水晶丸玉 顛末記 3通 人口ガラス 合成ロッククリスタル 天然クォーツ【True Stone 天然石の真実】


巨大水晶丸玉


少し前ですが知り合いの方に頼まれたノークラック・ノーインクルージョンの丸玉鑑別ブログを書かせて頂きました。
その時は11個中1個は残念ながら合成クォーツの結果が出たのでした。
今回も知り合いの方より丸玉の鑑別を頼まれたので日本彩珠宝石研究所に依頼しました。
前回は小さな丸玉ばかりだったのですが今回は直径59.3mm、70.7mmと10センチを超える110mmの大きな丸玉です。
もし、天然水晶ロッククリスタル丸玉でしたら直径59.3mm~70.7mmで市場価格が1つ20万円~60万円位なのですが110mmとなると一気に上がり百万円以上で取引される大変希少な水晶となるのです。
当店に鑑別依頼品が到着し、確認したのですが1つだけ腑に落ちない丸玉があり、見た瞬間の違和感と言うか長年この仕事をしていると感じる嫌な予感がありました。
以下が3つの鑑別結果となります。

鑑別書 人口ガラス


鑑別書 天然クォーツ


鑑別書 合成クォーツ


3通の結果は直径70.7mmが「天然クォーツ」で直径59.3mmが「人口ガラス」、直径110mmは「合成ロッククリスタル」でした。

人口ガラスの特徴

蛍光検査 単屈折性 ← 天然クォーツ・合成クォーツは「複屈折性」です。

拡大検査 気泡と構造歪みを認む ← 天然クォーツは「双晶構造を認む」

人口ガラスは単屈折で気泡が入り、結晶構造を持っていませんが天然クォーツは双晶構造を持ち、合成クォーツは「双晶ではない」結晶構造を持っています。
天然クォーツの双晶構造とは複数の結晶が重なり合う構造の事で、合成クォーツの結晶構造は種子板(種水晶)から1つの結晶を大きくした結晶構造なので精確さを求めらるクォーツ時計等に作られる人口水晶です。
その為、不純物は一切無く、このようなノークラック・ノーインクルージョンの大きな丸玉を作成するのに打って付けの水晶です。
天然クォーツと合成クォーツは結晶構造に違いがあれど、その他は全く同じなので簡易偏光器(人口ガラスとクォーツを見分ける機器)で観察すると以下のような虹色のグルグルキャンディー模様が浮かび上がります。

簡易偏光器


この簡易偏光器があればどなたでも人口ガラスかクォーツかの見分けができますが、天然クォーツか合成クォーツを判定する事は出来ないので専門の機関に鑑別してもらう必要があるのです。
以下はネパールガネッシュヒマール産ヒマラヤ水晶で作成されたヴァジュラ・ガネーシャ神ですがあまりにも透明度が高く美しかったので合成クォーツと勘繰られないように鑑別書を付属して販売しています。

ガネッシュヒマール産ガネーシャ


ガネッシュヒマール産ガネーシャ


ガネッシュヒマール産ヴァジュラ


今回の一件で知り合いの方は相当ショックを受けられたようです。
購入価格を教えてもらいましたがこれらが全て天然クォーツだった場合なら考えられない破格の値段でしたが今回のような合成クォーツや人工ガラスの結果ではとんでもない高い価格で購入された事になります。
骨董品なら持っている人がその商品の価値を知らなかった場合は安く売ってしまう事があっても天然クォーツは作成した人がその価値を把握しているので安く売る必要が無いのです。
天然石に掘り出し物は存在しないと言う典型的な例なのかもしれません。

当店では紛らわしい天然クォーツに関しては鑑別書を付属して販売しています。
また、当店ではノークラック・ノーインクルージョンの丸玉の取り扱いはございません。
皆様にはこのような事例もあると言う事を知って頂き天然石購入の参考にして頂けましたら幸いです。

水晶観音像


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