の解決に向けたリーダーシップを発揮し、資源や食料を海外に依存する日本にとって好ましい国際的環境を構築し、より良い国際社会を形成していくための政治的政策手段であるといえます。



■ ラオスにおけるODA

ラオスにおいても、日本政府はこれまでに病院や小学校などの建設および人材育成プロジェクト、上水道施設や発電所などの補修計画、マラリア対策や食料援助、研修センターの建設と技術指導など、様々なプロジェクトにおいて無償資金協力や技術提供を行ってきました。

メコン地域の中心に位置するラオスの安定的・持続的な成長は、地域全体の安全と繁栄にとって重要です。日本国は、ラオスの将来を担う人材の育成を支援すべく、基礎教育分野を対ラオス支援の重点として支援してきました。

さらに2009年2月には、6億8,500万円のコミュニティ開発支援無償資金協力「南部三県学校環境改善計画」に関する交換公文の署名式が行われました。
この計画は、ラオス南部の国境地帯に位置する三県の老朽化した、または仮設の小学校74校を改修するもので、約9,600人の子どもたちの教育環境が改善されることを見込んでいます。本計画の対象地域ではすでに、住民参加型の学校維持管理能力の向上や教員に対する研修等の技術協力を行っており、本計画との相乗効果が期待されています。

既存の学校写真と、改修後の学校イメージ画像

(出典:外務省ホームページ)


■ JICAおよびNGO団体、地方自治体、大学などの国際支援活動

ラオスを含む途上国の現場でODAの実行に携わるのは、JICA(独立行政法人国際協力機構)や、JICAのボランティア組織である青年海外協力隊シニア海外ボランティアなどに個人で参加する人々です。また最近では、ODA以外にも各NGO団体や大学、公益法人、地方自治体等が政府と連携して行う事業も増え、国際協力に携わる人々も多様化しています。

ラオスにおけるJICAの活動は、先に示した南部三県の初等教育改善プロジェクトの実行のほか、看護師・助産師の人材育成、主要産業である農林水産業における技術協力、タイ国境への国際橋建設、ラオス国内の公共事業の運営管理指導など、様々なプロジェクトを実行しています。

「ラオス日本人材開発センター」は、民間セクター開発プロジェクトとして設立されました。
ラオスの人々のビジネス知識や経営力向上を目的としたビジネスコースのほか、コンピュータや日本語の習得コース、図書の貸し出し等のほかに、ラオダンスやケ・サ・ラック(ラオスの工芸)、日本の生け花・茶道など様々な文化交流プログラムも用意されています。
また、スタディーツアーや講演会なども頻繁に行い、ラオスと日本の相互理解を深める貴重な場にもなっています。


また、首都ヴィエンチャン市内に「NGO-JICAジャパンデスク・ラオス(通称JICafe)」を設置し、ラオスで活動中、もしくは活動予定の日本のNGOに対し、ラオス基礎情報、国際協力関連情報等を提供するほか、日本のNGOやJICA等によるラオスでの国際協力活動や交流活動に関する情報をラオス人、日本人、その他に外国人に発信・提供しています。


ラオスでは現在、9つの日本のNGO団体が常設事務所をかまえて活動しています。
ラオスの子どもたちが自ら学べる環境作りに取り組む団体、車イスの安定供給と障害を持った方の自立を支援する団体、職業訓練を実施する団体、そしてラオス最大の不幸であるクラスター爆弾処理を支援する団体などその活動趣旨は様々ですが、共にラオスの発展を願って支援活動を行う同志として、相互の情報交換等を目的とするミーティングを毎月行っています。そのほかにも、ラオス国内には事務所を持たず出張ベースで活動する団体も複数あります。


また日本国内では、現地のNGOと連携して支援活動を行う団体も増えてきています。書き損じハガキや使用済みインクカートリッジ、中古本などの回収で得た収益を奨学金にしたり、ラオスでのそろばん普及支援、学生を中心となっての学校建設資金の募金活動、小学校の児童が学校で育てたラオス原産の唐辛子を販売して寄付金に充てたりなど、様々な草の根的活動が繰り広げられています。



日本政府の支援にも表れるように、今後大きく発展すべきラオスにとって重要な課題のひとつは、初等教育環境の整備です。それらは、安心して通える学校そのものや学習に必要な設備や教材等を整えることであり、教育に携わる人材を育成し、効果的な教育システムを定着させることであると同時に、教育の重要性をすべての国民に浸透させるという大変な活動でもあります。

ラオスの山村で出会った人々は、みなおだやかで優しく、たくさんの大人たちに見守られながら育つ子どもたちものびのびと明るく、心の豊かさが溢れ出ているようでした。とはいえ、実際の生活は、都市部のそれとは比較になりません。あたりを見回しても、現金収入を見込める仕事はそうそうなさそうです。決して悲壮感に満ちたものではないとしても、「学校に通わせたところで意味はあるまい」という考えは村の人々の心に定着してしまっていてもおかしくはありません(私たちが携わった中学校の地域の人々が校舎の完成を盛大にお祝いしてくれたことは幸いでした)。

都市部に働きに出るにせよ、村に残るにせよ、子どもの頃から学びの機会を積み重ねていくことがいかに価値あることなのか。村の人々にしっかりと伝えるためには、伝える側が村の人々をまず理解する必要があるように思います。支援する側という立場だけで物事を考えて行動しても、きっと限界があるのでしょう。

今回同行してくださったテラ・ルネッサンス※2の江角さんのように、現地で腰を据えて活動するNGOの方々や協力隊の方々を私が尊敬してやまないのは、この点です。人々の心の動きに同調しながらも、最終目的は見失わない。強引な方向転換を強いるのではなく、じっくりと時間をかけて現地の人々自らがよりよい方向へ向かおうとする自助努力を支援する活動。これは日本政府も決して自らは関与できないプロセスです。

笑顔のかわいいモン族の村の女の子この豊かな日本に生まれ、やろうと思えばなんでもできる環境に育った私たちでも、私自身を含め多くの人々には簡単には真似のできないことです。だからこそ、私の代わりに行動してくれる彼らの活動を支え、その先で変化を必要とする現地の人々の支えになりたい。それがたとえ小さな試みであっても、自分にできる貢献をしたい。泥だらけになって遊ぶ子どもたちのはにかんだ笑顔をレンズ越しに追いかけながら、私は終始そんなことを考えていました。

自分にできる貢献、少し考えてみれば、人それぞれ様々なことが思い浮かぶでしょう。寄付というのは一番分かりやすい行動ですが、その他にもいろいろあるはずです。
身の周りの余剰や無駄を現地で活かすことはできないか。知り得た知識を分かち合うべき人はいないか。小さなアイデアが形になる可能性はないか・・・。

もちろん、いつもいつもそのことばかりを考えていなくてもいい。その代わりに、ふと何かを思ったときには、ためらうことなく素直に行動に移そう。そうして、あのラオスの人々の豊かな心にまた一歩近づくことができればとても嬉しく思うのです。

(2009年9月ラオスをあとにして プレマ株式会社スタッフ:山下喜代己)




テラ・ルネッサンス

※2 特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス:カンボジア、ウガンダで地雷、小型武器、子ども兵(少年兵・少女兵)に取り組む京都の国際協力NGO。